表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よりにもよって、物語が作り込まれた美少女RPGに転生してしまった  作者: 根田わさび
第二章 復讐の果てに咲く白百合

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/27

五日目 似て非なるもの達、再び

来て頂きありがとうございます。

 モーニングレポートの後、俺はキョウに呼び出され、キョウの執務室まで来ていた。


「やあ。呼び立ててすまないね。」

「話って?」

「キミへのお願いの件...もう一つのお願いを聞いてもらいたくてね。」


そういえば初日に、『まだいくつか頼みたいことがある』と言っていたな。


「ここからの話は部外秘で頼むよ。」


キョウは手に持っていた紅茶を置き、真剣な眼差しでこちらを見据えた。


「結論から言えば、キミに頼みたいのは人員の配置だ。先のシーガーデンの件で確信したが、キミにはその才がある。」


才があるというか、たまたまそれを活かせる環境に生まれてきただけに過ぎないが・・・。


「倒したい魔物でもいるの?」

「いや。相手は魔物ではない。近々、大切な取引があってね。その取引を邪魔しようと図っている者達がいる可能性がある。」

「キョウにしては珍しく、ふんわりした話だね。」

「あぁ。というのもその取引自体、今の情勢では不都合に思う者達が多いだろうからね。」


『今の情勢』...つまり、ギルド本部『サマリー』が失脚しつつある現状にも関わる様な取引か。なんだか複雑な事情がありそうだ。


「そして、一つのギルド・・・或いは、複数のギルドで結託してその取引を止めようとするかもしれない。」


そこまで聞くと、嫌でも気になってしまうのは、そもそも取引が悪い取引なのでは無いかと言うところだ。


「取引の内容って・・・?」

「スパイエージェントというギルドとこういった取引をしようと思っていてね。」


そう言って、キョウは紙を見せて来た。

何か難しい事が色々書いてあったが、要約するとこうだ。


――スパイエージェント独断の活動・依頼を完全に停止し、ヴァンパイア・マンションの指示のもと動いてもらう。


これは、実質スパイエージェントをヴァンパイア・マンションが吸収する事を意味していた。しかし・・・


――ただし、スパイエージェントの所有する資産が一定量を超えた場合、契約は破棄する。


スパイエージェントの資産がある程度潤えば、自由にしていいという事だ。


「スパイエージェントってギルドは財政難なの...?」

「あぁ。他のギルドと違い、サマリーを経由して依頼を得ていた様でね。手取りが少ない上に、サマリーがあの様な状態では機能しないさ。実力のある者達だったから、一時は『エリート特殊部隊』の代わりとして候補が挙がっていたくらいなのだけどね...。」


エリート特殊部隊...サマリー直属のエリート集団だったか。

ある意味では『世界で一番強いギルド』として名前が挙がっていたという事になる。


『他のギルドと違い』と言っているけど...そういえば、ギルドが具体的にどういう稼ぎ方をしているのか、聞いたことが無かったな。


「普通は違うの?」

「そうだとも。通常は一般人から様々な依頼を受けることで収入を確保する。依頼は魔物の討伐から猫探し、自然の管理まで様々だとも。」


なるほど。いわばシーガーデンも『港を管理する』という一般人からの依頼によって収入を得ていた、という事か。


「しかし、スパイエージェントは一般人から依頼が来ない...というか、来ることが難しい状況だったんだ。だから、サマリーと連携して仕事を斡旋してもらっていた。」

「依頼が来ることが難しい...?」

「こう言えば伝わるかな?彼女らもまた、迫害されてきた種族なのだよ。さらに言えば、マスターはヴァンパイア・マンションの元サブマスターだ。」

「!!」


そうか。

実力はあれど社会的信用が無かったから、依頼が来ず財政難。エリート特殊部隊にも”候補に挙がった”止まりだったのか。


そして、なぜキョウがそこまで気にかけていたか明白になった。

アッサリしている様に見えて、キョウは愛情深い性格だ。自分のギルドの、ましてや元サブマスターの独立。キョウが気にしない訳がない。

それに、キョウの口ぶりから、ヴァンパイア・マンションは一般人から依頼を受けているのだろう。そこまでに至るまでに、一体どれだけの苦労があったのか想像もつかない。


「人情深いんだね。」

「おっと。私をからかえるくらいには余裕なのだね。」


余裕と言うか・・・キョウの事が分かってきた気がして嬉しいのだ。


 シーガーデンの頃は、他のギルドと協力という話しか聞かなかったが、ギルド同士が必ずしも仲良しだとは限らないのか。

改めて、一番最初に拾われたのがシーガーデンで良かった・・・。


「話を戻そうか。要は、スパイエージェントとの取引を邪魔してくる者達が現れるだろうから、その対処に協力して欲しいという事さ。ただ...これは取引ではなく、私個人からキミへのお願いだ。受けるかどうかは任せるがね・・・?」


今の話を聞いて、じゃあやらないです、なんて言えないし言わない。


「もちろん、引き受けるよ。」

「そう言ってくれると思っていたよ。他のメンバーに関してだが、取引がある事自体知らない。たとえメンバーであっても、くれぐれも他言しないでおくれよ。」

「...そうだね。分かった。」


メンバーにさえ内密にする程秘密を徹底しているのに、襲撃される可能性が高いと見ているのは何故なのだろうか。

まあ、備えなどあるに越したことは無いし良いか。


 さて、陣形配置と言ってもシーガーデンの時はメンバーの事をよく知っていて、しかも4、5人だからなんとかなった。

しかし、ヴァンパイア・マンションのメンバー数は20人以上いる。流石にそんな大人数に的確に指示を出すのは難しい。ならば、メンバーをよく知る人物に協力を煽った方がいいだろう。

メンバーをよく知る人物・・・


「ねえ、センラはどこまで事情を知ってるの?」

「彼女なら、取引の内容まで全て知っている。むしろ、そこまで知っているのは彼女だけさ。」


    *    *    *    *


廊下の清掃をしているセンラに声を掛ける。


「センラ、ちょっと良いかな。・・・


「指揮・・・でございますか。」

「うん。センラなら、メンバーの事にも詳しいかと思って。」


やはり、協力を煽るならセンラだ。

事情を知っているのなら尚更協力してもらいたい。


「かしこまりました。しかし、大変申し訳ないのですが、本日は別用で手が離せず...。明日のモーニングレポート後はご都合いかがでしょうか。」

「うん、大丈夫だよ。」

「ありがとうございます。」


モーニングレポートの後なら、そのまま使用人会議室の広いテーブルで相談できるから丁度いいな。

今日のうちに出来る限り準備をしておこう。


    *    *    *    *


 今日も清掃の業務を終わらせ昼。

食堂に行くと、ミラが美味しそうにご飯を頬張っている後ろ姿が見えた。


「ミラ、隣いい?」

「ゆーご様!どうぞ~!」


ミラの隣に座り、自分も食事を摂る。

今日のご飯はバタートーストと鶏肉のソテー、サラダ。相変わらずバランスの取れた良い食事だ。


「~♪」


ミラは鼻歌を歌いながらサラダをかき混ぜている。

昨日の夜の事があり心配していたが、モーニングレポートでも特に変わりない様で安心した。


「ご機嫌だね。何かあったの?」

「今日はこの後、キョウ様のアフタヌーンティー用のスイーツを作る予定なんです~!」

「お菓子作り好きなの?」

「ハイ!!」


なんというか意外だ。

ドジっ子な印象が強くて、お菓子作りなんて繊細な作業が好きだとは思わなかった。

しかも、キョウに直接出せるという事はかなりの腕前なのだろう。


「頑張ってね。」

「ハイ!!ゆーご様も、訓練サボらずに頑張って下さいね~!」

「アハハ。」


どの口が、とは思ったが気を悪くしても困るので言わないでおこう。


 昼食を摂った後、陣形配置の準備をすべく、俺は資料保管庫に来ていた。

資料保管庫で屋敷の地図を探し、複製魔具でコピーを取る。

本当に使う機会が来ようとは。頭の片隅に入れておいて良かった。


 次に隣の勉学室まで行き、キョウから預かった適正調査報告書を開く。

防御が得意な人、物理攻撃が得意な人...と各得意分野の人数を数えてノートにまとめていった。

こうしてみると、防御が得意な人は少なく、魔法が得意な人が多い。

何か理由があるのだろうか。


まだ時間があるし、何となく頭で組み立ててみるか。


チク、タク

~~~~~~~~


時計の針と、優雅なクラシックが流れる部屋は、自然と集中できる。

気付いた時には15時前だった。


「ふぅ・・・。」


粗方まとめたし、あとは明日センラに相談すれば良いだろう。

この後はどうするかと考えていると、俺はとある事を思い出した。


    *    *    *    *


「ミラ。スイーツの用意は出来ましたか?」

「う~・・・あともうちょっとぉ・・・。」


 厨房へ行くと、まっさらなケーキにクリームを絞るミラと、それを見守るセンラの姿があった。

思い出した事というのはミラのお菓子作り。少し見てみたかったのだ。


「頑張ってるね。」

「あ、ゆーご様も来たんですね!!」


調理台にはケーキの他に綺麗に焼き上がったクッキーや綺麗な丸形のマカロンなどが置いてあった。


「これ、全部ミラが作ったの...!?」

「はい!お菓子作り得意なんです~!!...できた!」


出来上がったケーキも、小さいのに精密にクリームが絞られ、綺麗に飾り付けられている。


「将来はケーキ屋さんを開くのが夢なんです!」

「うん、絶対なれるよ。」

「えっへへ~。」

「流石の腕前です。その器用さを清掃でも活かしてくれれば良いのですが。」

「掃除きらぁい。」


好きな事は上手く出来る人なんだろうな。にしては極端だが。


 センラは出来上がったスイーツをお皿に盛り付け、淹れたて紅茶と共に食事用カートに乗せる。

運ぶのは流石にセンラがやる様だ。


「センラさん、余ったのは食べても良い・・・?」

「どうぞ。」

「やった。ゆーご様も一緒に食べましょう~!」

「いいの?ありがとう。」

「それでは、キョウ様にお届けに参ります。」


 せっかくならコーヒーを淹れるか。前、厨房の紹介をしてもらった時にコーヒー豆の入った瓶があるのは確認済みだ。

器具の準備をしていると、ヒョコっと横からミラが覗き込んで来た。


「飲めるんですか?大人~。」

「まあね。」

「先食べちゃお~っと!」


そういえば、この世界でコーヒーを飲むのは初めてか。前世では深夜残業の眠気覚ましにお世話になったものだ。まさか、異世界でスイーツと共に飲むことになるなんて思ってもみなかった。

香ばしい匂いが厨房に立ち込め、充実感で胸がいっぱいになる。なんて良い日だ・・・!!


「いただきます。」

「いっただっきま~す!」


ピンクのマカロンを一つ手に取り、一口かじる。

これは・・・!


「美味しい・・・!!」


サクっとした食感と、甘ったるい味が舌に広がる。しかし、細かく砕かれたドライフルーツが混ぜ込まれたクリームは甘酸っぱくて甘い外側と良く合っている。甘ったるいで終わらないこの味・・・イケる!!


「気に入ってくれて良かったぁ~!」


夢中で一口、二口と食べ進め、一つ食べ終えたところでコーヒーを流し込・・・


「!?!?!?」

「ゆーご様?」

「ゴッホゴホッ、ケホ、ケホッ・・・ハァ~、ハァ~。」

「ゆーご様!?」


こ、これは・・・!?


「か・・・からい・・・・・!?」

「えぇ!?コーヒーは苦いものですよね!?」


ミラが驚いているという事は、この世界のコーヒーが辛いという訳ではなさそうだ。じゃあなぜ・・・。


「って、ゆーご様これスパイスじゃないですか!!」


ミラが持っていたのは、俺が淹れたコーヒー豆の瓶だった。

確かに真ん中に切れ込みが入った茶色い楕円形の豆だ。


「え、それ、コーヒー豆じゃないの・・・?」

「違いますよ~!これはコヒ豆で、コーヒーは茶葉ですよ~!?」


豆ですら無い!?!?

似て非なるもの達、再び...!!ていうか多すぎる!!


「ぷっ、ゆーご様って面白い人ですね~!」

「わ、笑ってないで水、水・・・。」


やはり、異世界で油断してはいけない・・・。



―取引当日まであと2日



コヒ豆 現実世界のコーヒー豆によく似たスパイス。辛味と苦味が強いのが特徴。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ