第13話 体育祭が始まった高校生
心がわかるDKとわからないJK
第2章 体育祭前~合コン後
第13話 体育祭が始まった高校生
「あちぃ~」
昨日の予行練習は曇りだったじゃん。あのままでいてよ。なにお天道様気合いれちゃってるわけ?若者が外出るんだったらがんばろっかなってか??ふざけんなよ。現代の暑さ考えろよ。直射日光厳しすぎるでしょ!
「あ~~~」
「参ってんね、かじわら」
「……八乙女ちゃん?」
あれ?なんでクラス違うのにここにいるの?軍同士で固まっていすを持ち寄って、ここはあたしの軍の場所のはず。あたし、自分が出る競技以外じゃ動いてなから、間違えてないはず。
「遊びにきた」
「いいんだ?」
「うん。なんか、こっちにも別のクラスの子とか来てたし、先生も注意してこなかったから、来てみた」
「……カメラ」
「うん、撮りにいかない?萩之せんぱい出るよ」
先輩を撮る、撮りたい。暑い。せめて日陰にいたい。人多い。写真撮れない。
「……動くかぁ」
「だいじょぶ?」
「わりと暑い」
「え、熱中症とかじゃ」
「いや、そういうのじゃない」
6月の梅雨手前の時期だからそんな暑くならないだろと高を括っていた。こんなに天気いいなんてマジかよ。体育祭が予定通りに開催されたから、変則的なスケジュールとかを考慮しなくていいのが良いことなんだけど、色々吹き飛ぶくらい暑い。雲一つない晴天すぎて嫌。体育祭の開会式でお決まりの校長の挨拶で「今日は体育祭日よりで」で始まったときは、口を塞いで黙らせたかったくらいに暑い。
「日焼けするの嫌なんだよね」
「美白守りたい系?」
「ううん。日焼けすると赤くなってヒリヒリするから、まじでうっとおしい」
「日焼け止めは?」
「塗ったし、いすにかけてあるバッグにスプレーも入ってる」
これだけ対策しても結局焼けるのがオチなんだよな。というか、この暑さでスプレー持ち歩いている方がある意味で爆弾になりそうだから、昼休憩で教室に戻そうかな。
「無理しないでおく?」
「ううん、撮る。練習会開いてくれた先輩のために」
「義理堅~。おけ」
カメラは持ってきてある。ケースから出して、撮れるようにセットして。
「行こう。お昼すぎたらもっと暑くなる」
「いこいこー」
気合を入れて日陰から出た。撮ってやる。ちゃんと綺麗な写真撮ってやる!
変なスイッチ入った気がするけど、そうでもしないと乗り切れない!
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「あちぃ」
思っていたより晴天。暑くて集中が切れる。ちゃんと“視なきゃ”。
「ただいま~」
「早かったな」
「向こう日陰なくてさ、長く話してらんなかった」
「あぁ。緑軍つらそうだな」
「俺ら、ギリ日陰で助かったよな」
まだ午前中だから、これから影が伸びるかもしれないけど、体育祭の最初から日陰に入れるのは助かるな。そんな助かる状況でも暑さで集中できないけどね。
「2年の競技やって、3年の競技やって、昼休憩か。まだあんなぁ」
「だな」
「午後って言っても、応援披露と競技やって、最後リレー?時間かかるな」
「……だな」
あれ?柏原さんがいない。さっきまでいすに座ってたはずなのに。
「リレー頑張れよ。代表さん」
「たかがやる?」
「俺べつに足速くねぇし」
「おれだって速くはないよ」
「かずの敗因は、じゃんけんだったって」
知ってる。なんであそこで一人勝ちしてしまったんだろうか。選ばれた人たちで負けた人が代表になるはずだったのに、担任が「代表になれるんだぞ?勝った人でしょ」なんて言ったから。しかも1発目で一人勝ち。これは悪運でしかない。
「マジ笑ったわ」
「おまえの声が一番でかかった」
「顔やばかったもん。顔面蒼白」
「隠せないんでね」
「人狼よわいもんな~」
リレーのことも心配だけど、作戦もしたい。あれ?観客席にいるのって柏原さん?そっか、写真撮るのか。カメラ構えてるし。隣にいるのは友達かな。あ、グラウンドに来てくれるときに割と隣にいる人だ。じゃあ、もうあの人は“視なくて”大丈夫かな。
「……かず」
「なに」
「暇じゃないだろ」
「え」
たかの顔を“視て”しまった。
「中学のときからあったけどさ、ただ人を見てること多いよな」
「……そうかな」
「なに見てんの?」
心臓が、頭が、うるさい。ドクドク拍動して、たかを“視た”ときの情報が流れてきて、バレたんじゃないかって焦って、暑くて呼吸が浅くなって、ぼく、どうしたら。
「人間観察?すきだよな」
「……そうなのかも」
「どうした? 頭まわってなくね?」
「……暑いから、かな」
「熱中症とかやめろよ。ほい、涼しいとこ行くぞ」
落ち着け、落ち着け。バレれないはず。バレたわけない。たかに何も言ってない。たかのこと“視た”けど、“視た”内容は言ってない。大丈夫、だいじょうぶ。
「せんせー、冷たいものあります?」
「どうした」
「和葉が熱中症疑惑あって」
「おいおい、リレーあるだろ。待ってろ」
さっき“視た”ときのものを言わなければ、気づかれないはず。余計なことを言わない。質問にシンプルに答える。それだけで、大丈夫なはずだ。
この前、話せることが嬉しかったのに、今は苦しい。どうして、こんなに苦しい。
「かず、座れよ」
「お、おう」
「どうしたんだよ。寝不足とか?」
「ちゃんと寝たはずなんだけど」
「しっかりしろよ、代表さん!」
背中を叩かれた。ちょっと痛い。でも少しだけ目が覚めた。大丈夫。たかにはバレてない。
「保冷剤持ってきたぞ。藤は座って」
「すみません」
「動けなくなったとかじゃ遅いからな」
すぐに持ってきてくれるんだ。まあ、最近は外で活動するなら熱中症対策しておくことがセットみたいだし、もっと酷くなったら救急車とかになるのかな。嫌だな。
「高倉、一応一緒にいてやってくれ。先生は本部にいるから」
「はい、あざまーす」
先生も忙しそうだ。わりと生徒会とか体育委員が動いてるなと思っていたけど、結局先生も運営しているんだな。大人だもんな。
「代表さん、お加減はいかかですか?」
「とても好待遇です」
「頭まわってんじゃん。水分はとっとけよ」
「はい」
妙に集中してしまったし、水分は取ろう。普通に過ごしてても暑いんだから、注意しないとな。リレーと、作戦と、体調と、やること多いなぁ。
「かずさぁ」
「へ?」
「間抜けな声だな。まあいいけど」
なにがいいんだろう。
「最近さ、ちょっと、気になってる子がいてさ」
「はあ」
「いつもロングの子が好きになるのにさ、黒髪のショートでさ」
「うん」
「窓からずっと景色眺めてて、気だるい感じでさ」
「……うん」
ん?何のはなしだ?気になる子?気がある子?まぁとりあえず最後まで聞くか。
「無口ではないんだけど、あんま自分から喋らなくて。なに考えてるのか分かんないわけ」
「うん」
「俺あんまりそういう子気にならないんだけどさ、何回も目で追いかけちゃうんだよね」
「……それで?」
「今までのタイプではないのよ。でも今気になってるのってさ」
これ、もしかして。
「高校生になって大人になったから、好みが変わったとかなんかな?」
「ラノベの話?」
「そうだけど」
やっぱりか。休憩時間やら暇な時間でラノベを読んで過ごしてるこいつが、現実の話してるとは思えなかった。まあ、カノジョほしいとは言ってたけど、こいつの好みなんか、現実にいない気がするんだよな。
「マジで、ガチで!」
「えー」
「どう思うよ?」
何に対して返事をしたらいいんだろ。まず、高校生って大人なのか?
「す、好きな子が増えるのはいいんじゃない?」
「浮気みたいなこと言うんじゃねぇよ」
「おまえのことだろ」
どうしろっていうんだよ。あれ?今おれって熱中症疑惑があるってことにはなってんだよな?たかが連れ出してくれたよな?
「あー、はいはい。かずに相談したのが間違いでしたー」
「開き直った」
「だってよ、貸したラノベは読み切ってくれるけど、推し聞かれると長考するしさ」
「推しとか言われても困るんだよ。一番なんていないし、ああいう系の小説さ、物語を理解するのに必死になって、キャラに集中できないんだよ」
ラノベって、そのシリーズ特有の言葉が出てきたりして、話を理解できてるか不安になる。一応全部読むし、感想を言えるようにはする。でも、推しってできないんだよ。
「ビジュアルで魅かれるとかさ」
「一目惚れってこと?」
「そう!」
「……好きな見た目が分からない」
「なんだよ!」
分からないよ。綺麗だなぁとか、可愛い系だなとは思う。けど、それが好みかって言われると分からない。あと、ラノベって高確率で胸が大きくて、なんか、それで客を引っ張る意図みたいなのを感じて、素直に見れない。
「いいよ、ラノベで推しを見つける気はない」
「アイドルとかでも推しいないのに?」
「それも含めてわかんないんだよ」
「どうやって好きになんだよ。まず見た目だろ!」
わかってるよ。
「中身がどうのこうの言うやつは、見た目で選んでるのがかっこ悪いとか思ってんだよ」
それはどうなんだ?本当に性格で選びたい人もいるだろ。
「結局一番初めに入ってくる情報って見た目だろ?見た目で選んで何が悪いんだよ」
「……言い訳?」
「正当な主張だよ」
「清々しいな」
そうなんだよ。一番最初に入ってくる情報は見た目、それを否定することはできない。実際、おれだって最初に見えるのは顔とか見た目の雰囲気であることに変わりはない。
でも、すぐに相手の考えていることが“視えちゃう”から、見た目の印象が吹っ飛ぶことがわりとあるんだって。言えないから、適当に流すしかない。
「はあ。やっぱつまんねー」
「知ってるなら言うなよ」
「なんだよ、こっちは気ぃつかってんだよ。あれ、あれ……」
「閑話休題?」
「なんでわかった」
“視た”だけ。実際に閑話休題って単語はなかったけど、話を変えたいって考えがあったのと、難しい言葉を使いたい意図が“視えた”。それに、この前の授業で出てきた。
「たかは分かりやすいよ」
「マジ?」
「それこそ、好きな人にはすぐバレるんじゃないの」
「それはあり得るなぁ。頭が良くて、俺とテンポよく会話してくれる子はタイプだしなぁ」
「あたまが、良くて」
男は自分より頭が悪い子の方が好きになりやすいと聞いたことがある。昔の女優さんで、頭が悪い振りをして売れたなんて話もあったらしい。正直「好み」という言葉で片付けられるだろうし、実際は頭が良いんだから、自分よりもっと良い人に取られるだろとは思う。
「頭が良いひと……たしかにいいな」
「え、なに?おまえ、そーいうのがタイプ?」
「あ、え、まあ、テンポが合うのは、いいよな」
「……へぇ」
なんだよ。いいこと聞いたみたいな顔するなよ。視なくても分かるわ。
「閑話休題にしては、いい話聞けたわ」
「よかったです」
「保冷剤もそれだけで充分そうだな」
「ぬるくなったらおれが返してくるよ」
「うっす」
よかった。だいぶ落ち着いた。閑話休題が効いてくるとは思わなかった。
たかとの付き合いは長い。中学からだし、おれが“視える”ことをネガティブに捉えているところを、たかは見ていたかもしれない。悪いことは考えてないし、信頼していい性格ではある。けど言えない。柏原さんみたいに、言えたら楽になるのかな。たかは、おれのこと受け入れてくれるのかな。本気にしてくれるのかな。
「お、次始まった」
「次?もう3年の競技?」
「ううん。2年の多分最後くらい。何回かおんなじのしてんじゃん」
「あぁ。そういうこと」
やっちゃったなぁ。ちゃんと“視て”いたかったのに、話の方に集中しちゃったなぁ。
柏原さんがああ言ってくれたけど、頑張りたかったなぁ。
「……まただ」
「なんか言った?」
「なーんも」




