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第135話「未踏の地」

 古城の屋上。

 たどり着いた闇魔導士ドーネクトとその助手ダーケストは、巨大化した石・ノクリスタリーを目にした。


「何だ、この大きさは?!」


「おそらく、無数の妖気を吸ったと思われます。魔王の兄が与えたのでしょう」


 ドーネクトがその大きさに驚き、ダーケストはノクリスタリーが大きくなった経緯を推測した。


「とにかく、早く壊すぞ!」


「はい!」


 ドーネクトとダーケストはそれぞれの杖を光らせ、魔法を放つ準備へ入った。



「何をしている?」


 低い声が聞こえ、ぎょっとしながら二人が振り向くと、ユアを抱えたヴィへイトルが立っていた。


「これは我らの力の源。勝手なことをしないでいただきたい」


 ヴィヘイトルの前にモンスター化したクルエグムが現れ、手を横に振った。

 それだけで、闇魔導士らが杖に出していた魔法が消えてしまった。


「何っ?!」


 次の瞬間、ヴィへイトルの手から放った巨大な魔法弾が二人を襲った。

 ドーネクトとダーケストは古城の屋上から外へ投げ出されてしまった。


「ドーネクト! ダーケスト!」


 ユアが彼らの名を叫ぶ。

 二人がいなくなると、ヴィヘイトルはその場に彼女を降ろした。


「何てことするの?!」自由になったユアが抗議した。


「我らの力の源を消そうとしたのだ。それと、奴らは人間だ。俺が傷つけないとでも思ったか?」


 ヴィへイトルが冷たい視線で答えていると突然クルエグムが咆哮を上げ、ユアへ飛び掛かっていった。

 寸前のところでヴィへイトルが魔法でクルエグムを球体へ閉じ込め、動きを封じた。


「暴走しているな。例の石を三つも使ったのだ、そのうち俺たちの判別もつかなくなるだろう」


 クルエグムは中から球体を叩き、獣が吠えるような声を何度も出した。

 崇拝しているはずのヴィへイトルにも睨みを利かせていた。本当に判断が鈍って来ているようだ。


 ヴィへイトルが手をかざすと、クルエグムの体から青紫色のモヤが抜け、目の前のノクリスタリーへと吸収されていった。クルエグムは断末魔のような叫びを上げながら苦しみ始めた。

 彼の妖気を吸って、ノクリスタリーは少しだけ大きくなっていった。


 モヤが抜け切ると、クルエグムはモンスターから人の姿へ戻ってしまった。

 衣装は元のショート丈のジャケットにレザーパンツで、髪は下りたままだった。


 クルエグムが球体から出て来た。気を失っており、ドサッと音を立てて倒れてしまった。

 構わず、ヴィへイトルはユアへ向いた。


「さて、俺をリアリティアへ連れて行ってもらおう」


「え……?」


 ユアは相手の言動が信じられなかった。

 自身が与えていた力を部下から突然抜き、元に戻しておきながら放置し、別世界へ行こうとしているからだ。

 レジメルスたちを殺そうとしていたことと言い、改めて残酷な相手だと思った。


 ユアが何もしないでいると、ヴィへイトルが彼女の胸ぐらを掴んできた。


「連れて行け! さもなくば、ディンフルたちをもっとひどい目に遭わせるぞ!」


「そんなことするなら、連れて行かない……!」


 ユアは胸ぐらを掴まれた痛みと、ヴィへイトルへ対する恐怖で震えながらも拒否した。彼をリアリティアへ連れて行くと何が起きるかわかっていたからだ。

 相手への恐怖の方が勝っているが、「ディン様たちが来て、何とかしてくれる」とユアは仲間たちが来るのを信じるのであった。


「ならば、一度痛い目に遭ってもらおう」


 ヴィへイトルはユアを掴んでない方の手から青紫色の魔法弾を出した。

 それが自分へ向かって来るとわかると、ユアは思わず目をつぶった。


 するとその時、チアーズ・ワンドが光り出し、魔法弾を消した上、ユアを掴んでいたヴィへイトルの手にダメージを与えた。


「ぐっ……!」


 彼が手を庇ったためユアは解放され、チアーズ・ワンドを相手へ向かって構えた。


 ところが、今度は目を覚ましたクルエグムが起き上がり、それを掴み始めた。


「あなた?!」


「こんなのがあるからダメなんだ! ヴィへイトル様の邪魔までしやがって!!」


 彼は再びチアーズ・ワンドをユアの手から引き離そうとしていた。

 先ほどと同じように、チアーズ・ワンドからは拒絶するようにまばゆい光が出続けるが、クルエグムは構わず握り続けた。


「やめて! 触れ続けたら、あなたが死んじゃう!」


「いいんだよ!! ヴィへイトル様のお役に立てるなら、こんな命!」


 ユアとクルエグムの奪い合いが続く中、その後ろでヴィへイトルは腕を組みながら静かに見ていた。

 クルエグムがダメージを受けていることにはお構いなしのようだった。


 その時、チアーズ・ワンドが一層強い光を放ち、ユアとクルエグムを包み込んだ。


「な、何だ?!」


 二人を包んだ光は屋上を飛び出し、遠くへ飛んで行ってしまった。


「まったく、面倒くさい奴らだ……」


 一人取り残されたヴィヘイトルは呆れたように、静かにつぶやくのであった。



 ユアは冷たい空気で目を覚ました。


「寒い……」


 見渡すと、辺り一面が白銀の世界だった。

 フィーヴェでは今は夏のはずだった。雪が積もっているだけで建物などは一棟もなく、白い山が見える。

 どうやら、雪地帯に来てしまったようだ。


「イマスト(ファイブ)にこんなとこ、あったっけ?」


 ユアは場所に心当たりがなく、確認するためにリュックから攻略本を出そうとした。


「これが新しい地域なんだろ」


 すぐ近くで声がした。

 髪が下りたクルエグムが胡座をかいて、こちらを見ていた。


「クルエグム?! どうしてここに?」


「こっちが聞きてぇよ! お前が持つチアーズ・ワンドってのを奪おうとしたら、一緒に吹き飛ばされたんだ。だから、お前が知ってんじゃねぇのかよ?」


「わ、私も知らないよ! 行き先をコントロールしたわけでもないし……」


「そうか。でも、俺と二人っきりになったのが運のツキだ。ヴィへイトル様を傷つけたお返しもしたいことだしなぁ!」


 クルエグムは納得したかと思うと急に立ち上がり、剣を構えた。


「ち、ちょっと……?」


「お前のこと、告白を断った時から気に入らなかったんだよっ!」


 クルエグムは斬り掛かって来た。

 ユアはチアーズ・ワンドでバリアを張るが、剣の一振りで壊されてしまった。


「そんなもん効くわけねぇだろ! こっちには、これがあるんだからよぉ!」


 そう言うとクルエグムは、ボトムスのポケットから手のひらよりも小さなサイズの石を取り出した。

 青紫色をしていたため、ユアはすぐにノクリスタリーだとわかった。


「それは……?」


「ヴィへイトル様から力を注いでもらう時、出すの忘れてたんだ。残してて正解だったぜ」


 クルエグムはニヤリと笑うと、小さなノクリスタリーを剣の鍔へ押した。

 すると、石はそこへぴったりとはまってしまった。


「行くぜ!!」


 クルエグムは再び剣を振り、ユアもチアーズ・ワンドでバリアを張った。

 壊される度に彼が素早く剣を振って来るため、その都度ユアもバリアを張り直さなければならなかった。

 剣の鍔にはまるノクリスタリーは、これまで見た中では一番小さいものだったが、チアーズ・ワンドのバリアを破るほどの力は持っていた。


 ついにクルエグムの剣が当たり、ユアの手からチアーズ・ワンドが離れてしまった。


「これで終わりだ!」


 彼は目を見開きながら笑い、ユアへ剣を振り下ろした。

 ところがチアーズ・ワンドが離れても、彼女にはトウソウの力があった。ユアの体に自動でバリアか張られた。


「そのライトに続いて鬱陶しいぜ!!」


 クルエグムは何度もユアを斬りつけるが、今度のバリアはそう簡単に壊れなかった。

 先ほどのチアーズ・ワンドより強いバリアだったのだ。


(普通にトウソウの力に頼ればよかった……)



 その時、クルエグムが突然何かを蹴り上げた。

 蹴られたものはユアの前に落ちた。チアーズ・ワンドだった。


「拾えよ」


「えっ……?」


「それ拾って攻撃して来いよ。前みたいにビームや必殺技出したりして! さっきから防御だけじゃねぇか!」


 クルエグムが攻撃して来る一方で、ユアは防戦一択だった。

 それが面白く思わず、彼はチアーズ・ワンドで戦うよう指示して来たのだ。


「さっさと拾え!!」


 クルエグムが怒鳴るも、ユアはそれを拾い上げるだけで攻撃へ踏み出せない。


「来いよ!」


 チアーズ・ワンドを握りしめるだけで、相手を見つめるしか出来ないのであった。

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― 新着の感想 ―
自分から死にたがってるようにしか見えなくてなあ……
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