ちょっと眠くなって来たケイドロ
今回は、ちょっと...仲違いの予感!?
「ねぇ...斉藤さん(仮)」
私は銃を撃つ手を止めずに、運転手へと話し掛けた。
「どうした?」
彼は珍しく、心配そうに私を見た。
そう、彼が他人に優しくするなんて珍しいことなのだ。
しかし私は──そんな彼に、酷いことを言ってしまった。
それは、ただ一言。
「...眠い」
そう、たったの一言だけ。
「馬鹿か!!」
勿論、怒られた。
「俺だって撮影で疲れてるのに、こうやって助けに来てるんだぞ!?」
「分かってますよ。でも私だって執筆したりケイドロしたり、はたまた銃を撃ったり大変なんです」
「執筆って、最近では"三角定規"を優先するようになったんじゃないか? 春休み中に"ケイドロ"を完結させようとしてたのに、もうすぐ四月も終わるぞ」
くっ、痛い所を突くな。
「それに"十二詩の徒然"の四月分も、予約投稿に失敗して月末投稿にならなかったらしいな。完璧主義者の名が泣くぜ」
...都合の悪い言葉は無視して、私は答えた。
「仕方ないじゃないですか、私だって新生活で忙しいんですから」
「俺だって、あの男に金属バットで殴られたんだぞ」
彼の弁明を無視して、私は言葉を続けた。
「それに斉藤さん(仮)が助けに来たのは、偽善的な理由ではないはずです。ただ、ドラマの撮影が中断されたままでいるのが辛いからでしょう?」
「......っ」
彼は言葉を返せず、黙ってしまった。
それを良いことに、私は勝手に話を終わらせてしまった。
「ごめんなさい、少し寝ますね」
私は卑怯な奴だ。
分かっていても、彼に対して素直になることが出来なかった。
「ったく、確かに最初はそうだったよ。だけどな...俺はお前のこと、少しずつ......」
眠りに落ちた私には、その先を聞き取ることが出来なかった。
斉藤さん(仮)は一体、私に何を言おうとしたのだろう...?