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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第4章 一味、分裂
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第103話「涙の解放」

 工場前の大草原。ディンフルの魔法で五人は外に出られた。

 だが、そのタイミングで工場は崩れ落ち、瓦礫の山と化してしまった。


「ノッティーは?!」


 フィトラグスが囚われた弟が心配になった。

 ノティザはアジュシーラの後ろの球体に入ったままで、救出には行けなかった。巻き込まれたと思い、彼は戦慄した。


「安心しろ」


 穏やかに言うディンフルの腕の中にはノティザが眠っていた。いつの間にか球体から出し、共に外へ連れ出してくれたのだ。

 フィトラグスはノティザを奪い取ると、幼い弟を強く抱きしめた。


「よかった……!」


 さらにノティザを抱いたまま、「ありがとう……」と声にならない声でディンフルへ礼を言うのであった。



 喜びも束の間、同じくディンフルの魔法で外に出たアジュシーラが咆哮を上げた。キマイラ化はまだ解けていなかった。


「あの子を何とかしないと!」


 ユアが助ける意思を固めたところで、眠っていたノティザがようやく目を覚ました。


「こ、ここは……?」

「ノッティー! 気がついたか!」

「おにいちゃん?! どうして、ここにいるの?」


 島で再会した時は喜びを表していたノティザだが、今日は驚いていた。

 別れ際、「来年の春まで会えない」と言われたばかりなので、こんなに早く兄と再会出来るとは思わなかったからだ。


 だが再会を喜ぶ間もなく、アジュシーラは一行へ攻撃を仕掛けて来た。

 鋭い爪で地面は抉れ、シッポの先端にある口は再び炎を吐き、一行の周囲を炎の海と化させた。


 ティミレッジが相手の動きを遅くする白魔法を使うが、暴走したアジュシーラにはやはり効かない。

 オプダットとディンフルの必殺技も、ユアのビームもかき消されてしまった。

 フィトラグスはノティザを抱いたまま、攻撃を避け続けた。参戦したかったが、弟を一人にするわけにいかなかったのだ。


 その時、敵の姿を見たノティザが思い出したように声を上げた。


「オイラちゃん……?」


 幼き王子の声を聞き、アジュシーラの動きが止まった。

 ノティザはフィトラグスから降りると、真っ先に相手へ向かって行った。


「ノッティー、行くな!」


 弟の腕をつかんで引き止めるフィトラグス。

 ノティザは兄に止められると、その場からアジュシーラへ向かって叫んだ。


「やっぱり、オイラちゃんだよね?! すっごい姿だね! ぼく、しってる! それ、キマイラって言うんでしょ?」


 ノティザは明るく話しかけた。

 普通なら今のアジュシーラを恐れるものだが、その素振りがなかった。

 恐怖よりも、相手が別の姿でいることの珍しさが勝っているのだろう。


 一方でアジュシーラは、息をゼエゼエと吐きながらもノティザを睨みつけていた。

 動きが止まったのは体力が残り少なくなって来たからで、相手が仲良くなったばかりの友とは気付いていなかった。


 アジュシーラが口を大きく開けて威嚇すると、口内に生えた細長く尖った歯が露わになった。

 ノティザが襲われると思ったフィトラグスが、すかさず弟を背にして立った。

 だがアジュシーラは襲って来ず、頭を抱えながら苦しみ始めた。


「くるしいの?」


 ノティザは、今度は心配して声を掛けた。

 相手は答えられず、ひたすら苦しそうな呻き声を上げていた。命の終わりが近いのか、襲って来る元気も残っていないようだ。


「おにいちゃん、オイラちゃんを助けてあげて!」ふいにノティザは自分の前に立つ兄へ訴えた。

「ちょーりゅーを倒したおにいちゃんたちなら、助けられるでしょ?」次にユアたちを見回しながら、同じように呼び掛けた。


 ノティザにとっても、アジュシーラは大切な友達だった。弟の必死な眼差しを見て、フィトラグスは「オイラちゃんは悪い子だ」などとは言えなかった。現に相手も今は苦しんでいる。


(私たちもあの子を助けたいよ。でも、どうしたらいいの? このまま放っておいたら間違いなく死んでしまう。三人衆の中では一番若いし、ここで死なせたら可哀想だよ……)


 ユアもアジュシーラに同情せざるを得なかった。



 その時、チアーズ・ワンドのペン先が赤く光り出した。

 光はチアーズ・ワンドを飛び出し、フィトラグスの剣の鍔にあるジュエルへ注がれていった。


「俺の時と一緒だ! 今度はフィットの剣に入ったぞ!」

「なるほど。チアーズ・ワンドはジュエルと共鳴するのだな!」


 オプダットはあっけに取られ、ディンフルは光とジュエルの仕組みを理解するのであった。


 チアーズ・ワンドから光を得た剣はジュエルの力でより輝き、刃の部分が赤い光に包まれた。

 フィトラグスは剣を握り直し、アジュシーラへ斬り掛かって行った。



「ストライク・ルークス・ツォルン!!」



 白い光と、新たに出た赤い光の二層がアジュシーラへまっすぐ直撃した。

 すると、彼の体内に入っていた青紫色の石が体外へ飛び出ては、粉々に砕け散った。アジュシーラの体から黒と青紫色の光が抜け、獅子のような体もヘビのようなシッポも消え、ライオンのたてがみのようだった髪も元の天然パーマに戻り、彼は人の姿に戻ったのであった。


「オイラちゃーん!」


 力が抜け、倒れるアジュシーラへノティザが駆け寄った。

 しかし、相手は幼い王子の手を振り払った。


「ごめん……。もう、君とは遊べない。見ただろ? オイラはバケモノだ。人間を恨む、怖いディファートなんだよ」


 アジュシーラは白目が戻った申し訳なさげな目で拒否した。

 ノティザはきょとんとしながら、相手を見つめ続けた。


「それと……君、インベクルの王子なんでしょ? オイラは、君のお兄ちゃんの敵だ。そのお兄ちゃんと仲間たちを傷付けて来たんだ。だから、もうオイラと仲良くしない方がいい」

「なんで、なかよくしないの?」


 ノティザは拒まれても、アジュシーラを怖れなかった。


「“何で”って……、オイラと君たちは、敵同士だからだよ!」

「でも、オイラちゃんはハシゴから落ちたぼくを助けてくれたよね? ぼくが“しゅぎょーに行きたくない”って言ったらテレポートして、いっしょに逃げてくれたよね? ぼく、オイラちゃんとおともだちになれて、うれしかったんだよ!」

「は……?」


 今度はアジュシーラが目を丸くした。

「怖いディファート」だと伝えても、幼い王子は前に見せた笑顔で受け入れ続けてくれた。


「ケンカしたらあやまって、なかなおりしなきゃダメだよ! ぼく、おにいちゃんたちとオイラちゃんには、おともだちになってもらいたいんだ!」


 ノティザがさらに満面の笑みを浮かべながら言うと、アジュシーラの目から次々と大粒の涙が溢れ出た。

 しまいには、これでもかと言うほどの声量で号泣するのであった。

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― 新着の感想 ―
よし、次の王様にはノッティーになってもらって ディファートとの融和路線をさらに押し進めるか
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