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よりにもよって、物語が作り込まれた美少女RPGに転生してしまった  作者: 根田わさび
第二章 復讐の果てに咲く白百合

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七日目 緊急アラーム

 朝。今日も早起きしてトレーニングの予定だ。昨日と同じく屋敷の周りをランニングする。

なんだかんだこの屋敷に来て一週間か。ここの生活にも慣れてきた。


そんな事を考えながら走っていると、買い出しに出ていたであろう使用人が帰って来るのが見えた。

このギルド...というか、この世界では珍しい大柄で屈強な男性だ。


「買い出し?お疲れ様。」

「ユーゴ様、オ疲レ様デェス。training(トレーニング)トハ、素晴ラシイデスネ!!」

「ありがとう。」


迫害されてきた種族を受け入れているだけあって、元々この辺りでは使わない言語を使っていたメンバーも存在する。

その為、カタコトな人も少なくない。


「ボクモ走ロウカナ~?」

「良いね。一緒に走ろうよ。」


 朝焼けの中、2人でランニングをする。

最近は...というか、この世界に来てから男性と会話する機会が少ないのもあって、男同士は安心してしまう。


「そういえば、名前はなんていうの?」

「ボクハ『メイプル』トイイマァス。」

「メイプル!可愛らしい名前だね。」

「ハイ。ボクモ気ニ入ッテマァス。...マア、maple(メイプル)ハニガテナンデスケドネ、ハハ!」

「そ、そうなんだ・・・。」


怖そうな人だと思っていたけど、明るくて前向きな人だなぁ...。

俺も見習おう。


    *    *    *    *


「それでは、モーニングレポート及び、明日についての連絡を行います。」


 毎朝のモーニングレポート。

いつも通りモーニングレポートを終えた後、それぞれの担当区画や、戦闘時のポジションについて書かれた紙が配布された。

これ、昨日の内に全員分作ったのか・・・すごいな。


「明日、ヴァンパイア・マンションとスパイエージェントの間で極めて重要な取引が行われます。その為、万が一の襲撃者に備えていつでも戦闘態勢を取れるような配置を準備しました。」


そういえば取引がある事自体、他の使用人達は初めて知ったのか。


「明日はクスネ様をお迎え後、割り当てられた各区間の清掃を行ってください。」

「クスネ様って誰~?」

「スパイエージェントのマスター様です。」


スパイエージェントのマスターはクスネって名前なのか。

前のサブマスターって話だけど、ミラは新人だから知らないんだっけ。


 配布された紙の詳細を読んでいると、隣で顔をしかめている人が...


「センラさぁん...電気制御室ってどこぉ...。」

「ミラは特例ですので、後で残ってください。特別指導があります。それから、ユーゴ様も一度残って下さい。」

「うん、分かったよ。」

「えぇ!?せっかく戦わなくていいと思ったのにぃ・・・。」


相も変わらず泣きべそをかくミラ。

取引前日という緊張が少し緩むようだった。


    *    *    *    *


 モーニングレポートの後、連れてこられたのは正面玄関。

正面階段の下の、小さな扉。そこを開けると、地下へと続く階段があった。

薄暗い上に急な階段。恐る恐る下っていくと、『特例時以外立ち入り禁止』と書かれた大きな扉。


「こちら、電気制御室です。」


扉の先には、狭くて薄暗い木製の部屋。壁に大きなレバーがいくつも設置されていて、雰囲気は古い建物の電気制御室と言った感じだ。

けれど、流石は異世界。黄色に光るボタンは電気のエネルギーが込められたであろうボタンだった。


「すご・・・何が何だか分からないや。」

「えぇ...わたし、明日ここに居るのぉ・・・?」

「はい。」


無慈悲な肯定だ・・・。


「緊急アラームは基本的には隠されています。今から場所をお伝えしますが、絶対に他言しないで下さい。」


異世界に来てから、墓に持ち込む秘密が増えていく・・・。

センラが奥の方にある板材を持ち上げると、いかにもな赤いボタンが現れた。


「このように、電気制御室の最奥から三番目の板材の下に設置しています。」


よく見ると、隣には白い小さなボタンもある。


「赤いボタンが緊急アラームです。白いボタンを押しながら赤いボタンを押すと、テスト放送をする事ができます。ミラ、試しに押してみてください。」

「えぇぇ!!緊張するぅ~・・・。」


ミラは恐る恐るしゃがんで白いボタンと赤いボタンを同時に押した。

すると・・・


《これは、テスト放送です。繰り返します。これは、テスト放送です。》

ウー!!ウー!!


女性っぽい機械音声が流れた後、警報音が鳴り響いた。


《緊急警報。緊急警報。これは、テスト放送です。電気制御室にて、緊急アラームが作動しました。これは、テスト放送です。繰り返します―》


「これ、今屋敷全体に聞こえてるの?」

「はい。」


なんだか避難訓練を思い出すなぁ。

アラームが鳴り終わると思わずふぅ、とため息が出た。

テストだと分かっていても、アラームが鳴れば不安になってしまう。


「はぁ~、緊張したぁ~・・・。」

「ミラ。明日万が一襲撃が起こり、万が一止められないと判断した場合、緊急アラーム作動をお願いします。それが無ければ、キョウ様に危険をお知らせするのが遅くなってしまいます。」

「あい分かった!!!」

「それから。緊急アラーム以外は絶対に触らないで下さい。良いですね?」

「は、ハイワカリマシタ・・・。」


どちらかと言えば、後者の方が心配だが・・・。

明日、緊急アラームが鳴るような事態にならなければ良いなぁと思いつつ、気を引き締めるのだった。


「緊急アラームの説明は以上です。昼食まではまだ時間がありますので、もう一つ指導を行います。」

「「指導??」」


    *    *    *    *


 そうして連れてこられたのは、使用人棟の廊下。


「これより、廊下の清掃指導を行います。」


そういえば明日は面談室の前の廊下を清掃する予定だが、以前『廊下や階段は別途指導がある』と言われていたな。


「清掃やだぁ~・・・。」

「ミラも一緒なんだね。」

「はい。ミラには廊下の清掃を任せていなかったので、よい機会かと思いまして。」

「いや~、前に絵画溶かしちゃって!」


一体何があったというのか・・・。


「それで...指導って言っても、道具の使い方は教えてもらったし、廊下くらいなら一人でも掃除出来るよ。」

「そーだよ!道具の使い方は教えてもらったし、今度は溶かさないから!!」

「そこまで言うのであれば、お手並み拝見いたします。この廊下を()()()清掃してください。」


お手並み拝見とは、随分大げさだが...。

ひとまず、ミラと協力してカーペットの埃を掃除機...ではなく吸引魔具で吸っていく。完璧に、と言われたので隅から隅まで丁寧にかけていった。


「止まってください。」


一通りかけ終えたところで止められる。


「ん?なにか・・・

「もう違います。」

「!?」


食い気味に否定された!?掃除機のかけ方にもルールがあったのか・・・!?


「まずしなければならないのは天井と壁の清掃です。上から下へ掃除することで効率よく清掃できます。」

「あ、確かに・・・。」

「センラさん頭いいっ!!」

「キョウ様からご指導いただいた事です。」


天井や壁などの清掃用の用具を使い、センラの指導に沿って掃除していく。・・・が、思ったより肩や腕への負担が大きい・・・!!


「お、終わったよ・・・。この次に、吸引魔具だよね。」

「違います。」

「えっ!?」

「次は窓枠と絵画の額縁の拭き取りです。では、その次は何かお分かりですね?」

「こ、今度こそ吸引魔具・・・

「違います。窓の清掃です。」


言い方が紛らわしい!!


「では、その次はなんだと思いますか?」

「ハイ!!吸引魔具!!!!」


今度こそ、と思ったがミラに取られてしまった...。


「その通りです。ですが、全体ではなく角や隅からやってください。」

「そ、そう言おうとしたんですよ!!」

「ミラ、嘘はいけません。」

「ハイ。」


言われた通りの順番で清掃していくが・・・


「向きが違います。」

「「ハイ!!」」

「もっと角を丁寧にしてください。」

「「ハイ!!!」」

「ミラは絵画に触らないでください。」

「ハイ。」

「水と薬品の順番が逆です。」

「「ハイ!!!!」」

「ここはもっと・・・


散々しごかれる事3時間。


「「はあ、はあ、・・・。」」


な、何とか終えた・・・!!

普段使わない筋肉を使ったせいか、身体中が痛い...。


「『廊下の』清掃の指導は終了です。お疲れ様でした。」

「ちょ、ちょっと待って・・・廊下のって言った・・・?」

「はい。次回は階段の清掃の指導になります。」


これは・・・明日からも大変そうだ・・・。

痛む肩をもみほぐしていると...


「おや、随分と疲れているね。」

「キョウ様、お疲れ様です。」


後ろから楽しそうなキョウの声が聞こえた。


「キョウ、お疲れ...。」

「ぁ!キョウ様~!聞いてくださいよ~センラさんが厳しい~!!」

「ミラ。キョウ様にお声を掛ける前にご挨拶をして下さい。」

「あ!おはようございます!あれ?こんにちはだっけ??」


センラは呆れた様子でその光景を見ているが、相変わらずキョウは楽しそうだ。


「まあまあ、センラなりの愛のムチさ。廊下はお客様も見るのだから、清掃が行き届いていないと恥をかくだろう?」


なるほど。廊下や階段の清掃に別途指導があるのはそういう理由か。


「うぅ~。確かにぃ~・・・。」


ぺしょぺしょしているミラ。

その時ふと、この前の事が頭をよぎった。


[私もお休みもらったから、ちょっとお出かけぇ~。]

[ゆーご様にもナイショ!プライベート、ですから・・・。それじゃ!!]


あれ以降、特に変わった様子は無い。

元気がないと感じたのは、やはり気のせいだったのだろうか。


「では、私はもう行くね。皆、励んでくれて感謝するよ。」

「お心遣い、感謝いたします。」

「あ、またね。」


考えても仕方がない。今は、明日の取引に集中しなければ。


    *    *    *    *


―――――深夜。


⁂⁂⁂!!!


「ん・・・?」


何か大きな音がした気がして、おぼろげな意識の中目を覚ます。


《緊急警報。緊急警報。執務室にて、緊急アラームが作動しました。


「!?」



―取引当日まであと0日



緊急アラーム 緊急事態が発生したことを館中に知らせるもの。

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