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よりにもよって、物語が作り込まれた美少女RPGに転生してしまった  作者: 根田わさび
第二章 復讐の果てに咲く白百合

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六日目 盤上の使用人たち

 次の日の朝。俺は早起きして屋敷の外へ来ていた。


「よっし。」


シーガーデンの時やっていたトレーニング。

ヴァンパイア・マンションに来てからは、早起きする余裕が無くてサボってしまっていた。それを再開するのだ。

屋敷は大きいし、ぐるっと一周するだけでもかなり長い距離になりそうだ。


シーガーデンの時とは違う景色。朝霧の残る針葉樹林と、屋敷周りに植えられた綺麗な薔薇。走りながら薔薇を観察していると、遠くに人影が見えた。あれは・・・


「ユーゴ様。おはようございます。」

「センラ、おはよう。何してるの?」

「薔薇の剪定です。ユーゴ様はトレーニングですか?」

「うん。最近出来てなかったからね。」

「素晴らしい心がけでございます。」

「ありがとう。じゃあ、また後で!」


俺も随分早起きしたけれど、髪がいつも通り綺麗に結われていたという事は、センラの方がずっと早く起きていそうだ。

感心しつつ、トレーニングに戻るのだった。


    *    *    *    *


 モーニングレポートの後。昨日の約束の通り、使用人会議室で陣形の会議をする事に。


「こちらは駒です。陣形を組む際にご活用ください。」


センラが持っている手のひらサイズの木箱には、碁石のような形のカラフルな駒が入っていた。


「さすが。助かるよ。」

「恐縮です。」


 昨日まとめておいた各得意分野の人数の表を見ながら陣形を考えていく。

そういえば、気になった事があるんだった。


「全体的に魔法が得意な人が多いね。その代わり、守りが得意な人が少ないかな。」

「そうですね。魔法に関しては、定期的にキョウ様によるご指導がございますので、その影響かと思われます。」


なるほど。ステータスを実際に確認した時も、他項目は平均E~Cなのに対して、魔法は平均B~Aだった。そういう事情なら納得だ。


「防御を得意としていらっしゃる方は、長く勤めているベテランの方が多いです。シールド魔法でのサポートを行えば、十分な戦力です。」


言われてみれば、防御が得意なメンバーのほとんどは5年以上在籍している。


「これにも何か原因があるの?」

「以前のサブマスター様は、守りを得意としていたのです。」

「サブマスターって事は、今のスパイエージェントのマスターさんか。」

「はい、その通りです。」


明後日来る人の話を今聞くなんてタイムリーだ。

まあなんにせよ、何とかなりそうで良かった。


「取引が行われるのは面談室です。談話室は防音素材を使用しており、内部の音を盗み聞いたり出来ない一方、外部の音も遮断されますので、万が一キョウ様とお客様に危険が及びそうな場合、緊急アラームを作動させます。」


面談室は二階の最奥。

余程の事がない限り、アラームを作動させる事態にはならないと思うが、念のため作動させる人を配置しておきたい。


「アラームのボタンの位置は?」

「電気制御室、キョウ様の執務室、厨房、面談室の内部、外部に一つずつございます。」


厨房は一階、執務室、面談室は二階、電気制御室は地下。

一階は激戦区になるし、二階も主要部があり危険だ。となると、電気制御室がベストか。


「なら、ミラに電気制御室にいてもらって、万が一の時押してもらうのはどうかな。ミラは戦いが苦手みたいだしさ。」

「非常に良いお考えです。」


次に誰を...あ、そういえば。


「センラは当日はキョウの所にいるの?」

「いえ。当日はユーゴ様の護衛を行わせていただきます。」

「俺!?」

「はい。キョウ様のお客様ですので。」


そうか。臨時で使用人とは言え、キョウのお客さんになるのか。


「どこにいれば・・・?」

「キョウ様からは特にご指示を頂いておりませんので、そこも踏まえて考慮致しましょう。」


彼女は実力者だし、本来なら激戦区になりそうな一階に配置したいところだが...役立たずの俺がそんな場所に居ては皆の足を引っ張ってしまうだろう。

激戦区ではなく、尚且つ重要な場所・・・。


「ここかな。」


俺が駒を置いたのは、正面玄関から主人棟への入り口だ。


「ここなら、一階の様子を上から確認しつつ主人棟・・・つまり、面談室方面への侵入を防げると思うんだけど...どうかな?」


センラは凛とした横顔で地図を見つめる。それから小さく頷いた。


「はい。問題無いと思います。」

「センラのお墨付きなら安心だよ。」


全て肯定せず、真剣に考えて意見を述べてくれるのが、メイドとして良く出来た部分だと思う。


 その後センラと話し合いながら使用人達の配置を決めていき、15時になった頃、陣形が完成した。


「これで最後かな。ふぅー、なんとか決まって良かったよ。」

「お疲れ様でした。」

「うん。ありがとう、センラ。助かったよ。」

「恐縮でございます。」


キョウに提出して意見を貰おう。


 使用人会議室を後にし、キョウの執務室へ向かった。

忙しいだろうと思い、センラには仕事に戻ってもらった。


「思ったより早く終わったようで何よりだ。」

「お、オネガイシマス。」


上司に書類を提出しているみたいで、心臓がどきどきした。


「ふむ...一つ良いかな?」

「もちろん。」


陣形についてかと思ったが、キョウから言われたのは意外なところだった。


「電気制御室はミラ1人かい?」

「何かマズイ事でもあった?」

「あぁいや...彼女はここへ来て間もないからね。一人で大丈夫かと心配しているだけだよ。」

「それに関しては、センラが指導しておくって。」

「ふむ...。」


キョウは納得せずに地図を眺めて考え込んでしまった。

確かに、ミラがドジっ子な事もあり不安な気持ちも分かる。しかし、キョウはそれ以上の難しい事を考えている様に見えた。

言葉を待っていると、不意にニコリと笑った。


「うむ。まあ良いだろう。そうそう緊急アラームを作動させる事になんてならないだろうからね。」

「ものすごく盛大なフラグに聞こえてならないんだけど。」

「ふふふ、想定外の事態でも楽しまなければ損だよ。」


どんだけ肝が据わってるんだ。キョウの事だし、実際に緊急アラームが動作しても『おやおや困ったね。』なんて笑っていそうだ。

まあ、そもそも襲撃自体起こるか分からないし、全て徒労の可能性もある。

想定内の想定に労力をかけすぎてもよろしくない。


「ご苦労だった。取引は明後日。楽しみにしていようじゃないか。」


―取引当日まであと1日



電気制御室 館の電気を管理している部屋。

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