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第132話「王の間」

 数分前。

 古城の王の間で、ユアが目を覚ました。


「ここは……?」


「気が付いたか」


 声がした方を見ると、クルエグムが足を組みながら玉座に座っていた。

 床で倒れるユアを見下すような視線を向け、ニヤニヤと笑っていた。


「クルエグム……?」


 ユアは体を起こした。

 よく見ると、クルエグムは頭に黒い王冠をかぶり、その中央には青紫色の石がはまっていた。

 さらに彼は赤黒い肩当てに黒いロングコートの上から紫色のマントを身にまとい、いつもと違う雰囲気を醸し出していた。


 青紫色の石、いつもと違う服装……ユアの脳裏にレジメルス、アジュシーラ、ネガロンスの姿が思い浮かんだ。


「その王冠の石……ノクリスタリー?」


「何だよ、ノクリスタリーって? これは元々、俺がビラーレルの教会で拾ったものだぞ」


 ユアは確信した。

 ドーネクトが落としたノクリスタリーはクルエグムの手によって拾われ、それにヴィへイトルらが妖気を注いだことを。


「その石でレジメルスもアジュシーラも死にかけたの! ネガロンスも妖しい姿になったんだから!」


「知ってるぜ。でも、お前らがお節介焼いたから助かったじゃねぇか」


 ユアたちの介入がなければレジメルスとアジュシーラだけでなく、ネガロンスも死んでいたかもしれなかった。


「俺にも焼いてくれねぇかな?」


 突然、クルエグムの口から出た言葉にユアは驚愕し、相手を見つめた。

 彼はニヤニヤと笑っているが、アジュシーラから過去を聞いた後ではそれがクルエグムからの悲痛な叫びと思われたのだ。


「焼くわけないか。お前、俺のこと嫌いだもんな」


 彼はまだ面白そうに笑い、ユアの心情も見透かしていた。


「き、嫌いだよ! でも、ここでは死なせたくない!」


「俺を助けるつもりか? んなことしたらどうなるかわかってんのか? また面倒くさいことになるんだぞ」


「わかってる。でもあんな過去を知ったら、死なせたくないよ……」


「あ?」笑っていたクルエグムの表情が一気に緊迫し始めた。


「何だよ、過去って? お前に昔の話なんかしたか?」


 ぶっきらぼうな言い方に、ユアにも緊張が走り出す。「言ってはいけなかった」と悟り、口をつぐんでしまった。

 肝心な問いに相手が黙ったので、クルエグムが怒りを露わにした。


「“昔の話なんかしたか”って聞いてんだ!!」


 怒鳴られたユアは体を一瞬だけ震わせた。

 それでも答えられなかったが、彼はすぐに見抜いた。


「……アジュシーラか。あいつ、人の過去を見れるからな」


 クルエグムは面白くなさそうに言うと、ユアを睨みつけた。


「だから何だよ? 俺の過去に、てめぇは関係ねぇだろ!」


「か、関係ないけど、あんな過去を聞かされたら……」


「戦う気なくしたってか? 偽善者の王子や魔王らの影響でも受けたのか? そんなお節介いらねぇんだよ! 大体、俺に同情したところで何が変わるんだよ? 死んだ奴らが帰って来るのか? 俺のボロボロになった心が元に戻るのか?! 記憶でも無くさねぇ限り、俺の人間どもへの恨みは消えねぇんだよ!」


「そ、そうだけど……」


「おどおどしてねぇで、はっきりしろ!!」


 クルエグムは魔法弾を何発も撃って来た。

 ユアもチアーズ・ワンドの力で防ぐが、ノクリスタリーで強化された魔法弾は相殺出来ず、まともに被弾してしまった。

 だが、ここでもトウソウの力が守ってくれた。ユアの体には少しのダメージがあっただけで重傷にはならなかった。


「戦えるようになったからって、調子こいてんじゃねぇぞ! お前なんか、“リアリティアへ行く手段”ってだけで、ここへ連れて来たんだからなぁ!」


「え? 何であなたがリアリティアへ……?」


「俺じゃねぇ! ヴィへイトル様だ! 昨日、フィーヴェに新しい島が出来ただろ? あれ、リアリティアからの影響らしいな? それでヴィへイトル様は考えたんだ。リアリティアから何かすれば、フィーヴェに影響が出るって。それでお前の力でリアリティアへ行って、向こうからディンフルや色んな奴らを消して、フィーヴェから人間どもを消すんだよ!!」


 ユアは絶句した。

 クルエグムから告げられたヴィへイトルの企みがあまりにも残酷だったからだ。

 それが理由で自身が目を付けられ連れて来られたことを知り、ショックを受けると同時に、絶対に力を貸したくないと思った。


「ディン様たちを傷つけるなら、協力しない!」


 ユアは立ち上がり、出入り口である扉へ向かって駆け出した。

 クルエグムが魔法を使うと、黒い鉄の棒が数本上から降って来ては扉の前に刺さった。

 鉄格子のようになったため、部屋から出られなくなってしまった。


「ヴィへイトル様が戻るまで、ここにいな。そして、俺と遊ぼうぜ」


 ユアがチアーズ・ワンドを光らせて棒を消そうとすると、クルエグムが瞬間移動でやって来た。


「そんなに俺がイヤか?! なら、力づくだ! まずは、そいつをよこせ!」


 クルエグムがつかんだ途端、チアーズ・ワンドは激しく光り出し、彼を遠くまで吹き飛ばしてしまった。


「ぐあぁっ!」


 チアーズ・ワンドはヴィへイトル一味には触れられないようになっていたのだ。

 ユアはそれを再び光らせ、棒を消そうとした。


「待ちやがれ!!」



 クルエグムが体を起こしたその時、ユアの目の前の扉が開き、ディンフルたちが入って来た。


「ユア!!」


「ディン様、みんな!」


「こいつが邪魔なのだな? 下がっていろ!」


 ディンフルはすぐに状況を把握し、ユアへ指示を出した。

 彼女が離れた瞬間、ディンフルは大剣を出して数本の棒を斬ってしまった。扉の前から棒が無くなり、ディンフルたちは王の間へ入れた。


「くそっ!」クルエグムが悔しそうに一行を睨みつけた。


「クルエグム! ヴィへイトルから聞いたぞ! お前たちの好きにはさせぬ!」


 ディンフルと仲間たちがユアを隠すように立つと、相手は突然大きな声で笑い始めた。


「面白ぇ! やれるもんならやってみろよ! こっちには、これがあるんだぞ!」


 クルエグムは得意げに、かぶっている王冠を指さした。

 中央にはノクリスタリーと思われる青紫色の石がはまっていた。


 ところが、ユアたちは怯まなかった。何故なら、これまでノクリスタリーを手にした三人の敵と戦い、勝利して来たからだ。

 今回もユアが持つチアーズ・ワンドと仲間のジュエルを共鳴させれば、ノクリスタリーを壊せると自負していた。


「怖くないよ! 壊す方法、知ってるんだからね!」



 ユアがチアーズ・ワンドを構えたその時、今度は彼女の周りに青紫色の棒が数本現れ、床に刺さった。

 さらに棒から黒い光が発せられ、ユアを囲っていたディンフルらは吹き飛ばされてしまった。


「な、何だ……?」


 ユアは青紫色の棒が作る檻の中に閉じ込められてしまった。

 さらに最悪なことに、その隣にヴィへイトルが姿を現した。


「ヴィへイトル?!」


「この檻はどんな力も吸収する。よって、ユアとお前たち、どちらの力も檻を跨ぐことは出来ない」


「ふざけるなぁ!!」


 ディンフルは大剣を振り、檻を斬った。

 だが檻にはカウンターの力が掛かっており、一太刀浴びせた分、檻から出た黒い電撃がディンフルへ襲った。

 すかさずバリアを張ったことにより、ダメージは免れた。


「これで共鳴は出来ん! お前たちの最期だ!」


 そう言うと、ヴィへイトルは黒い電撃を今度はクルエグムの王冠にはまるノクリスタリーへ浴びせた。


「まずい!」


 オプダットが止めようと駆け出す。

 それに気付いたクルエグムは怪しげに笑いながら、胸元から手のひらサイズのノクリスタリーを二つも取り出した。王冠のものを含めて三つも隠し持っていたのだ。


 ヴィへイトルはそれら二つにも電撃を注いだ。


「やめろ! その石は命を削るんだぞ! 三つともなると……!」


「うるせぇ! ヴィへイトル様のためなら、いいんだよ!」


 止めるフィトラグスをクルエグムは遮った。彼は危機的状況を承知でも、まだヴィへイトルを敬っていた。

 さらに彼の声は語尾へいくにつれて、高音と低音が入り混じった不協和音のようになっていった。

 やがて、彼の全身は黒いモヤに包まれ始めた。


 皆の胸騒ぎはまもなく当たり、モヤが晴れると新たなクルエグムの姿があった。


 ストレートだったハーフアップの髪はボサボサ状態で下り、全身は髪と同じ赤紫色になり、肌にはタイツで覆われたように光沢がつき、背中には黒い翼が生え、手足の先は爪と合体したように尖っていた。

 さらにオッドアイだった目も白目が無くなり、それぞれ水色、黄緑だけになっていた。


 レジメルスやアジュシーラとは違い、異様な見た目となるのであった。

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