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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第4章 一味、分裂
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第120話「決別」

 リアリティアのとある公園。

 アヨが去った後もユアはベンチに座り込み、動けずにいた。


「初めから友達と思っていなかった」「リマネスに近付くために友達のフリをした」「空想話をガマンして聞いていた」「居場所や職場ををばらしたのも私」


 興奮から冷めて来たユアは、アヨから言われた数々のショックが少しずつ戻って来ていた。

 隣に座るディーンが優しく彼女の背中をさすると、ユアの目から再び涙が溢れて来た。


「ずっと……友達と、思ってたのに……」


 溢れた涙がこぼれ落ちると、ディーンは今度はユアを抱き寄せ、優しく頭を撫でた。


「何も知らずに一生付き合うよりも、ここで切れた方がよっぽどいい」


 ディーンは立ち上がり、ユアの真ん前でしゃがみ込むと彼女の手を取った。


「お前には俺たちがいる。フィーヴェの仲間は誰一人、お前を裏切らぬ。ずっと、味方だ」彼は優しい口調で励ました。

「本当に……?」ユアは涙にまみれた顔でディーンを見つめた。

「信じられぬか? 俺がこうして来てやっただろう。それに……」


 ディーンが別方向へ視線をやると、電柱が見えた。

 そこにはラルス(フィトラグス)、ティム(ティミレッジ)、ダット(オプダット)三人の姿があった。


「悪い……」

「どうしても心配になったから」

「ユア、大丈夫か?」


 ラルス、ティム、ダットもユアを心配し、ディーンと共にリアリティアへ来たのだった。

 三人がこちらへ来ると、優しさをしみじみと感じたユアの目からさらに涙が溢れ、彼女は声を上げて泣き出した。


「いかん!」


 ディーンは慌ててマントを出すと、ユアを頭から包んだ。

 一瞬だけ騒がしかった辺りが静けさに包まれた。ディーンのマントには防音の能力もあるのだ。



 しばらくすると、泣き止んだユアが中から出て来た。


「ありがとう。もう大丈夫……」彼女の目は泣き腫らして赤くなっていた。


 ディーンたちは新たな不安に襲われた。

 せっかく決戦を前に別れの挨拶をしに行ったユアだが、却って嫌な思いをさせてしまった。

 そのため、「戦いに支障が出るのでは?」と気掛かりになるのであった。



 ユアのスマホが突然震えた。

 フィーヴェではスマホは圏外で使えないため、今までは電源を切っていた。だが、リアリティアへ戻ってから電源を入れた途端、通知が山ほど届くため着信はバイブレーションにしていたのだ。

 確認すると、意味のないDMが届いていた。


 それを削除すると、ユアは留守電が数件あることに気付いた。

 アヨからだった。しかも、先ほどから順番に送られて来ていた。


「アヨから着信が……」

「構うな。先ほどの対応を見ただろう? あいつは付き合うべき人間ではない」


 ディーンは声を低くして警告した。

 彼としては、これ以上ユアが傷つけられることがガマン出来なかったのだ。


 だが、ユアは最初に届いた一件を開いてしまった。

 長く付き合って来た幼なじみが暴言を吐いた後で残した留守電が、どうしても気になったのだ。

「何か事情があって、イライラしていたんじゃ?」ユアは裏切られたにも関わらず、まだアヨへの期待は捨て切れずにいた。


 ユアがスマホを耳に当てて聞いていると、横からディーンが奪い取り、スピーカー機能をオンにした。

 アヨの声が途切れ途切れに、五人の間に響き渡った。


「ユア……さっきはごめんね。少し……いや、かなり言い過ぎた。私、仕事が好きになれなくて、イライラしてたんだ。それでつい、当たっちゃった。本当にごめん……」


 一件目のメッセージはそこで終わった。

 聞いていたユアの表情に少しだけ元気が戻った。予想通り、アヨはイラついていたのだ。

 謝罪の言葉があっただけでも、ユアには充分だった。


 安堵するユアを見て、代わりにディーンが次のメッセージを再生した。


「また……いや、今度こそ友達になってくれる? 今度は、本当の友達として付き合うからさ」


 二件目はそこで終わった。

 ディーンは続けて、三件目を再生した。


「もし、OKならメールして。LIFEのアカウントも教えてよ。それで、これからも連絡取り合おう。ユアが海外に行っても、友達だから」


 メッセージは終わった。ユアの目に少しずつだが希望の色が戻って来た。

「今度こそアヨは友達になってくれる」先ほど言われた数々のショックがウソのように晴れて来た。

 リアリティアにはメールよりも重宝されている「LIFE」という無料の連絡アプリがある。それで前よりも連絡がしやすくなる。


 ディーンはユアの様子を確認しながら四件目を再生した。


「今、返事待ち。さっき散々言い負かしたからショックで返信出来ない、もしくはシカトされるかもしれない。でも、留守電入れて謝りまくってるから大丈夫。ユアってコロッと騙されるから。LIFEのアカウント聞いたら、またすぐ拡散するから!」


 アヨはパソコンなどでビデオ通話しており、留守電を入れていることに気付いていなかった。

 その内容からして、彼女はまたユアの情報を拡散しようとしているようだ。

 喜びに溢れていたユアの目に再び不安の色が襲った。


 ディーンは渋々だが、次のメッセージを再生した。


「ヤバ……。今の会話、留守電に入ったかも? まぁ、いいか。()()()()


 ユアは再びショックを受け、その場に崩れ落ちた。最後の言葉で、アヨから軽く見られていることを思い知ったのである。

 慌ててティムが「大丈夫?!」と彼女を抱え上げた。


 ディーンは次のメッセージを再生した。画面を押す指も表情も、重くなっていた。


「ユア! 友達になってあげるから、明日の合コン付き合ってよ。人数足りなくなって困ってんだ。あんたもそろそろ彼氏作った方がいいんじゃない? ゲームばっかするより、外に出て人と会った方がいいわよ。どうせ、私以外に友達いないんでしょ? わざわざ会いに来るぐらいだし」


 それが最後のメッセージだった。

 アヨは留守電を使ってまで、上から目線で決めつけたような言い方をし、さらにまたユアを利用しようとしていた。


「ひどい奴だな……」

「もう、付き合わない方がいいんじゃね……?」


 ラルスとダットも失望していた。

 特に、仲間や友人との絆を大事にするダットですら、付き合わない方がいいと推奨するほどだった。


「ユアちゃん、もう会わない方が良いと思う。ここで許したら、またこれからも利用されるよ」


 ユアを抱え、ベンチに座らせたティムも助言した。


「皆の言う通りだ。メッセージによると、お前のアカウントを拡散しようとも企んでいた。まったく、リアリティアの教育はどうなっているのだ……? あまりにも陰湿すぎる!」


 最後にディーンが怒りを露わにした。

 ユアは四人には答えず、スマホを操作し始めた。


「ユア?」


 ディーンが呼び掛けると、ユアは顔を上げて彼らを見た。

 表情は力なく、虚無を感じさせた。


「……終わったよ」

「何が?」彼女から発せられた一言が理解出来ず、ディーンが再び聞いた。


「アヨとの関係。今、番号とアドレスを拒否して、連絡先も消したから」

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― 新着の感想 ―
それでいいよ ゲームの世界の敵より現実に生きてる悪意有る人間のほうがよっぽど邪悪
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