夢の始まり
短編のつもりで書いていたのですが、かなり長くなりそうだったので連載にしました。
※夢の話です。フィクションです。
どうか話半分にお楽しみ下さい。
私の名は、江角稚。
この話の作者であり、この話の主人公でもある。
...正確には、この夢を見ている者が私なのだが。
この話を書くに当たって、本名を使うのはマズイと思い、しかし偽名や仮名もどうか...と悩んだ結果、そのままペンネームを使わせて貰うことになった。
...まぁ良い。
前書きはともかく、何故私がこんな夢を見ているのかと言うと。
決まっているだろう。
寝たからだ。
...済まないが、真面目に言っただけだ。
江角を殴ろうとか思わないでくれたまえ。
そこの、まさしく椅子をパソコン画面に向かって振り上げている君に言っているのだが。
頭を冷やしてくれたら、お姉さんは嬉しく思う。
...さて、私は今、走っている。
夢だから疲れなど知らない...と言いたい所だが、これは妙にリアルな夢である。
つまり、私は疲れたと言いたいのだ。
何故、走っているのかと言うと。
中学時代にタイムスリップして駅伝練習をしている訳でも、
限定品であるケーキを買いにお菓子屋さんに駆け込んでいる訳でもない。
CDの初回盤は好んで買う人だが。
初回特典とか、何と無くお得な気分になるだろう?
...閑話休題。
江角と長く付き合えば、いずれ音楽について長々と語るのを聞かされる日は来るだろう。
それはまた、別の機会に。
で、"何故私が走っているのか"と言う話だったな。
皆もタイトルで気付いているだろう。
まさか"本格的なケイドロの夢"の文字を読んで、
「あぁそうか。江角は命懸けのお使いをしてるんだ。バーゲンはある意味戦場だからね」
などと言い出す人間はいないだろう。
いたら手を挙げて見てくれ。
見なかったことにするから。
...と言うか、画面越しでは見えない。
さて、私は今、皆がお気づきの通りケイドロをしている。
正直、私は音楽について語りたいのだが...何を好き好んでか、ケイドロをしている。
懐かしいよ?意外に。
しかし久々に走れば、体力の無さに自身の限界を感じるがな。
今の私が、まさしくそうなのだが。
...まぁ良い。
そんなことより、ケイドロに話を戻そう。
何故か私は今、夢の中で友人達とケイドロをしている。
私以外のドロボウは、皆ケイサツに捕まってしまった。
と言う訳で、ケイサツ役の友人達から逃げ隠れ、他のドロボウ達を助けるために牢屋へと向かうのだが...。
「おさなーん」
友人達の声。
ちなみに私の愛称(?)は、"おさなん"である。
勿論、"江角 稚"から取ったのだ。
...言っておくが、"幼い"から取ったのではない。
決して。
「おーい、おさなーん」
また、声がする。
ケイサツ達が、誘い込む気だな私を。
...気が動転しているようだ。
誘い込む私を、ケイサツ達がだな。
...あれ?おかしいな。
どうやら、先の文章のままでも"倒置法"として許されるようだ。
では、もう一度。
ケイサツ達が、誘い込む気だな私を。
そう思ったが。
「おさなんってばー」
ドロボウ達の声もする。
そうか助けを求める声だな。
私は団地の二階から飛び降り、自転車置場の屋根に飛び移った。
...実際、江角は此処まで運動神経は良くありません。悪しからず。
夢って、凄いね。
しかし多数の人間に呼ばれ、無視し続けるのは良くない。
もしかしたら、予期せぬ出来事が起きたかもしれないのだから。
「何ー?」私は聞き返した。「どうかしたの?」
「ごめーん、私達、もう時間だから帰るねー」
言われて、腕時計を見ると午後五時二十一分。
成る程、そろそろ五時半か。
じゃあ、私も帰るかな...。
そう思った矢先。
「でも、おさなんが退屈しないように、優しいお兄さん達が相手してくれるってー」
...へ?
ふと、友人達の声のする方を見ると、サングラスをかけた数人の男達が、立っていた。
大体、二十代半ばか。
...何故か、その手には銃が握られていて。
その数秒後、私は、声にならない悲鳴を噛み殺しながら叫ぶと言う偉業を成し遂げることになる。
こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。