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心がわかるDKとわからないJK  作者: 碌寺紫葛
第2章 体育祭前~合コン後

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第19話 ニヤニヤされるJK

心がわかるDKとわからないJK

第2章 体育祭前~合コン後

第19話 ニヤニヤされるJK 

「ねぇ、ちょっといい」

「なに?柏原ちゃん」

「いや、話題変えちゃうんだけどさ、その」

「なにぃ?」

「……実際に物をもらったわけではないけど、何かお礼をしたいときの最適解ってなんだと思う?」


 今頭の中にいる該当者は3名。

まず、練習会を開けるように動いてくれたはぎの先輩。

練習会でカメラのことを教えてくれた部長。

最後に、最有力候補を見つけてくれた藤くん。

 みんな、実体のある物ではなく、環境とか情報とかをくれた人たちだ。あたしは、この人たちにお礼ができていない。なにか返したい。


「どーしたの、かじわら」

「いや、部長とか、はぎの先輩にたくさん、練習付き合ってもらったから」

「へぇ」


あれ?3人ともニヤニヤしてる?なんで?


「柏原ちゃん」

「はい」

「めっちゃかわいい」

「はあ?」


質問の答えではなく、あたしに対する感想が返ってきた。


「それな、めちゃかわいかったんだけど」

「ちょ、やめて」

「壱華ちゃん、そんなこと考えてたの?」

「ニヤニヤしないでよ」


居心地わる。ここで言うことじゃなかったかな。

 体育祭が終わった日曜日と月曜日にふと考えてしまった。藤くんへのお礼は何かしないとと思っていたが、先輩たちにもお世話になったんだし、なにかしたい。でもどうすればいい?はぎの先輩はともかく、最有力候補になっている部長にどう接していいかも決めあぐねている。悩みに悩んだが、答えは出なかった。ということで助けを求めてみたわけだが、得られたのは同級生の笑みである。しかもあんまり良くない笑みである。


「ごめん、ごめん。考えるよ」

「真顔になってからお願いできる?」


3人揃って、自分の頬のマッサージを始めた。ニヤけすぎでしょ。


「え、でも、マジな話さ、お菓子じゃない?」

「そうなるよね」

「無難で、高校生にも手に届きやすくて、かつその人の好みに合わせることができる」

「コンビニへダァ~シュッ」

「今から行くの?」


 近くにコンビニはある。うちの高校生御用達がある。行って帰ってきてもまだ閉校時間ではない。でも、好みも分かってない状況だと、お菓子を目の前に立ち尽くす生徒が誕生するだけだ。


「好みかぁ」

「聞いちゃう?」

「誰に」

「本人に」


 八乙女ちゃんの顔はふざけてない。マッサージの効果はあったようだ。


「まあ、2人とも揃ってるし、はぎの先輩はすぐに渡せそうだけど」

「問題は部長だよね。いつ来るかよく分かんないし」

「壱華ちゃん、個人でメッセ送ったことある?」

「ない。部長とメッセージなんて、何話すの?」


そりゃそう、とここにいる4人は同じ感想を抱いているようだ。

 はぎの先輩ならともかく。部長とメッセージなんて注意しないといけない。もし本当に部長が「あたしを好きな人」なら、あたしから距離を近づけることは、好意を示しているようなものだ。その意図はないし、もしそんな行動をとるなら藤くんにみてもらいたい。この場における軽率な行動が何なのか、ここで好意がなくなって、せっかく見つかった人がいなくなるようなことは一番避けたい。どうするべきか。


「直接聞いちゃえばよくない?」

「お菓子の好みと、次いつ来れるかどうか?」

「そ。サプライズするんじゃないでしょ」

「する気はない」

「だったら、確実にいこうよ」


 もっともな意見だ。せめて味の好みくらいは把握しておきたい。食べられないものとか、苦手なものは送りたくない。


「聞いちゃうか」

「解決した?」

「はい。相談に乗っていただき、ありがとうございます」

「いえいえ~」


 とはいえ、1年生の順番はまだ先。今日中に終わるのかな。


「2ねんせ~い。出番ですよ~」


 3年生終わったんだ。割と時間かかったなぁ。


「これ今日で終わるやつ?」

「ギリじゃね?」

「……はっきり、してる」


 ブレてない。逆光でダメになっていない。写真としての最低条件をクリアしていれば、3年間を乗り切れると思っていた。コンクールで優賞!とか、みんなから褒められるなんてことは望んでいない。初心者より少し上達していれば、写真部に入った意味があると思っていた。でも、良い写真を撮ってみたいという欲があるんだなと、思い知った。

 意外だった。あたしにはもう向上心なんてないと思っていた。より良くじゃなくて、何もない状況を維持したいと、あれだけ願ったのに。


「壱華ちゃん!」

「え」

「ごめん、集中してた?」

「あ、ううん。大丈夫、どうかした?」


長考してしまった。ここは高校なんだから、家じゃなんだから、気をつけないと。


「そお?あ、聞きたいんだけどね」

「はい」

「期末のテスト期間にさ、勉強会しない?中間のときに数学教えてくれて助かったから、また教え合うのどお?」

「いいね!かじわら、たのむ~」

「柏原ちゃんだけ理系だもんね」


 誰かに明確に言われたわけでない、ただ生徒の間で言われていることがある。入試の結果によってクラス分けがなされているという噂だ。理系の教科が得意な子、文系の子、みたいな分け方がなされているのではと、中間が終わったあたりからたまに聞くようになった。


「理系っていうか、数学だけなんだけど」

「それがいいんじゃん!私ら文系教えるから!」

「文系3に対して理系1ってやば」

「つーか、明確に何が得意とかないんだけど。文系ほぼ一緒」


 中間の数学は、学年の平均点よりは高かった。でも化学とか英語とかはギリギリすぎた。現代文と現社はなんとかなったけど、古文……考えたくない。


「うん。むしろ頼みたいかも。古文……」

「めっちゃ苦い顔してんじゃん。やろやろ、助け合おうよ!」

「クラスが隣同士のメンバーでやったんだけどさ、本当に進まなかったんだよね」


あれ?そういえば、藤くんって何が得意なんだろ。あのときに何か教えてもらった記憶はない。というか、その後のインパクトが強すぎて覚えてない。


「まあ勉強会って、お菓子の交換会になるじゃん?」

「それも楽しいけどさ、写真部1年でやったやつマジで助かったんだよ」


 カメラそっちのけでテストの話をした。楽しいのかは分からない。会話というのは。相手の顔色を窺って情報を得て、そこから大多数が思いつく範囲を想像して、大多数が選ぶ選択肢を推測して、選択肢通りにこなしていくの繰り返し。ようやく慣れてきたような気がする。神経をすり減らして、自分は多数であると思い込んで。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うん。これでどうかな?」


 パソコンの画面いっぱいに1枚の写真が映し出されている。これは、あたしが撮ったものではない。


「はい!それでお願いします」


 元気のいい返事のあと、1枚の写真は「体育祭掲示用」という名前のフォルダにコピーされる。このフォルダの中にあるものはプリントアウトされて、廊下に掲示されるらしい。


「じゃあ最後、柏原さん」

「はい」


 なぜか最後になってしまい、1年生とはぎの先輩と部長、全員が安心して観覧している。ちょっと緊張してきた。


「……アップ多いね」

「はい。二人三脚以降は顔を撮ることを意識していたので」

「うん。練習のときより、きれいだと思う」

「ありがとうございます」


 褒められた。練習に付き合ってくれた部長に成果を見せられたのは嬉しい。あれだけ時間をかけてもらって上達してなかったなんて、どんな顔していいか分からなくなる。


「……ばっちり撮ってるね」


騎馬戦の写真まで移動していた。そして、画面に映る部長の顔。


「いい顔してるじゃないですか~」

「今どんな顔していいか分かんないよ」


 すぐに次の写真に切り替わっていく。やっぱ部長って、撮り手でいたい人なんだろうな。


「最後リレーだね。……うん?」


 部長のパソコンを操作する手が止まった。どうしたんだろ。


「萩之さん、この写真どう?」

「はい?……え、めっちゃいいですね」


何の写真だ?と思っていたら画面に、デカデカと藤くんが写っていた。


「あ」


藤くんがリレー選手として走っている写真のまま、部長の手が止まってる。心臓に悪い。


「1年ズ、どお?」

「いいと思います。なんか、はっきり撮れてる」

「ね。柏原ちゃん、これ掲示していい?」

「え、あ、いいんですか?」


 変な答え方した。動揺した。藤くんと知り合いだってバレないようにしよう。余計なことは言わない。

でも、藤くんが写真を撮らないでほしいってお願いしてきたのに、廊下に掲示されることってあんま良くないことじゃない?でも、知らない体でいたいから断る理由がない。


「注目される競技の写真で、1位とった軍だから、写真は多めでもいいと思う」

「で、でも、あたしの写真なんて、」

「なに言ってんの!かじわら、めっちゃ上手く撮れてるんだからこれがいいでしょ!」


褒められてるけど、今は回避したいの。どうしたらいいんだよ!


「じゃ、じゃあ、それで」

「決まり!部長、わたしが印刷しときましょうか?」

「いや、張る作業の方をお願いしたい。次の部活までにのりを用意してもらえる?」

「わかりました!」


 決まっちゃった。藤くんに謝るべき?ただでさえ、藤くんに何もできてないのに?これ以上の負担を増やせって?どうしよう。お菓子だけじゃどうにもならない。


「柏原ちゃん、大丈夫?なんか顔」

「だ、大丈夫です」


平常心、平常心。藤くんのことは家に帰ってから考える。


「よし、時間ギリギリだね。そろそろ帰ろう。次の部活で、写真だけ届けに来るよ」

「あ、部長!」


 八乙女ちゃんが部長を呼び止めた。なにするんだ?


「萩之先輩と部長に質問です!好きなお菓子なんですか?」

「え?」

「おかし?」


あ、藤くんの写真が選ばれたことですっかり忘れてた。先輩たちにお礼したい。八乙女ちゃんナイス。


「どうしたの?急にそんなこと」

「こちらの壱華ちゃんが、先輩たちにお礼したいそうです」

「あ、はい」


 名指しされると変な気分だな。なんか、今日は気持ちの上がり下がりが激しい。お礼したいだけだし、写真は他のを選んでほしかっただけ。こういうとき、素直に言える性格というのは得なんだろうなと実感する。


「えぇ!?いいよ~、そんなお礼なんて」

「いえ、初心者のあたしに優しくしてくださったので、なにかお返ししたくて」

「そうだな~、わたしはサクサク系。パイとか好き」


 てっきりクリームとかフルーツとかで言われると思ってた。パイね。覚えよう。


「部長は?お菓子とか好きですか?」

「うーん。難しいな。自分で買わないんだよね。家にあるものつまんでるから」

「お菓子じゃなくても、なんか、コンビニとかで買えるものみたいな」


 こういうときに「お中元」て書かれてそうな立派なものを渡すつもりはないし、どこで売ってるかも知らない。コンビニっていろんなものが売ってるけど、手軽に誰でも使えるものが多い。そういうものでお返しがしたいという意図が伝わればいいんだけど。


「……チョコ」

「チョコ?」

「うん。あの、小分けとか、チャックとかで袋を閉じれるものがいいかな。勉強中にちょっとだけとか、一気に食べることないから、そういうのがいい、です」

「わかりました。ご丁寧にありがとうございます」


 袋が閉じれるもの。小分けにされてるものだと大きくなっちゃうから、ぱちんって閉じれるものがいいよね。探してみよう。


「引き留めてすみませんでした!かじわらからのお礼を楽しみしといてください」


 閉校時間までは余裕があるけど、いつも帰る時間に比べたら遅い。まあ、体育祭前は練習会で閉校時間ギリギリまでいることが多かったけど、特別なことがなければ、早めに帰る事が多い。バスケ部が帰る時間と被りたくないからだ。

部長もはぎの先輩も、慌ただしくこの場を離れていった。


「……みんな」


 1年生たちがあたしの方を振り返る。


「ありがとう。聞くの忘れてそうになってた」

「やっぱ柏原ちゃん、かわいいわ」

「ありがとうって言っただけなんだけど」

「それがかわいいんだよ、ね、八乙女ちゃん」

「いやマジ。スクショしたいレベルだった」


 普通にお礼言っただけじゃん。動揺して、ほんとに聞くの忘れそうになって、助かったから言っただけなのに。


「ほら、帰ろう。バスとか電車の時間は?」

「まだ間に合うよ」

「今出れば大丈夫」

「私は徒歩だから問題なし!」


 還る手段に問題がなくても、この高校から出なければいけない時間は近い。早く帰る体制をとってもらわなきゃ。


「とにかく出よう。部室の鍵とかいろいろあるでしょ」

「はーい」


 よかった。これ以上かわいいとか言われても困る。初めて言われた。あたしがかわいいなんて自分が思わないのに、どういう思考回路なんだろ。

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