最終話 旅立ちはリムジンと共に
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第一章最終話になります。
「「「「「乾杯!」」」」」
無事に水龍討伐を果たした俺達は、お通夜も兼ねて豪華な食事を囲んでいた。
キョウは忙しいらしく帰ってしまったが...。
「みんな、本当にお疲れ様。」
「ユーゴこそ!ありがとうな!!」
ニカッと笑うオルカ。
「いやぁ〜、一時はどうなる事かと思ったけど〜何とかなって良かったよぉ〜。」
「マスターのお陰ですね。」
「い、いやいや、みんなの支援あってこそだから...!私なんてぜんぜ...あ、いや...あり、がとう...。」
恥ずかしそうに頬を赤らめたコバン。
コバンが変わろうとしているのが伝わって微笑ましい。
「ほへふはいほ!」
「オルカさん。口に入れたまま喋らないで下さい。」
「ふひはへふ。」
「あはは。」
食事の度に見た会話。心なしか吹っ切れて心の底から楽しんでいる気がする。
いや、それは俺自身かもしれない。
水龍の正体を知ってから、どこかソワソワしていた。彼女たちの発言の1つ1つ、それが意味する心映えがどんなものであったか。
理解しなければ。考えて発言しなければ。
そう言った自分に課したある種の重圧から解き放たれた気分だった。
みんなが楽しそうにご飯を食べているのを眺めていると、オルカが思い出した様に口を開いた。
「そーいや気になったんだけどよぉ、ユーゴはどうすんだ?」
「そういえば〜、キョウさんと取引したんだよねぇ〜?」
「あ〜...うん。」
そう。俺がこんな感傷に浸る様な気持ちになっているのは、キョウとの取引の事があるからだ。
「さっき、キョウからメッセージが来て...『約束通り、私のギルドには来てくれるんだろう?』って...。」
「じゃあ、行っちまうのか!?」
「そうだね...しばらくお別れかな。みんなにも、『問題が解決するまでの仮メンバー』って事でお世話になっていた訳だし。」
「そ、そっか...寂しくなるね...。」
「なんだかんだ、日々の雑事にもお世話になっておりましたし...。」
「みんなの役に立ててたなら良かったよ。」
本当に良かった。
ここでお世話になったお陰で、この世界の事も色々分かった。
暗く落ち込んでいた心も再び光を取り戻せた。何もかも、シーガーデンのみんなのお陰だ。
「俺もすごく寂しいよ...。でも、俺にはやらなきゃいけない事があるんだ。」
「じゃ、このパーティはユーゴのお別れ会でもあるんだな!!」
「え、いいの?ありがとう。」
みんなで色んな思い出話をしながら夜は更けていくのだった。
* * * *
自分の荷物をまとめ、空っぽになった部屋を見渡す。
数週間くらいだろうか。この部屋にも随分お世話になった。
思えば、コバンが「もう使わないお部屋」と言っていたが、ここは元ミナミさんの部屋だったのだろうか。
「お世話になりました。」
お礼をして振り返るー
「律儀だねぇ~。」
「うわっ!?」
後ろにクララが立っていた。
み、見られていた...。
「いやぁ~、雑用係が居なくなって残念だよぉ。」
「あっはは。ごめんね。でも行かなきゃ。」
「また来てね。」
「!!」
驚いた。まさかクララからそんな事を言われるなんて。
「もちろん。絶対にまた来るよ。」
「言質取ったよぉ~?じゃ~、下降りよっかぁ~。」
一階へ降りると、みんながお見送りの為に待ってくれていた。
「ユーゴさん...!」
「おはようございます。」
「ユーゴ!!って、お前荷物少ねぇな!!」
「そんなに買えるほどお金無くて...。」
しばらく皆ともお別れか・・・。
右も左も分からなかった俺を、暖かく迎え入れてくれた。
シーガーデンのみんながいなければ、俺は今頃死んでいたと思う。
「みんな、色々と本当にありがとう。すっごく助かったよ。」
「助かったのは私達の方だよ...!ありがとう、ユーゴさん。」
「アタシなんて、ユーゴがいなけりゃ死んでたかもな!!」
「あはは、俺もだよ。」
「お二人共、縁起でも無いことを言わないでください。」
いつもの如く呆れるサンゴ。
こういうやり取りともお別れか...。
「それじゃあ、行くよ。」
「あ、あの!ユーゴさん!!」
歩き出した時、コバンから呼び止められる。
「困った事があったら、悲しい事があったら、寂しくなったら、いつでも来てね...!!待ってるから...!」
コバンは相変わらず優しい。
でも、前よりもずっと頼もしい気がする。
「ありがとう!!」
遠くなっていく皆に大きく手を振る。
「またなー!ユーゴ!!」
「ばいば~い!!」
手を振り返してくれる皆が見えなくなるのが名残惜しくて、角を曲がるまで手を振り続けていた。
* * * *
キョウとの約束の場所まで向かう。
始めは全く知らなかった街並みも、今となっては見知った道だ。
「キョウ~!」
ベンチに座っているキョウに声を掛ける。
キョウが待ち合わせに指定したのは、ミナミさんとの思い出を話してくれたベンチだった。
「来たか...。」
キョウの右手には缶コーヒー。
隣には一人分の空白と、もう一つの缶コーヒーが置いてあった。
ミナミさんの分なのだろう。
「ん?飲むかい?」
そう言って、置いてあった缶コーヒーを差し出してきた。
「いやいや、それはミナミさんの分じゃ...。」
「そうだけど、魂になったミナミには飲めないらしいからね。それに、私は缶コーヒーは好きでは無いんだ。」
「じゃあなんで...。」
「彼女と話していると、好きでは無いはずの缶コーヒーも、いつの間にか飲み干していたんだ。」
キョウにとって、ここで2人で缶コーヒーを飲みながら語らう時間が、どれだけ好きだったのだろうか。
「そういうわけだから、キミにあげるよ。車の中で飲めばいいさ。」
「ありがとう。」
これは大切に頂こう・・・ん?
今・・・
「車・・・車があるの?」
「不思議な質問だね。あえて答えるならば、存在するとも。ついてくるといい。」
キョウに連れられ、エントランス港から少し出ると...
「く、車だ・・・!!しかもリムジン・・・!!」
道は悪いが、普通に道路があり、そこにツヤツヤに磨かれたリムジンが停まっていた。
やはり車は存在していたのか・・・!!
「惜しいね。リムザンカーというんだ。」
「ア、ソウダソウダ...。」
出た、微妙に名前違うやつ...!!
そんな事を考えていると、ぱかぁ...と独りでにドアが開いた。
「さぁ、乗りたまえ。」
「お、お邪魔します・・・。」
生まれてこの方、リムジン...もといリムザンに乗るのは初めてだ。
真っ赤なベルベット調のイスに腰掛ける。
ふ、ふかふかで座り心地がすごく良い...!!部屋に欲しいくらいだ...!!
「す、すごい...。」
「ふふふ、楽しんでいるようで何よりだ。」
再び自動でドアが閉まり、車が動き出した。
道はかなり悪いはずなのに、それを感じさせない乗り心地だ。
「それにしても...キミの事だから、てっきり泣きじゃくってもう少し合流が遅くなると思っていたのだけど。」
「こ、子供じゃないんだから...。寂しくはあるけどね。」
「なに。吸血鬼の私からしてみれば、キミも赤子の様なものさ。」
「き、吸血鬼・・・!?」
「おや、言っていなかったかな?」
「初耳デス・・・。」
まず、吸血鬼という種族が居ることに驚きだ...!
しかも寿命が長いのか...!!
「これから向かうのは私のギルド『vampire mansion』。吸血鬼も所属しているギルドさ。」
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