第二話 世界一優しいTKG
読んでくれてありがとうございます!
たくさん見て頂いて嬉しいです
「もしかして俺、美少女ゲーの世界にいる・・・!?」
『美少女楽園〜プリティ・バトル〜』以外にも『戦艦少女』『美少女モンスター〜むちむち♡楽園パラダイス♡〜』『美少女お姉さんの事件簿』等、アプリストアで「美少女」と検索したら出てくるタイトルをほぼ全て遊んだ自称「美少女ゲーマスター」のこの俺が!!美少女ゲーの世界に転生した!?おいおいなんだそりゃ!!
最高じゃないか!!!!!!!!!!!!
死に際に見ている夢か妄想かもしれないが、この際何でもいい。
「お、おい…マスター。コイツ、なんかニヤニヤし出したぞ。大丈夫なんだよな?」
「だ、大丈夫じゃないかも……。」
リセマラとしては大当たり、異世界ハーレムものだったようだ。このウィンドウは俺が「プレイヤー」としてこの世界に来たことを意味しているのだろう。
しかし、今は確実なことは何も分からないし一旦ごまかしておこう。
「お、お腹が空いておかしくなったかなぁ~...アハハ...。」
いつの間にかウィンドウは消えていた。本当に幻覚の可能性もあるし、とりあえず目の前の問題から一つずつ対処していこう。
「そ、そうですか...?では急ぎ、シーガーデンに向かいましょう。案内します!」
「じゃ、アタシはみんなを撤退させてくる。また後でな!!」
コバンに連れられ再び港町を歩く。先ほどは海沿いだったが、海から離れていくうちに赤レンガの屋根と白いコンクリートの建物が増えてきた。建物の周りに植えられた植物の緑と、海と空の青が良く映えている。・・・が
「はあ、はあ、はあ・・・。」
「だ、大丈夫、ですか?って、大丈夫じゃないですよねすみません...。」
山を削ったように作られた街は坂道と階段ばかりで、ロクに運動してこなかった俺にはハードな道のりだった。こんな道を毎日歩いてるのか...みんなすごいな。
「あ、でも、着きましたよ!」
階段の上からそんな声が聞こえ、最後の力を振り絞って登りきる。
と、石畳の広場が現れた。広場を囲むように白い建物が並び、中央に青緑の屋根の建物があった。掲げられている看板に『SEA GARDEN』とオシャレな文字で書かれてある。あれがギルドか...。二階建て程の高さで、思ったよりは小さい。
コバンは茶色い木の扉を開け、招き入れてくれる。
「どうぞ、お入りください。」
「ありがとう。」
建物内はリゾート地のお土産屋のような木造。部屋が区切られているというよりは一つの大きな部屋に色々な設備がある感じだ。まず正面に四角い大きなテーブルがあり、木製のイスが6つ置いてある。左手側にはリゾートにある様な、何かの植物とガラスでできた低めのテーブルと、何かの植物で編まれたようなソファーが二つ。右手側には受付カウンターがあり、棚が瓶や流木、枯れたサンゴなどで飾られている。さらに右奥には二階へ上がるための階段があるが『関係者以外立ち入り禁止』と書かれていた。
「あ、こちらに座って下さい。すぐにご飯とお飲み物を用意しますので...あ、卵掛けご飯とかでいいですかね...?お料理あんまり得意じゃなくて...。」
「おぉ、TKG!全然いいよ!」
そう言って、受付の後ろにある扉にパタパタと入っていった。まさかこの世界にも「TKG」が存在するとは。しかし20分後...随分時間が掛かってるなぁと思っていたら、扉の開く音がした。
「お待たせしました、『卵かけごはん』です...」
「あぁ、ありが...ん?」
俺の目の前に運ばれてきたのは...
「お、オムライス・・・?」
「へ?おむ・・・?」
忘れてたけどここ異世界だった!!「とうもろこし」も「トウモコーン」って言われてたし、似て非なるものだこれ!!
「あ~、いや!何でもない!!思ったより豪華なものが出てきてびっくりしただけ。いただきま~す。」
「は、はい・・・。」
そういえば、ちゃんとしたご飯を食べるのはいつぶりだろうか。
ましてや、手作りの料理なんて上京前にお母さんが作ってくれたのが最後だ。
俺は料理下手でお金も無かったから、ずっともやし食って水飲んで。
考えながら、貪るように食べ進める。
思えば、こんなに人に優しくしてもらったのも随分久しぶりだったな・・・。
頭の中に、色んな情景と感情が浮かぶ。
終電が無くなっても上司にシバかれ、帰って仮眠を取ったらもう出勤。
おっさんだらけの満員電車で何とかおにぎりを詰め込み、また深夜まで仕事。
優しかった母はいつの間にか死に、大好きだった父の苦しそうな顔。
気付けば、涙が零れていた。
「あ、あれ!?美味しくなかったですか!?すみませんすみません!無理して食べなくて良いですから...!!」
「いや...美味しい。ウマいよ。・・・ウマい。こんなに美味しいご飯、久しぶりだよ。」
「そ・・・それなら良かったです...。ティッチュ、持ってきますね。」
ティッチュ。この世界でのティッシュだろうか。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で思わず吹き出した。
「ハハ、この世界じゃティッチュっていうのか!」
「・・・・はい。」
世界一やさしい卵かけごはんを食べつつ、この世界に希望を見出していた。
* * * *
ひとしきり色々落ち着いたところで、丁度オルカが帰って来た。
「戻ったぜ。ついでに、今日は運航できねえって看板出しといた。」
「オルカちゃん、ありがとう。」
すると、オルカの後ろから2人の少女が顔を覗かせた。
「お話は伺っています。ゆー...ユーゴさんですね。」
「へ~、思ったより若そぉ~。」
お堅い口調で話した少女は、髪型は肘までの長さの金髪をポニーテールで纏めており、毛先にはパーマが掛かっている。シュッとした切れ目は美しい金色のまつ毛をしており、朱色の瞳とよく似合っていた。そんなお姫様の様な見た目と相反し、ラッシュガードをきちっと着用し、運動用のズボンと下にはぴちぴちの水着スーツを着ているようだった。
ふわふわした声で話した少女は、透明感のある薄い水色の髪を緩い三つ編みで結んでなお、腰くらいまでの長さがある。童顔で、濃い青色の目が髪の色とよくマッチしている。服装はオーバーサイズのラッシュガードにバルーンパンツ、白いタイツの様な水着を着用している様だった。
「では、状況を説明する前に自己紹介しましょうか。改めまして、ギルドマスターの海互 コバンです。」
「サブマスターの鋭凜 オルカだ。改めてよろしくな!!」
「メンバーの游波 クララだよ~。よろしくねぇ~。」
「メンバーの秘石 サンゴです。よろしくお願いします。」
「水野優吾・・・いや、ユーゴです。よろしく。」
個性強いなぁ...と思いながら、改めて話を聞く。俺に出来ることがあるか分からないが、「プレイヤー」としてこの世界に来たとしたら、何かしら役に立てるはずだ。
まず、コバンが今の状況について簡単に話してくれた。
「まず、私達はサン大陸とムーン大陸の間を往復する船が安全に渡航できるように、海の管理を行っています。強い魔物が出現したら対処して、海が荒れていたら魔法で波を整える。そういったお仕事です。」
波をも操れる力を持ってるのか...すごいな、このギルド。
「でも、最近『水龍様』が暴れて船が運航できないことが多くて…。」
「水龍様...?強い魔物って事?」
「いえ...水龍様は元より、魔物の脅威からこの海を守っていた守護神様です。」
「な、なんで守護神が暴れてるの?」
「原因は分かりませんが、水中の魔力が高まった事によって乱れていると考えています。」
この世界の魔力の概念はよく分からないが、自然災害みたいなもので一組織が解決できる範囲は逸脱しているのだろう。
次に、サンゴとクララが経緯を教えてくれた。
「半年ほど前、各地で強い魔物の出現が相次ぐという事件が起こりました。その時、海や街を守るために水龍様が出現したといいますか...。」
「お陰で、この街は事なきを得たんだけどね~。そのあと水龍様が暴れだして~、最初は波が高くなる程度だったんだけど~、この前ついに船を襲いだしてさ~。」
「なるほど...。」
危険性が高まり、そろそろ本格的に解決しなければいけなくなった、というところだろう。実際、今日は運航できなかったわけだし。
「コバンが言ってた...『ギルド総本部』だっけ?そこに救援って出してもらえないの?」
「それが~、半年前の事件から本部もごたついててさ~。逆に本部から救援が届く始末なんだよねぇ~。」
袖をゆらゆらとさせているクララの隣でオルカは困った様に口を開く。
「その影響で他のギルドも混乱してるみたいでよぉ...いっつも協力してた『ドラゴンズ・デン』っつーギルドも動けなくなっちまったから、アタシたちだけで対処するしか無いんだよなぁ。」
「仮に他のギルドに協力要請出来たとしても、水中で動けないんじゃ戦力になりませんし。」
事情は案外深刻そうだ。・・・っていうかリアルすぎないか??
いや、現実なんだろうけどハーレムにしては事情が深刻すぎる。
これもしかして・・・
”ストーリー作り込まれてるタイプの美少女ゲーム”
だ!!
シーガーデンの事情も俺の事情もどうしたものかと考えていると、ギルドの入り口が勢いよく開き一人の男が転がり込んで来た。
「お、おい!大変だ!!海遊ビーチで水龍が暴れて・・・!!!」
「「「「「!?」」」」」
卵かけごはん =オムライス コバンの得意料理。
前回がテンプレ展開すぎてつまらないかな、と思ったので早めに二話を投稿しました。手作りの料理って久しぶりに食べると涙出ますよね。あとコバンかわよい。




