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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第3章 波乱の五人旅
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第61話「五人旅、スタート」

 今日からディンフルが復帰し、五人で行動することになった。

 これまで付き合ってくれていたソールネムとチェリテットは、それぞれの村と町の周辺の魔物退治を手伝うことになったため、旅にはついて行かないことになった。

 ソールネムいわく「ディンフルがいるなら、私たちはいなくていいでしょ」とのことだった。


 身支度を終えたユアたちの元へ、フィトラグスとディンフルがやって来た。二人とも、ダトリンド国王に呼ばれていたのだ。


「早速、父上から依頼があった」

「この近辺に邪龍の巣窟らしきものがあるらしい。それを調査して来て欲しいそうだ」


「巣窟?」ティミレッジが聞いた。

「このところ、近くの洞窟から邪龍が大量に出ているらしい。もしそこが奴らの巣ならば、滅却せねばなるまい」

「そこを壊せば、邪龍は減るか?!」


 巣が見つかったことで、オプダットが嬉しそうに尋ねた。


「おそらく減らぬ。色々あって忘れているかもしれないが、邪龍にはヴィへイトルが召喚しているものもいるのだ」

「そういえばそうだったな……」予想が外れ、うなだれるオプダット。

「とにかく邪龍を倒せば、レベルアップにもなるね! 頑張ろう!」


 ユアがやる気に満ちながら言った。

 五人旅で戦えるのはこれが初めてなので、いつも以上に張り切っていた。


 ところが、ディンフルは良い顔をしなかった。


「何を言う? お前は留守番だぞ。いくら何でも危険すぎる」

「えっ?!」


 ユアが悲鳴のような声を上げると、フィトラグス、ティミレッジ、オプダットも驚いた目でディンフルを見た。


「何で留守番なんだよ? ユアも戦えるぞ!」


 フィトラグスに言われ、ディンフルはハッとなった。ユアが戦えるようになったことを忘れていたのだ。


「……そうだったな、すまぬ。しかし、邪龍と戦うにはもっとレベル上げが必要だとイポンダートが言っていたはずだ」

「大丈夫! 昨日ビラーレルでたくさん倒しまくったから!」


 ティミレッジが「“倒しまくった”って、一人では無理でしょ」と付け足した。

 ユアは邪龍にダメージは与えられるが、まだ少しずつだった。なので、昨日もトドメは他の者が刺してくれたのだ。

 本人の意気揚々さと戦闘結果の温度差に、ディンフルは思わずため息をついた。


「あのな……。倒すとは、一人でトドメまで刺すということだ! 人任せでは、”倒した”とは言わぬ!」

「で、でも、ユア、昨日すっごく頑張ってくれたんだぞ!」

「結果を残していなければ一緒である!!」


 オプダットが慌ててフォローに入るも、ディンフルはユアの頑張りを認めようとしなかった。彼の中では、未だ不安だったのだ。

 苛立つディンフルを見て、ユアも途端に緊張し始めるのであった。


                 ◇


 洞窟へ向かう道中も魔物は出た。

 だが、真っ先にディンフルが倒してしまい、四人の出番はほとんど無かった。

 特にユアは自然と後方へ下がっていたので、一度もチアーズ・ワンドを抜けなかった。


 もどかしい思いを抱えたまま、一行は洞窟にたどり着いた。


「ここ、来たことあるぜ!」


 魔王討伐でフィーヴェ中を回った一行は、知らない場所が無かった。

 オプダットは懐かしく思ったのか、目を輝かせた。


「たしか、森の人食い花を倒した直後で攻略したとこだよね?」

「ここはここで大変だったぞ……」


 ティミレッジも振り返り、フィトラグスは苦悶の表情を浮かべた。


「とにかく行くぞ。どんなに大変でも、進まねばならぬ」


 唯一、洞窟事情を知らないディンフルが率先して入って行った。

 攻略本で内部を知っているユアは「どんな洞窟なのか聞かないんだね……」と唖然とするが、魔王であり戦闘力に長けた彼なら、一発本番でも難なく攻略出来るのだろうと考えた。

 ディンフルの後を追うように、ユアたちも洞窟内へ入って行った。


                 ◇


 ユアたちが洞窟に入る頃、ヴィヘイトル一味の三人衆は、岩で出来た台座の上にある青紫色の水晶玉を取り囲んでいた。


「大丈夫そうだな」


 クルエグムが水晶玉の無事を確認する後ろで、レジメルスは気だるそうに腕を組み、アジュシーラはビクビクしながら見つめていた。


「ねえ、これって三人で来る必要、あるの……?」


 アジュシーラは先日、ジュエルの破壊に失敗したばかり。それを見抜かれてから、クルエグムとは特に一緒にいたくなかった。

 質問に不満を持ったクルエグムが「あぁ?」と怒りを交えながら聞いた。


「それ、どういう意味? 僕らと行動したくないってこと?」


 レジメルスが土壁にもたれながらアジュシーラへ尋ねた。


「す、水晶玉が大丈夫か、確認しに来たんでしょ? それなら、一人で良くない……?」


 アジュシーラがおどおどとしながら聞くと、クルエグムが彼へ向き合い、見下すような視線を向けた。


「ヴィへイトル様のご命令にケチをつける気か?」

「違うったら! ヴィへイトル様は悪くないよ!」

「じゃあ、誰が悪いんだ?! 俺か? それとも、レジーか?」


 クルエグムが怒鳴ると、アジュシーラは萎縮してしまった。

 見ていたレジメルスは助けるでもなく、「また始まった」と言わんばかりに「だる……」と漏らした。

 すると、今度は彼へ怒号が上げられた。


「またそれか……。聞いてるこっちまでだるくなるから、マジでやめろ!」

「しょうがないでしょ。ネガロンスさんから“嫌な予感がするから、三人で見て来て”って頼まれたんだから」

「“しょうがない”? お前も三人で行くの、嫌なのかよ?」

「そりゃあ、シーラの気持ちもわからなくもないよ。ひたすら上から目線で自慢して、ちょっと指摘しただけですぐ怒る人となんて、一緒に行きたくないもん」

「それ、誰のこと言ってんだ?!」


 クルエグムがレジメルスへ怒鳴っていると、アジュシーラはため息をついた。


「またケンカ……。こういうのあるから、三人で行きたくなかったんだけど」

「何だぁ?!」クルエグムが再びアジュシーラを睨みつけた。


「生意気言ってんじゃねぇぞ! 俺やレジーの必殺技がねぇと、敵にダメージ与えられねぇクソガキが! お前の必殺技、相手をナメ過ぎなんだよ!」

「オイラだって、ちゃんとやってるよ! 二人だって、オイラの目が無いとユアたちがどんな状況かわからないくせに!」


 アジュシーラは自身の額にある第三の目を指して言った。この目には、一度会った相手なら遠くにいても探れるため、クルエグムとレジメルスは重宝していた。

 ただ最近は、「あって当たり前」と思われているのか、二人から感謝の気持ちを感じなかった。


 再びレジメルスが「だる……」とため息をついてから去り始めると、その後から「“だるい”言うなつってんだろ!」と激怒しながらクルエグムもその場を後にした。


「オイラだけ水晶玉を見張ってよ。あの二人を成功させないためにも……」


 残されたアジュシーラは、二人の背中を睨みながらつぶやくのであった。

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