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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第3章 波乱の五人旅
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第82話「混戦、再び」

 別室では、ユア一行がエボ・ダーカーたちと戦い続けていた。

 だが、こちらが強くなるにつれて、ダーケストはその数を増やしていった。


「簡単に倒せるのなら、おかわりをしてあげましょう」

「もうお腹いっぱいだよ~!」


 初めて長期戦を味わうユアはもうヘトヘトだった。

 見かねたディンフルが立ち上がろうとする。


「よく頑張った。あとは任せ……」


 しかし、体内にまだ酒が残っており、足に力が入らずに倒れてしまった。


「お酒が抜け切るまで休んでて。まだ戦えるから……」ユアは息切れしながら、彼を支えた。

「すまぬ……」


 フィトラグス、チェリテット、オプダット、ソールネムも疲れの色が出て来ていた。

 ユア一行はディンフルを除いた者たちで動いているが、ドーネクトやダーケストは微動だにせず、魔法を唱えるだけだった。そのため、こちらと違って涼しい顔をしていた。


「どうしたのです? どんどん呼んでいるので、倒していただかないと」


 エボ・ダーカーをさらに呼び、ダーケストが平然としながら言い放った。

 後ろで見ていたドーネクトは完全に出番が無く、「もう、こいつ一人でいいんじゃないか……?」と思うのであった。



 その時、部屋のドアが蹴り破られ、クルエグム、レジメルス、アジュシーラの三人が入って来た。


「俺らのアジトで何してんだ?!」


 全員が一斉に彼らへ向いた。

 ただ、ユアたちは無数のエボ・ダーカーに囲まれており、三人衆には気づかれなかった。


「何ですか、あなたたちは?」

「こっちの台詞なんだけど」


 ダーケストの疑問にレジメルスが冷たく返した。

 そこへ……。


「あぁーーーーー!!」


 アジュシーラとドーネクトが互いを指しながら叫んだ。


「闇魔導士のおっさん?! と、その助手!」

「ピコピコハンマーのクソガキ?!」


「シーラ、こいつら知ってんのか?」

「や、闇魔導士だよ! オイラがビラーレルへ行った時にいた二人! こいつらが邪魔したから、ジュエルを壊せなかったんだ!」


 クルエグムに聞かれたアジュシーラは早口で言い立てた。

 もちろん、ジュエルの件はウソだった。あれは二人がいなくても成功する可能性はあったが、クルエグムからいつまでも「ジュエルを壊せなかった役立たず」とバカにされないために責任転嫁したのだ。

 一方、ジュエルに関して初耳のドーネクトらは「何の話だ……?」と言わんばかりに首を傾げた。


「ジュエルはもういい! その闇魔導士が何してんだ?! ここは俺らのアジトだぞ!」


 クルエグムの怒りの矛先は、ドーネクトらへ向けられた。


「ここをアジトに……?」ダーケストは訝し気に三人を見た。

「そ。ヴィへイトル様が、僕らに贈って下さった最高のアジトだ」


 レジメルスがヴィへイトルを敬うように言った後で、「ちょっとかび臭いけど」と付け足した。

 聴力に長けたクルエグムは聞き逃さず、一瞬だけ彼を睨みつけた。


「ヴィへイトル……?」

「どなたか存じませんね」


 ドーネクトとダーケストはジュエルの時と同じく、目を点にしながら聞いていた。

 一方、ディンフルはユアに担がれながらも仲間たちを集めていた。


「見つかる前に逃げるぞ」普通の声で話すが、エボ・ダーカーが群がっているおかげでクルエグムに聞こえずに済んだ。

「でもティミーは……?」ソールネムが心配そうに尋ねた。

「ここを出て、水を飲んで酒を抜いてから探す。クルエグムらがいると、厄介だ」


 そう答えると、ディンフルは空間移動の魔法を使って、全員を廃虚の外へ移動させた。



 残った三人衆と闇魔導士一味はそんなことにも気付かず、互いを睨み続けていた。


「信じられませんね。こんな廃れた場所をアジトにするなんて。本来、組織のアジトにするなら、もっと小綺麗な場所を選びますよ。センスが無いのですね、そのヴィへイトルという者は」


 ダーケストからの罵倒に、三人衆が黙っていないはずが無かった。


「てめぇ! ヴィへイトル様をバカにすんのか?!」

「あの方なりに考えて選んで下さったと言うのに……!」

「そうだそうだ! アジトが無くて転々としてるお前たちよりはマシだ!」


「あいにくですが、我々は敢えてアジトを持たないのです。特定されればデメリットが多いので、転々と移動した方がいいと思いまして。あと、我が主の稼ぎも良くないのでね」ダーケストは余計な一言まで言い終えると、自身の主をチラリと見た。

「悪かったな!」


 ドーネクトが悪態をついたところで、クルエグムが剣を出して彼に斬り掛かっていった。


「俺ぇ?!」


 すかさず避けるドーネクト。

 クルエグムは再び相手を睨みつけた。


「てめぇが(かしら)か。部下にどういう教育してんだ?!」

「いや、俺は何も……。こいつが勝手に言ってるというか……」


 突然睨まれて焦るドーネクトへ、レジメルスも言い始めた。


「比べて、僕らの主であるヴィへイトル様はご立派だよ。意志も強いし、部下のことを考えてアジトまで用意して下さる。心から尊敬出来るよ。逆に、あなたは部下から尊敬されてるの?」


 ギクリとしたドーネクトが答える前に、ダーケストが「するわけないじゃないですか」とキッパリと言った。


「お前ぇ! もうマンゴープリンパフェ奢ってやらんぞー!!」

「けっこう。あれなら一人でも食べに行けますので」


 再びクルエグムが斬り掛かり、ドーネクトも必死にかわした。


「ムカついてんなら、あっち狙えよ!」思わず出た台詞と共に、助手のダーケストを指さした。

「仕方がありません。我々に歯向かうのなら、考えがあります」


 ダーケストが指を鳴らすと、すでに群がっていたエボ・ダーカーたちが三人衆を睨み始めた。


「何、こいつら?」

「闇魔導士の助手が召喚した人型のモンスター! 前はここまで黒くなかったけど……」レジメルスに聞かれ、アジュシーラが思い出しながら答えた。

「まぁ、いい。戦えるなら、誰でも大歓迎だぜ!」


 斬り掛かるクルエグムを迎えるように、エボ・ダーカーたちも「ダーカー、ダーカー」と叫びながら三人へ掛かっていった。


「フューリアス・ヴェンデッタ!」

「グルーム・フレイユール」

「チーキネス・シュピーレン!」


 三人衆がそれぞれ必殺技を出した。黒と赤紫色の刃のような二つの衝撃波、青緑色の弓型をした衝撃波、オレンジ色の球体がエボ・ダーカーたちに直撃する。

 彼らはあっという間に倒され、部屋の中が一気に片付いてしまった。


「はあぁぁぁ?!」

「強い……?!」


 ドーネクトはアゴが外れたかのように口を開き、ダーケストも三人衆の力に圧倒されるのであった。


                 ◇


 廃墟を出たユアたち。

 近くに水飲み場を探すディンフル。体内の酒を抜かなければ本来の力が出せかった。

 しかし、それらしいものが見当たらない。


「俺たちが行くから、ここで休んでろ」

「お前たちだけでは三人衆には敵わぬ」


 フィトラグスの厚意を拒否するディンフル。

 ジュエルで必殺技を強化したフィトラグスとオプダットだが、三人衆が本気を出せば勝ち目がないことを理解した上での発言だった。


 それに、今は闇魔導士もいる。エボ・ダーカーも部屋を埋め尽くしていたので、仲間たちに無理はさせたくなかった。

 自分が休んでいる間も戦ってもらっていたので、余計にそう思っていたのだ。



「よう」


 路頭に迷う一行の前に、ダークティミーが姿を現した。

 闇の力に染められた彼は、ユアたちを見下す位置に浮いているのであった。

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