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【第一章完結】よりにもよって、物語が作り込まれた美少女ゲーに転生してしまった  作者: 根田わさび
第二章 復讐の果てに咲く白百合

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一日目 ヴァンパイア・マンション

サプライズ先行更新です。来て頂きありがとうございます。

第一章未読の方は読了後の閲覧を推奨します

 キョウと話しながら車に揺られる事十数分。

海沿いの道からだんだんと大陸内部に入っていき、周りの様子が変わってきた。


針葉樹の暗い森を進み、霧が濃くなってきた。

まるで魔女でも住んでいそうな雰囲気...って、キョウは魔法を使えるからあながち間違いでは無いのか。


 しばらく進むと大きな黒鉄格子の門を通って、ギルドの敷地内に入った様だった。


「着いたよ。」


車を出て周りを見渡す。

不気味な針葉樹林に囲まれた…


「や、屋敷・・・!?」


黒いレンガで出来た屋敷がたっていた。

異世界みたいだ...!って、ここ異世界か。


「ようこそ、vampire(ヴァンパイア) mansion(マンション)へ。」


 キョウに連れられて扉の前まで行くと、メイドが1人扉前で待機していた。

そういえば、本物のメイドは初めて見た。直接見るとますます所作が美しい。


「ユーゴ様、お待ち申し上げておりました。ようこそお越しくださいました。」


丁寧にお辞儀をされ、思わずこちらも丁寧に頭を下げる。日本人の性といった所だ。


「センラ、ご苦労だね。」

「キョウ様、おかえりなさいませ。」


センラと呼ばれたメイドは、ぱっつんの前髪と丸く可愛らしい黄色い目とは対照的に無表情。綺麗な明るめの青緑の髪をシニヨンでまとめ、上品な赤い薔薇の髪飾りを付けていた。


 センラはこげ茶の大きな扉を開ける。


「「「いらっしゃいませ、ユーゴ様。」」」

「!?」


現れたのは真っ赤なカーペットと、ずらっと並んだ使用人達だった。

ざっと20人近くいそうだ。


「ここでは迫害されてきた種族も受け入れている。気付いたらそれなりの人数になっていたよ。」


受けたことのない特別扱いにどう対応していいか分からず呆然としていると、キョウが小声で声をかけてくれた。


「堂々としていれば良いさ。()()()()お客様なのだからね。」


ど、堂々と・・・。こんな状況で堂々としていられる一般日本人がいるだろうか。


「あ、ありがとう...。」


とりあえず、何か話さなければと思って使用人達へ向けてお礼を言う。

そんな俺をキョウは面白そうに見ていた。


「センラ、ユーゴを客間まで案内してやってくれ。それから、お茶の用意も頼んだよ。」

「かしこまりました。お茶の用意につきましては、既に手配済みです。」

「流石だ。」

「それではユーゴ様、こちらへどうぞ。」


 センラに連れられ、赤いカーペットが敷かれた廊下を歩く。

高級なものなのか、今まで感じたことのない歩き心地がする。黒い壁紙には薔薇の模様が描かれ、高そうな絵が飾ってあった。THE・洋館だ。


キョロキョロしながら歩いていると、センラは一つのドアを開けた。


「どうぞお入りください。」


招かれた客間はエレガントな家具や置物が置かれた部屋だった。


「キョウ様がお戻りになるまで少々お待ちください。・・・!」


センラは何かに気付いた様に目を見を見開き、深く頭を下げた。


「ユーゴ様、大変申し訳ございません。お茶の用意が整っておりませんでした。すぐにご用意いたします。」

「ありがとう...。」


お茶の用意を忘れていただけで、ここまで丁寧に謝罪されるのか...。なんだかソワソワしてしまう。

センラが部屋を出ようとした瞬間。


「大変申し訳ございませんでしたー!!!!!」


メイドが飛び込んで来た!?


「ミラ。廊下を走ってはいけません。お客様の前ですよ。」

「センラさんごめんなさい~!」


ミラと呼ばれた彼女は、薄紫のふわふわした髪をハーフツインでお団子にしている。きゅるきゅるとした赤い瞳は、彼女の人懐っこい性格をよく表している。


「え~っと、ユーロ様!お茶でございます!」

「ユーゴ様です。」

「あ、ゆーふぉ...ゆーご様!お茶でございます!」


お金の単位になったり宇宙船になったりしたが、正しく呼んでもらえて何よりだ。

少し危うい手つきでお茶を前に運・・・


「あっ!」


何もないところで躓いた!?

マズイ、このままでは淹れたてアツアツの紅茶が掛かる────


それを見たセンラは素早い動きで紅茶と俺の間にトレンチを入れ込み、華麗にキャッチ。紅茶はソーサー(カップの下の小さいお皿)に美しく乗り、まるで何事も無かったかのようだ。


「おぉ・・・。」


見事な動きに思わず小さく拍手してしまう。


「ゆーご様、大変申し訳ございません~!!!!」

「申し訳ございません、ユーゴ様。新しくお紅茶を用意いたします。」

「いや、零れていないんだし...もったいないからそれを貰うよ。」

「・・・お優しい心遣い、恐縮至極でございます。それでは、このまま失礼いたします。」


そう言って、実に洗練された動きで紅茶を置いてくれた。

なんの紅茶か分からないが、いい香りのする紅茶を嗜んでいると、キョウが入って来た。


「やあ、待たせてすまないね。」


キョウが俺の向かいに座ると同時に、センラが紅茶をスッと差し出した。


「センラ、いつもありがとう。今日の紅茶もいい香りだ。」

「恐縮でございます。しかし、そちらのお紅茶はミラが淹れたものでございます。」

「おや、そうだったのか。上達したね。」

「い、いえいえ...!!あ、そうじゃなくて...き、恐縮でゴザイマス!!」


ミラの方はメイドの所作に慣れていない感じだが、キョウはそれが面白いらしくニコニコと見ていた。


「さて、本題に入ろうか。」


 姿勢を正して耳を傾ける。


「本題というのは他でもない、キミとの取引についてだ。」

「うん。具体的に何をすれば良いの?」

「キミにはメンバーの戦闘に関する適正を調べてほしいんだ。このギルドでは、メンバーであると同時に屋敷の使用人・・・つまりは、そこにいるセンラやミラもウチのメンバーだよ。」

「なるほど...。」


例をあまり知らないが、使用人とメンバーを兼用しているとは珍しい形態な気がする。


「適正を調べると同時に、その結果をまとめて報告してくれないかな?それを元に訓練メニューを組みたいからね。」

「あ~・・・。」


適正結果の報告...ウィンドウの事を話せない以上、どの範囲が報告出来るのか微妙なところだ。しかし、シーガーデンの時は『〇〇が得意』とは伝えられたし、問題は無いだろう。


「うん、多分大丈夫。」

「キミが何を懸念しているかは分かりかねるが、教えられる範囲で構わないよ。」

「了解。ありがとう。」

「それから、まだいくつか頼みたい事はあるが...それは時が近づいたらで良いだろう。」


キョウの口ぶりからして数日間、或いは数週間はここに留まる事になるだろう。

そうなると気になるのは...


「ち、ちなみにお給料とかは...。」


卑しいというのは分かっている!!

でも、それが無ければ死んでしまうのも事実!!!!


「あぁ、その説明がまだだったね。頼み事を完遂するまでの間、キミを使用人として雇おうと思うのだけど...どうかな?もちろん、仕事量や特別手当にも気を配るとも。」

「ありがたいお話でゴザイマス...。」


未だ生活必需品を揃えるので精一杯で、貯蓄など無いので助かる・・・。


「使用人としての指導はセンラから受けてくれ。彼女は一流のメイドだからね。」

「うん、分かった。」


頷いたところで、ミラが元気よく手を挙げた。


「キョウ様、わたしは!?わたしも一流だよー!!」

「ふふふ、ミラは今日も可愛らしいね。」

「あはは!褒められちゃったー!!」

「ミラ、お話に割り込んではいけません。キョウ様、ユーゴ様、大変申し訳ございません。」

「俺は全然大丈夫だよ。」


その言葉を聞き、センラはミラの頭を押さえて強制的にお辞儀させていた。


「ふふふ、質問は以上かな?また何か気になることがあれば聞くといい。ミラ、ユーゴを部屋まで案内してやってくれ。」

「かしこまりました~!ゆーご様、こちらへどうぞ!」


 何とか道を覚えながら着いて行く。

ずらりと扉が並んだホテルの様な造りは、同じ景色が多くて気を抜くと迷いそうだ。

ミラは一つの扉に手をかけた。


「ここがゆーご様の・・・ゆーご様の・・・あれ?」


扉をガチャガチャとしているが、一向に開かない。

ドアノブの上に鍵穴があるが...。


「鍵が閉まってるんじゃない?」

「あ!そうだった!!」


そう言って、エプロンの内側をまさぐって鍵を取り出した。


「ここがゆーご様のお部屋になりますっ!!」


ど、ドジっ子だなぁ・・・。

しかし鍵付きか。シーガーデンより人が多いが、これなら安心だ。懸念点があるとするなら可愛い女の子が訪ねてきたら迷わず開けてしまう事くらいだろうか。


部屋はダークウッドを基調とした家具が置かれており、客間より落ち着いた雰囲気だ。


「奥にはトイレとシャワーもございます!!」

「おぉ、水回りが部屋に...!ホテルみたいな造りだね。」

「はい!でも自分で掃除しなきゃいけないから大変なんですよ〜!」

「あはは、確かに大変そう・・・。」

「それから、こちらルームキーです!家具とかもだけど、無くしたり壊したりしたらめっちゃ高いお金請求されるから気をつけてくださいね〜!わたし、それで1回破産しかけたから!!」

「わ、ワカリマシタ...。」


経験者の言葉は重い・・・。

手渡された鍵を恐る恐る受け取る。鍵にも綺麗な装飾が施されているし、無くしたら支払額は馬鹿にならないだろう。気を付けなければ。


「今日の夜ご飯は自由で良いって!必要なものがあれば内線で連絡してーってセンラさんが!あと、明日は朝7時くらいに呼びに来るから、それまでに身支度しといてね!ふー!説明終わり!緊張したぁ〜!」

「ミラ、ありがとう。」

「どーいたしまして!」


もう敬語じゃなくなってるが良いのだろうか。

まあ俺自身タメ口だし、見つかったらセンラから怒られる以外は問題無いだろう。


「それじゃあ、後はごゆっくり〜!」


 パタン、と扉が閉まり一人になる。

思わずふぅーっとため息が出た。身体が重くて、ふかふかなベットに倒れ込んだ。


知らない場所、知らない人、知らない環境・・・。

明日からは、昨日とは全く違う生活が始まる。水龍を討伐してから、移動の準備やら何やらで結局落ち着ける時間はあまり無かった。


もう少し、こうしていても良いだろう。


そんな事を考えている内に、気付けば眠りについていた。




vampire (ヴァンパイア) mansion(マンション) キョウが管理しているギルド。メンバーは使用人も兼任している。

現在書き溜めの為の休載中ですが、気まぐれでサプライズ更新します。

良ければ、ブクマ等でお待ちいただけると嬉しいです。

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