第15話 言いたいことがある男子と女子
心がわかるDKとわからないJK
第2章 体育祭前~合コン後
第15話 言いたいことがある男子と女子
なんか、疲れたな。水分とって、3年生を“視る”。たか戻ってきたらどうしよう。適当に話を合わせなきゃな。
「よ、回復した?」
「おかげさまで」
たかがおれの椅子の隣に座っていた。おまえの席、そこじゃないよな?
「持ち主が戻ってきたら開けろよ」
「大丈夫。だぶんあいつ戻ってこない。ずっといないから」
「そうですか」
結局おれのところに来るのか。話合わせながらやんないとな。
「3年ってなにやるんだっけ?」
「騎馬戦じゃなかった?なんか、部活の先輩が手いたいとか言ってた」
「俺、騎馬戦好きじゃねぇんだよな。身長とか体重考えると上に登れないし、目立てない」
「目立ちたいの?」
「やるんだったら活躍したいでしょ。中学のときびみょーすぎてフォローもできなかった」
たしかに中学のときもやったな。おれも騎馬の馬の方をやった。特別背が高いわけでもないから、手を痛めながら走った記憶はある。
「なー」
「ん?」
「さっきさ、合コンの話したんだよ」
「……あぁ、カレシカノジョが主催するやつ?」
前にもその話をしたな。付き合っている2人が主催になって、それぞれ人をよんでやるって話だったはず。メンバー決まったのかな。
「なんか、カラオケでやろうとか、少し人決まったとか、4対4にするとかなんとか」
「具体的なのか、曖昧なのかわかんないな」
「そ。で、俺たち数えられてるわ」
「えー?別に行くって言った覚えないんだけど」
「あいつにそれ通じると思うか?」
グッドを表す手の畳み方をしているが、ただ親指で誰かを指し示しているだけのようだ。指の先には、あのカレシの方がいた。
「見た目も動きも、喋り方もてきとーだぞ?」
「はいはい。おれが悪かった」
「で、女子のほうは1組から一人は決まったらしい」
「誰か知ってんの?」
「あれ、壱華ちゃん」
たかの口から柏原さんの名前が飛び出した。え、おまえ、知り合いだったの?
「名前よび?」
「うん。苗字知らん」
「あ、そういうこと」
びっっくりしたぁ。いつの間に知り合いになったのか問いただしたくなってたとこだったぁ。あぶねー。
「え、待って。あいつも知らないの?」
「うん。カノジョがずっと壱華って呼んでるから苗字知らないって」
「あー……」
絶対に苗字で呼ばないようにしよう。その子とかにしよう。絶対に口滑らせないようにしよう!
「で、メンバーが分からないまま、体育祭終わったらグループ作るってさ」
「マジか」
「絶対来いよ」
「家に来られて連れていかれる図が見えたから行くわ」
たかもおれも互いに家を知っているから、「なんで来ないんだ!」と突撃される可能性が高い。もっと言うなら、たかがしてくる可能性の方が高い。
「お、始まったな」
グラウンドの中心を見れば、女子が騎馬戦を始めていた。柏原さんたちは……あ、いた。さっきと同じだな。じゃあ、柏原さん側にいる人を“視て”いこう。
柏原さんのことを考えている人……。事故った。変なもの“視え”ちゃった。
「目、乾いたな」
「わかる~。え、かずさ、目薬ある?」
「あるわけないじゃん」
「それな。女子かって」
女子でも持っているかは不確かじゃないか?
「3年生になったら、俺らもするのかな」
「騎馬戦?」
「うん。変えられるんかな」
「生徒会に入るとか?」
「おー、おぉ」
どういう反応だ?まあ、“視なくても”、答えてくれそうだな。
「生徒会に入る?体育祭の競技のために?」
「生徒会長になっちゃえば、いけるんじゃない?」
「生徒会ぃ~。内申点になるか~?」
「アピールには使えるでしょ」
これ多分、暑くて思考がおかしくなってる。すぐに「めんどい」て否定しそうなのに。
「うん。いやだわ」
「考えたな」
「テニス部の部長の方がまだいいわ」
「たかが部長?似合わないな」
「生徒会長の時点でそれ言えよ」
会話しながら“視る”。3人くらいしか同時に視えないけど、多分いない。
柏原さんのお願いにあるから女子も視てるけど、やっぱりそういないよね。なんか、世界にはそういう人がいるらしいけど、そう自分の周りにいるとは限らないし。
「早く終わんねぇかな。教室涼しいかな」
「ここよりは涼しいんじゃない?エアコンついてるとは思えないけど」
「せめて曇りになってくれ~」
たかに競技見る気はないんだな。おれも作戦のことがあるから視てるだけで、他人のこと言えないけど。
「体育祭終わったらさ」
今日のこと終わったときの話してる。話すネタ尽きたのか?
「部活あんのかな」
「サッカー部はないって。グラウンドがすぐ使えないから」
「テニス部びみょーだな」
「連絡とかなかったわけ?」
「忘れた」
ぜったいに「部活あったんだけど?!」とか言うなよ。百おまえのせいだぞ。
「昼休憩のときに確認すればいいんじゃない?」
「先生こないの?」
「いつも使ってるだろ」
「そりゃそう」
校則で、高校の敷地内でのスマホの使用は禁止されている。でも校則違反であると判定する監視役がいなければ、校則を破りたい欲が勝ってしまうものだ。おれもそう。
「あ、次男子?なら見ようかな」
「テニス部って、女子と交流ないわけ」
「あんまないな。コートが隣ってだけ」
「そんなもんか」
サッカー部は男子だけだ。部活で女子を関わることはそうない。マネージャーはいるが男子だけ。一応女子のメンバーもいるんだから、多少の関わりがあるんだろうと思っていたが、違うんだ。じゃあなおさら、女子がやってる競技には興味湧かないよな。
「あ、でも、先輩でテニス部どうしで付き合ってる人はいるらしい」
「へぇ」
「一緒に帰ってるの何回か見た」
「そういうのって隠さないんだ」
「見せつけたいんじゃね?」
ん?声が低くなったな。どうした?
「はぁ」
「でかいため息だこと」
「見せつけられる側の身になってほしいもんだよなぁ」
たかの煩悩って、108以上あるんじゃなかろうか。
それか、108の内100は「カノジョ欲しい」になっているんじゃないだろうか。
「あ、先輩いた」
「おれのは、どこにいるんだろ」
「上に登ってなきゃ分からんよな」
騎馬の上にいて、はちまきを奪う役目の人は目立ちやすい。そこからやっていくか。
まだ競技が始まってないし、目の前のことに集中しているかもしれない。さっきの女子みたいに、柏原さんに近い人から“視て”いけばいいか。
「今から身長伸びて細くなれば、上にいけんのかな」
「成長期のこってる?」
「高1なんだからまだあるだろ」
「祈っておくよ」
軽く返事、“視る”、話を聞く、“視る”。繰り返す。無茶しない。
運営本部にある高めの台に登っていく人がいる。校長とか、先生とか、生徒会長が登っていくあの台をなんていうか知らない。
「よおーい」
パンッと破裂音。それを合図に競技が始まった。さっきの女子より激しいかな?土埃とは言わないけど、落ちないように、暴れないように、安全を保とうとする傾向があった女子と比べれば動きがある。
いないなぁ。さすがに競技中は目の前のことに集中するよな。今は休憩かな。
「いっけーいけいけいけいけ、黄軍!」
「おっせーおせおせおせおせ、緑軍!」
「がんばれーがんばれー、青軍!」
赤軍は1つ軍をまたいでいるので、はっきり声は聞こえない。隣の軍はさすがに聞こえる。
「せんぱい、がんばれ!」
「やってくださいよー!」
3年生が競技をしているからか、かけられる内容に丁寧語が混じる。一応、声は出しておこう。ずっと静かなのは逆に目立ちそう。
「がんばれー」
「もっとやる気だせよ」
「なに言えばいいんだよ」
「せんぱーい、がんばれー」
「たかこそ、気合いれろよ」
隣のやつも同じ思考らしい。目立ちたいとか言っておきながら、こういうときにやる気出さないのは、自分に都合がいい頭をしている。
「あちこちで脱落しています!はちまきを取られた人は端に避けてください」
色とりどりのはちまきを掴んでいる騎馬と、とぼとぼグラウンドの端に移動していく騎馬が出始めた。展開はやいな。
じゃあ、端にいる人たちを“視て”いけば……。え、
「いた」
「だれが?」
「え、あ、いや」
「かずのとこの先輩、もう取られた?」
「あ、うん。見えちゃった」
誤魔化せた。大丈夫。思わず声に出ていた。気をつけなきゃ。
ていうか、いた。多分、実験室の前にいたっていう人と同じ人だ。でも、遠くて顔が見えないな。はちまきも取られた後だから、軍がわからない。
どこ行った。今から追えば、誰か分かるかも。なんで同じ人だと思ったんだろう。勘?経験?なにかあるはず。えっと、上に登ってたひとだ。移動中だったとはいえ、騎馬を崩しているグループはなかったから、上にいた人。3年生。同じクラスじゃない。写真部の人?
他に名前を知れる機会なんてあるのかな。生徒会?全校生徒を覚えているものなのか?それとも、柏原さんと同じ中学だったとか?あ、ダメだ。考えがどんどん、
「おい、決まるぞ」
「え」
「またボーっとしてんじゃん。水分忘れるなよ、代表さん」
「あ、うん」
水分は取ろう。リレーの代表であろうがなかろうが、水分補給は大事だ。
「順位を発表します。4位」
あ、終わった。あとは昼休憩の放送が入るまで、動かなきゃいいんだよな。
よし。見つかったことをどうやって伝えよう。結局3年生男子であることしか絞れなかったし、あのあと、先生とかとかぶって個人の顔が分からなかったんだよな。おれ、視力はいい方だと思ってたけど、流石にこの距離は無理だったか。体育祭で頑張るべきじゃなかったのかな。
……あ、伝える方法あるな。ていうか、よく分かんないけど呼び出しされてたんだった。ジャージのポケットにいつもの違う感触があったことで思い出した。
謎に渡された紙がまだポケットに入ってる。あれ?呼び出しされるがままに行ったら、何か言われるのか?なにを言われるんだ?柏原さんのことだから、ちゃんと事実を言ってくるんだろうな。
せっかく見つかったのに、昼休憩を宣言されたときには、柏原さんから何を言われるかで頭がいっぱいになってた。
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「教室すずしー」
誰かが言った。たしかに、思ったより涼しかった。午前中は日陰になっているからだろうか。さて、教室からすべての椅子がなくなり、机しかない。どうやってお昼を食べるのか。グラウンドからカメラと水筒、日焼け止めスプレーを持ってきた。ちょっとだけ水分を補給して、手も洗おう。少しだけカメラをきれいにしたい。体育祭が終わって家に帰ったらちゃんときれいにする。間に合うかな。お昼を食べる前に、指定した場所に行かなければならない。途中経過の報告も兼ねて呼び出しをした。だが、本命は違う。
このお昼休憩でやることが色々ある。まず手を洗いに行こう。藤くんが来ているか確認できるかもしれない。
そう思って教室を出たはいいが、早く行動していた人たちで、手洗い場は占領されていた。これ自体はいつものことだ。体育祭でなくても、手洗い場の需要が高くなるときは決まっている。だが、人込みで、ジャージ姿という自分好みにアレンジできる幅が少ない恰好だと余計に誰がだれだか分からない。いつもの髪型を変えている人もいる。男女関係なく。藤くんってこういうイベントで髪型変える人なのかな。知らないな。仲良くないもん。
ただ、あたしはまだ「早めに行動していた人」だったらしく、手を洗って若干仕切られた空間から出れば、列をなしていた。
人込みを分けて教室に戻り、バッグからお弁当を取り出しておいて、カメラを簡単にきれいにする。指定場所の階段に行きたいのだが、カメラをどうしよう。剝き身で置いておくには高価なものだけど、呼び出し場所にカメラを持っていくなんておかしいかな。
いや、これは言い訳に使おう。写真部の用事で席を立つけど、このままにしておいてと周りの子に声をかければ、カメラを持っていっても不思議に思われない。
「柏原ちゃん、お昼一緒に食べる?」
チャンスだ!
「ごめん。ちょっと写真部のことで用事があって。机使ってもらって大丈夫だから、お弁当をこのままにしてもらえる?」
「わかった。忙しんだね」
「どれくらいかかるか分からないから、先に食べてて」
よし成功!最近一緒にお昼を食べている子たちに嘘をついた罪悪感なんて持ち合わせてないので、小走りして向かうぞ。
2組の教室も通り過ぎて、階段がある場所まで小走り。
「あ」
「あ!」
もう来てた!?人を待たせてしまった。カメラの掃除後回しにすべきだったかな。
「ごめん、遅くなった」
「ううん。あの、昼休憩とはあったけど、具体的にいつかは分からなかったから、とりあえずで来てみたんだよね。走ってきたんだ?」
「うん。用事があることにして小走りすることへの説得力を用意したからね」
正直、藤くんに紙を見せるのだって一か八かだったし、あれくらいしか思いつかなかったけど、さっきの言い訳は我ながら自然だったと思う。
「びっくりしたけど、意思疎通?したい意図は分かったよ」
「うん。ていうか、藤くんに言いたいことあるんだけど」
「そう!ぼくも」
「え?」
「見つけた!」
「え!?」




