あなたが落としたのは、猫のモフモフお兄さんですか? それとも、犬のモフモフお兄さんですか?
「あなたが落としたのは、猫のモフモフお兄さんですか? それとも、犬のモフモフお兄さんですか?」
泉の前で探し物をしている幼女の前に現れた泉の女神は、両側に獣人の青年を従えて、そう言いました。
「あたいが落としたのは、モフモフだ。オニーサンなんかじゃねえ」
泉の女神は困りました。幼女はどちらも選びません。
「では、正直者のあなたには、二人ともあげましょう」
「いらねー。あたいのモフモフを返せ」
泉の女神は解決策(両方押し付ける)をしたつもりでしたが、幼女はばっさり切って捨てました。これでは、泉の女神もお手上げです。
「・・・」
泉の女神は困ったように青年たちに目を遣ります。
青年たちはあわあわしています。
猫獣人の青年が、慌てて口を開きました。
「俺、猫だから可愛いけど」
「可愛い猫はモフモフだけだ。猫ジュージンの男なんか、可愛くねー」
「は? 何、言ってんの? 猫獣人の男が可愛くない? そんなの、モテない犬獣人の僻みでしょ」
「いや。てぃーちゃんのお母さんが言ってた。猫ジュージンの男は子育てしねーから、結婚に向かねーって」
「・・・!」
猫獣人の青年はショックのあまり、orzな姿勢になった。
そして、元気になる犬獣人の青年。
「じゃあ、僕で決まりだよね」
「犬ジュージンは誰にでも愛想振り撒く屑野郎だから、付き合ったら誰にでも良い顔して、ドアマット扱いするって、かっちゃんのお母さんが言ってた」
「・・・!」
犬獣人の青年もショックのあまり、orzの姿勢になった。
「・・・」
泉の女神はバツの悪そうな顔で、逃げられるものなら、逃げたい様子だった。
しかし、幼女は泉に落ちたモフモフを連れて来られる存在から目を離さない。
そして、獣人の青年たちの願いを叶えていない。
逃げたいのに逃げられない。
簡単な願いを叶えて、泉の女神が願いを叶えてくれる、という噂で信仰を集めなければいけないというのに。
こんな簡単な願い事なのに、何故、叶えられないのか?
アンサー:幼女の需要を満たしていないから。
幼女が求めているのは、泉に落ちたモフモフたちを助けてくれることだ。決して、獣人のオニーサンが欲しいわけではない。
それどころか、猫獣人も犬獣人も断固拒否だ。理由は幼馴染の友達のお母さんたちの実体験を元にした教えである。
ティーちゃんのお母さんは、子どもが出来たと、猫獣人の恋人に言った途端、行方をくらまされてシングルマザー。
カッちゃんのお母さんは犬獣人の夫が誰にでも良い顔をして、ファンという名の横恋慕女に付き纏われて、浮気の噂が絶えない。別れ話になっては泣き付かれること、五十余回(年三回+妊娠中数多)。それでもカッちゃんのお母さんが別れられないのは、番いだからだ。
「あたいのモフモフを返せ!」
「・・・」
女神の住む泉に落ちた影響で、獣型だった獣人の幼児が大人になってしまったことを、どうやって伝えたらいいのか、思案に暮れた女神は遠い目をして無言で涙を流すのだった。




