表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よりにもよって、物語が作り込まれた美少女ゲーに転生してしまった  作者: 根田わさび
第一章 守りたかったもの、守りたいもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

第七話 真意

来て頂きありがとうございます。

 次の日の朝。洗濯物当番のオルカとサンゴと共に大量の洗濯物(下着除く)をギルド裏のバルコニーに干していた。


「オルカ、洗濯物干し終わった?」

「おう!バッチリだぜ!!」

「どこがですか。ちゃんと広げてください。」

「え〜?どうせ時間が経ちゃ広がるんだし良いだろ?」

「そんなわけが無いでしょう。毎回、私やユーゴさんで広げ直しているんですよ?」

「そーなのか!?知らなかったぜ...。」

「そんな勘違いをしていたなんて...知りませんでした。」

「あはは...。」


なんて皮肉の聞いた返しなんだ…と苦笑する。

転生前はただただ億劫だった家事も、みんなと一緒なら楽しく感じる。

人と関わることって大事なんだな。


ちょうど洗濯物を干し終わった頃、コバンかヒョコっと覗いてきた。


「みんな、洗濯物ありがとう。終わってすぐで申し訳ないんだけど、会議テーブルに来てくれないかな?」


水流の件で何か進展があったのだろうか?

俺もキョウに持ち掛けられた取引について話したかったから丁度いい。


 会議テーブルに着き、ひとまずコバンの話を聞く。


「実は、昨日こんな手紙が届いて・・・。」


そう言って、一枚の紙を机に置いた。


「これは誰からの手紙?」

「サン大陸側のエントランス港を管理してる『ドラゴンズ・デン』っていうギルドのマスターさんからです。」


そういえば前に、オルカが「いつも協力してるギルドがある」とか言っていたな。


 手紙の内容をざっくり要約するとこうだ。


シーガーデンが困っていると聞いて資料を漁っていたら、昔の文献を見つけた。

その文献には「『制魔の宝玉』を水龍に飲ませることで暴走が収まった」と記されていたらしい。封筒には『制魔の宝玉』と思わしきピンクのビー玉の様なものが同封されていた。


「『制魔の宝玉』ってなに?」


疑問符を浮かべていると、サンゴが教えてくれた。


「昔からある魔道具です。昔は珍しいものだったので『宝玉』とされていたそうですが、今では普通に買うことが出来ます。」

「なるほど・・・。」


恐らく宝石みたいな扱いだろう。


「それだけで収まってくれるなら安いよねぇ~。」


ゆらゆらと呑気そうに話すクララ。しかしコバン、オルカ、サンゴは困った顔をした。


「それは確かにそうだけど...。」

「暴れ散らかしてる水龍に宝玉を飲ませろとか出来んのか...?」


そこで、俺はキョウに持ち掛けられた取引について話してみる。


「それなんだけど、実は昨日、キョウって人と会って...。『シーガーデンの問題解決に協力する』って言ってくれたんだよね。」


すると、皆が驚いた顔をした。


「キョウさんって、『夜来(いえらい) キョウ』さんのこと・・・!?」

「う、うん。そうだよ。」

夜来(いえらい)キョウっていや、ムーン大陸最強の魔法使いじゃねぇか!!」

「え、そうなの!?!?」

「えぇ。ヴァンパイア・マンションというギルドのマスターとしても有名です。」


最強の魔法使い...!そんな有名人だったのか...!

驚いていると、クララが袖をゆらゆらしながら口を開いた。


「でも~、そんな人が無償で受けてくれる訳じゃないんでしょ~?何か対価を要求されたんじゃない~?」

「それが、『シーガーデンの問題が片付いたら、私のギルドに一度来て欲しい』って言われて...。俺に頼みたい事があるって。」

「ユーゴはモテモテだねぇ~。」


呑気に言うクララと対照に、コバンは不安そうな顔をしている。


「でも、それだとユーゴさんだけに対価を押し付けている気が・・・。」

「いやいや、気にしないで。むしろ俺一人が出張するだけで良いなら安いもんだよ。」

「でも・・・。」


コバンは相変わらず優しいな。


「ユーゴがこう言ってんだし良いじゃねぇか!」

「...では、ありがたく・・・!」


そう言って、こちらに向かってペコリと頭を下げる。


「じゃあ、ちょっとキョウに連絡してくるね。」


教えてもらった連絡先を入力し、電話...もとい通信を掛ける。


〔おや、思ったより早く説得できた様だね?〕

「うん。それが・・・」


俺は手紙の内容をキョウに伝えた。しかし・・・


「そういう訳で、水龍に制魔の宝玉を飲ませるのに協力して欲しいんだ。」

〔ふふ、やはりそういう事か。悪いけど、それには協力できないね。〕

「え?」


キョウの反応は意外なものだった。

どういう事だ・・・?気が変わったのだろうか。


〔私の提案は『水龍の討伐に協力する』ことだよ。鎮静化への協力じゃない。〕

「それは、どういう・・・。」

〔時期に分かるさ。とにかく、私は『水龍の討伐』以外は協力しない。

 再び話が着いたら連絡しておくれよ。それじゃあね。〕


そう言って一方的に通信を切られてしまった。

討伐の方がよっぽど労力を使いそうなものだが、キョウの中で譲れない何かがあるのだろうか。なんにせよ、一度みんなに相談しよう。

 会議テーブルの方へ戻ると、真っ先にオルカが身を乗り出した。


「ユーゴ!キョウはなんて!?」

「それが、『水龍の討伐』以外は協力しないって言ってるんだけど...実際、キョウの力を借りれば討伐って出来るものなのかな?」


いつもならすぐレスポンスがあるはずが、皆気まずそうに黙ったままでいる。

沈黙を破ったのはサンゴだった。


「討伐自体は可能だと思います。ただ・・・」

「何か他に問題があるの?」


すかさずクララが答える。


「ほら~、前にコバンちゃんが言ってたでしょ~?水龍様は元は海の守護神だし~、討伐するのは気が引けるんだよねぇ~。」

「あ、そっか・・・。」


そういえば、前にそんな話をしていた気がする。キョウが言っていた『説得』とはこの事だったのだろうか。

 悶々と考えていると、しばらく静かだったコバンが声を出した。


「あ、あの・・・。」


しかし、その声は震えて今にも泣きだしそうだ。


「コバン、どうしたの?」

「...クララちゃん、嘘を吐かせてごめんなさい。」

「マスタ~、無理しなくていいんだよ~?」

「ううん。これはユーゴさんにも、ちゃんと話しておかないと。」


泣きそうな、でも何かを決意したような顔でこちらを見つめる。


「ユーゴさん、私たちが水龍を討伐しない本当の理由は守護神だからじゃなくて、本当は・・・



水龍は、シーガーデンの前のマスター。そして、私のお姉ちゃんだから。」




















制魔の宝玉 主に魔力を抑えるのに使われる魔道具。

8話について、大幅な内容変更のため更新を見合わせます。

申し訳ございません

その分、面白くなるように頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ