表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心がわかるDKとわからないJK  作者: 碌寺紫葛
第2章 体育祭前~合コン後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/19

第16話 目標が定まった女子

心がわかるDKとわからないJK

第2章 体育祭前~合コン後

第16話 目標が定まった女子

「うん。ていうか、藤くんに言いたいことあるんだけど」

「そう!ぼくも」

「え?」

「見つけた!」

「え!?」


どういうこと?見つけた?作戦のこと?あたしを好きな人ってこと?やっぱりこの人!


「やっぱ無茶してたんじゃん!」

「え!?してない!言われてたからしてない」

「嘘言わないで。首に当ててたやつ保冷剤じゃないの?」

「え?……あ」


 なんでとぼけた?2年生の競技が終わって、八乙女ちゃんとはぎの先輩と喋った後、休憩しようっていったん解散して、藤くんを見つけた。随分近いところにいたのに気づけなかった自分にあきれていたけど、そんな思考は吹き飛んだ。藤くんが自分の首に保冷剤を当てていることを認識したときに吹き飛んだ。熱中症になるくらい集中して、自分の体調崩してまで作戦を続けてほしいなんて言ってない。そういう無茶をしないって一昨日約束したはずなのに、この人は!


「あれは、その」

「見つけてくれたのは嬉しいけど、藤くんが無茶してたらおしまいでしょ。まだ競技あるんだし」

「誤解です!」


 互いに声が大きくなっていった。階段だから、上下の階に響く。教室まで声が届くかは分からないけど、約束を破ったことへの怒りに任せている。


「誤解です。説明させて」

「……わかった」

「本当に誤解なんだよ。作戦のために人を“視る”ことに集中してたら、友達からボーっとしているって思われて、しかも、ただ観戦しているんじゃなくて、別のことしてるんじゃないかって疑われたんだよ」

「……それで?」

「それで……“視た”んだよ。その友達」


 静かに相槌のような返事をした。本当に誤解な気がしてきた。これもしかして、


「昔から、あ、中学からの友達なんだけど、昔から何してんのか分かんない不思議な奴だって、考えてたんだよね」

「……」

「しかも、なに見てんのって、直接言われちゃって」

「バレたと思ったんだ」


 今度は藤くんの方が静かに相槌のような返事をした。


「今は落ち着いてる?」

「うん。だいぶ。それで返事が曖昧になっちゃって、熱中症疑惑かけられちゃって、涼しい場所に移動して、担任から保冷剤渡されて、あそこにいたんだ」

「……なるほどね」


その中学からの友達にもみえること言ってないんだ。なんであたしには言ったんだろう。


「保冷剤返してからも水分補給はこまめにしたし、その友達からも注意されたから、気をつけてた。まあ、代表だからって理由だったけど」

「あ、そっか。リレー代表か」

「うん」


 さっきとは別の暗い表情をした。ほんとに嫌なんだ。


「だから、無茶はしてない。予想外のことは起きたけど、実際、見つけたし!」

「嬉しいけど、複雑。まあ、報告を聞いてもいい?」

「3年生男子。騎馬戦の上にいた人」

「細かくない?」


 騎馬戦の観戦中に見つけたのか。騎馬戦は女子男子分かれていたし、まあ、男子にいること自体はそう驚くことでもない。念のため、女子も含めて探してもらっただけだし。


「待って、新しく見つけた人?」

「たぶん同じ」

「根拠は?」

「考え方の雰囲気が同じだった気がする」


考え方の雰囲気?考え方に雰囲気も見た目もあってたまるか。と言いたいが、今繰り広げている会話に常識は通じない。


「そうとしか言えない。この2回とも顔がはっきり見えなかったから、たぶんとしか」

「藤くんって、何軍?」

「黄軍。ほら」


 左手首に黄色のはちまきを巻きつけていた。なぜ気づかなかった。


「上にいた人なのは、はちまきがなかったから分かった。でも、はちまきがなかったから軍まで特定できなかった」

「……騎馬の、上にいた、3年生男子」


あれ?まさか、いや、嘘。でも、接点ある。条件に合致してる。名前知ってる。まさか。


「どうかした?」

「……あの、心当たりが、ある」

「これで特定できるんだ!?」

「いや、あくまで可能性。同じ中学の先輩の可能性もあるし、でも、ちょっと」

「ぼくも、その可能性を聞いていい?」


話していいものだろうか。藤くんの思考を狭まることにならないだろうか。いや、直接みてもらった方がいいか?……あれ?


「えっと、可能性があるのが、写真部の部長なんだよね」

「同じ部活か。だったら、名前とか知っててもおかしくないね」

「でも、おかしい」

「うん?」

「部長を隣に連れていったこともあるのに、今まで藤くんが見つけられなかったのはなんで?」


 1回どころじゃない。はぎの先輩があたしの練習の手助けとして紹介してくれて、それからもグラウンドに連れていって教えてもらっていた。部長が部活に参加する頻度は少なかったけど、参加してくれたときは連れてきて、練習を手伝ってもらってた。

 あれ?入部したばかりの後輩に教えてくれる優しい先輩かと思ってたけど、好きな子と話せる機会を作りたかっただけってこと?下心ありで練習に付き合ってくれたってこと?


「本当に見つけられなかっただけだと思う」

「そうなの?」

「うん。だって、ぼくが“視た”ときに、柏原さんのことを考えてなきゃ、ぼくが認識できないんだから、ちょうど考えてなかったときなんじゃない?」


 たしかにそうだ。常に好きな子のことを考えているわけじゃないんだ。年中頭ピンク色の方が少ないんだ。身近にそういう子がいるから盲点だった。


「そ、そっか」

「柏原さんって、本当にカレシが欲しいの?」

「ま、そのはず」


こっちだって分かんないんだよ。でも、カレシができれば分かると思って、いや、今それはいいんだよ。


「わかった。最有力候補ということで、部長を置いておこう」

「うん。もしかして柏原さんなら軍分かる?」

「いや、部活同じといってもしら……あ!」


カメラ!はぎの先輩に言われて、騎馬の上に乗っている部長を撮った!まだはちまきを取られる前もあるはず!カメラ持って来て正解だったなんて。


「撮った!たぶんある。探すからちょっと待って」

「そういえば、なんでカメラ持ってきてるの?」

「高価なもの、置き去りにするわけにいかないでしょ」

「盗む人もいない気がするけど」


そんな性善説はどうでもいいの。写真、写真。これは二人三脚だから、もっと先。連写してるせいで数が多い。騎馬戦、騎馬戦、まだ女子。


「あった!」

「見ていい?」

「どうぞ。部長見つけるまでもうちょっと」


 ここからは拡大表示にして、1枚すつスクロールしよう。部長の顔くらいは分かる。


「いた。この人」

「えっと?……黄軍じゃない?」

「藤くんと同じ軍ってこと?」


 藤くんの手首に巻きつけられたはちまきを改めて見る。うん、黄色だ。


「だからか。3年生って、軍のスペースの中でも前のほうにいるし、顔を認識できなかったから、競技に出るまで“視ても”意味がなかったんだ」

「後頭部では分からないんだ」

「分かんない。顔とか、全身を認識したときとか?あまりにも挙動不審とかだったら分かるかも」

「それはみえなくてもわかるよ」


よかった。これで、藤くんにもう1回みてもらえる。


「……柏原さん」

「なに」

「えっと、たぶんなんだけど、もう1回視るの難しい気がしてるんだよね」

「え?」


思考を読まれた?いや、あたしをみるときは許可を取るって言ってくれてるし、偶然同じことを考えていただけでしょ。


「だってお昼の後って、応援披露で軍ごとに行動でしょ?」

「さすがに慣れない踊りをしながらみるのはできないか」

「うん。で、次は大玉小玉だったよね?」

「そっか。2列ではあるけど軍ごとに全員が並ぶし、1年生って前の方に配置されるから、後ろの3年生の顔を物理的に認識できないか」

「そうなんだよ。昨日の予行練習で思ったんだよね」


しかも、藤くんは最後の学年代表リレーで走る側だ。藤くんに余裕がない。


「……無茶しないでほしいしなぁ」

「その約束があったから、午前中に頑張りたいなって思ってたんだよ」

「藤くんの狙い通りに、しかも個人の特定まで出来ちゃったわけか」

「確かめたい気持ちはぼくもあるんだけど、これ以上動くのは正直……」


 無茶はさせない。それは譲れない。しかも、特定までに半年は覚悟していたのに、体育祭で最有力候補までこぎつけたのはでかい。これ以上の働きがあるのか?いやない。反語。


「ごめん」

「なんで柏原さんが謝るの!?」

「藤くんに無茶させたくないのと、慎重に行動したいあたしの気持ちを優先しすぎてた。すごく頑張ってくれたのに、話のはじめが説教じみてた。ごめんなさい」

「……」


 侮っていた、わけではない。でも今は藤くんへの申し訳なさが勝っている。ここまで頑張ってくれて、あたしは、何ができてるんだろ。


「ふ、ふふふ」

「なに?笑うとこでもないでしょ」

「いや、やっぱり、柏原さんに相談してよかったなって」

「は?」

「すごく良い人だって、今思ったんだ」


 爆笑ではないけど、笑い声を最小限におさえようとしている。


「正直、心配だったんだよ。収穫なしでもいいって言ってくれたけど、頑張りたいし」

「……発言だけ切り取れば、藤くんの方が良い人じゃない?」

「ありがとう」


 笑いが収まってきた。笑顔であることに変わりはない。


「最有力候補だね。うん。顔覚えたいから、その写真をもらいたいんだけど」

「あー、わかった。でも早くても日曜日かな。今日中は分かんない」

「いいよ。そんな急がないから」

「……あ」


 開きっぱなしのカメラを見た。現在時刻が表示されていた。


「だいぶ話し込んじゃった。お昼ごはん」

「そうなんだ。そろそろ戻ろうか」

「うん。ほんとにありがと」

「いいえ。視れる余裕あったら、またやっておくよ。なにかあったらメッセ送るから」


 そんな余裕があるなら競技に集中してほしい。わりと、いや、充分な収穫がある。


「わかった。リレー頑張ってね」

「あ、うん」


 苦い顔した。そんなに嫌なの?でも藤くんだから、断るの苦手そう。あたしが言うのもなんだけど。

そう言って教室に帰っていったら、お昼ご飯を食べ終わったひとが多く、急いでご飯を食べるはめになり、遅く来た応援団たちに巻き込まれ、ついでに撮った写真を見せるはめになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「午後は暑い!」


 当たり前のことを叫んでいる。青色の応援団の集団に紛れて、グラウンドに向かっているあたしは何者だろうか。奇異の目で見ないでください。


「壱華ぁ、まだ撮ってくれるぅ?」

「余裕があればね。応援披露はたぶん、写真部誰も撮れないと思う」

「プロにお任せ?」

「予行練習のときに、席を立たないように注意されたから、生徒は動けない」


 この子はあたしに撮ってもらうことに執着してる。なんでだろう。


「そっかぁ。大玉小玉もダメだしぃ、あとはリレー?」

「それは撮れるよ。写真部全員、応援そっちのけで撮る気がする」

「ちゃんとかわいく撮ってね」


 満面の笑みだ。応援団として動いているからテンションが高くなっているのと、あたしに撮ってもらうことへの高揚感、といった感じか。ご飯を食べながら撮ったものを見せたとき、特に不満を言われなかったから、合格基準は満たしているんだろう。それともあれか?知り合いの、あんまり使ったことない機械で写真を撮られるという経験に対してテンションが上がっているのか?


「そーいえば、壱華ってさ」

「うん?」

「カレシいるの?」

「は?」


なんで、いきなりそういう話になった?マジでなんで?


「いや、いないけど」


ていうか探しています。最有力候補を見つけました。


「そうなの?なんか、階段の方から『柏原さん』て聞こえた気がして」

「あー」


 藤くんとの会話が聞こえたのか。なるほど。声大きくなっちゃったからな。ていうか、聞こえたのが、まさかこの子だったなんて。


「ちょっと、お昼休憩のときに話し合いしてて」

「そうなんだ。写真部って女子が多いイメージだし、男子の声でびっくりしたんだよね」

「女子が多いのは事実だよ。でも写真部の部長は男子だよ」


 ここでは嘘をつかない。お昼休憩で写真部の人と話をした、ということだけは嘘で、それ以外は事実を言う。これで乗り切る!


「お昼遅くなったのも、部活の用事があったからだもんね?」

「そう。その会話だと思う」

「そっかぁ。カレシいるなら合コン行くなんて言わないか」


あなたはカレシいますよね?


「あ、そうそう。壱華と、えっと、2組の男子2人が参加するって」

「なにに?」

「合コン」

「段取り早くない?」


勝手にカウントされていた。適当に返事したツケが回ってきたようだ。


「なんだっけ?たかくらくんと、ふじくん」

「え?」


 変な声出た、ヤバ。2組の男子ってそこなんだ。あ、なんかカレシの方と喋ったことある的なこと言ってた気がする。それでカノジョの方も知ったって言ってた気がする。


「知ってる?」

「なんか、聞いたことある気がする」

「隣のクラスだしね。あれ、勉強会のときにいたって」

「それで聞いたことあるのかも」


 そういうことにしておこう。この子は、私が顔を覚えるのが苦手なことを知らないはず。たかくらくん?もしかして、さっきの報告のときに言ってた中学からの友達ってたかくらくんなの?なんでさっき、合コンに参加するって言ってくれなかったの?あ、見つけてくれたからか。それともまだ知らないのかな。あり得そう。このカップル2人ともテキトウだしな。


「じゃ壱華、写真おねがいね」

「そっちも、応援団がんばって」


 社交辞令。藤くんへの「リレー頑張って」より軽い。でも彼女は満足そうだ。

 午後の最初の競技は応援披露だ。どういう順番で行うか忘れたが、カメラは置いておこう。ケースに入れて、水筒も入るような巾着袋に入れて、リレーまで出番がないから、待っててくださいな。

この場所は午後も日陰に入っていられるみたいだから、座面に置いても大丈夫でしょ。さて、ただ待つ時間。集合時間には間に合っているが、人の流れには出遅れたので、すでに会話のグループが決まっている。ちょうどいいや。部長がどこにいるか探してみよう。黄軍だって分かったことだし、隣の集団を探してみよう。前列側、前の方、あれは応援団だから、もっと違うとこ。もしかして後ろにいるかな。クラスの人と話すために校舎の壁面に近づいたとか?あ、部長の前に藤くんを見つけてしまった。あそこにいたんだ。微妙に見えない場所だな。人が立ったり、移動してしまえば分からなかった。うん、これはあたしが顔を覚えられないやつとは関係ない。環境のせいだ、うん。


「あ」


 藤くんと目があった。なにか口パクしてる?えっとぉ、い、あ?い、か。い、さ。いた?

いた?なにが?部長が?

 とりあえずで首ふっとこ。軽く、軽くですませよう。お昼休憩の呼び出しのときも、最初は口パクを試した。「あとで」て伝えたつもりだったけど、まあ伝わらないと思ってたし、具体的に時間と場所を指定したかったから、結局紙に頼ることになってしまった。

 藤くんも諦めたな。ま、写真見ただけの一瞬で顔を覚えられるわけないだろうし、藤くんがもう1回みるのは難しいな。これ以上は諦める、というかすでに充分。


「これより、午後の部を開始します。まずは応援披露です。選手は準備をお願いします」


じゃあ、ポンポンを用意して、一口水分を補給して、待機だな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ