第十三話 前編 一縷の望み
来て頂きありがとうございます。
翌日。海上に行く前に浮遊魔法の動作確認。
「じゃあ、浮かせるよ。」
「うん。」
生まれてこの方浮遊した経験などないので、かなり緊張する。
身体が白い光に包まれた後、吊るされるのとも落下するのとも違う、なんとも言えない感覚が徐々に身体を襲う。
力を抜いたらお腹から臓器がフワッと飛び出してしまいそうで、思わず力を入れた瞬間...
「うわっ!?」
落ちた。
目をつぶっていて気付かなかったが、かなり高い位置まで持ち上がっていたらしい。
「ふふ、余計な力が入っていたようだから...思わず手元を狂わせたくなってしまったよ。」
「狂った、じゃなくて狂わせたくなった、なんだね...。」
めっちゃからかわれている気がする...。
でも、お陰で緊張が解けた。
「キョウ、もう一回よろしく。」
「OK。」
数回浮遊テストをしたところで、オルカが走って来た。
「おーい!こっち、準備出来たぜ~!!」
ついに、か・・・。
深く深呼吸をして、みんなの元へ向かった。
* * * *
海上のかなり高い場所から状況を確認する。
キョウも隣で浮遊しているのだが、椅子まで持ってきて優雅に浮遊している。
「来ました。」
海を見れば、遠くから白い影と波が近づいて来る。
白い影は見定める様に旋回した後、前衛のサンゴ目掛けて突撃していった。
激しくぶつかり合った音。
前は遠くから水しぶきを見ているだけだったけど、近くで見るとより激しさが増す。
「さて...水龍はいつ隙を見せてくれるかな?」
水龍が動き回っている間は、攻撃を仕掛けるのは無理だろう。
となると、水龍が魔法を使う瞬間がグッドタイミングか・・・。
手に汗握りながら戦いを見ていると、サンゴから通信が入った。
「攻撃が強くなっている気がします。何らかの要因で狂暴化が進んだのかもしれません。」
「大丈夫なの?」
「マスターに回復魔法を使ってもらいながら、何とか...。」
これは誤算だ。
危なくなればキョウがサポートに入ってくれるらしいが、それが間に合わなければ...。
前回、オルカが怪我をした時の光景を思い出した。
あの時のような事にならないと良いが...。
旋回しながら暴れていた水龍の動きが変わり、水流が乱れ始めた。
「魔法攻撃、来る!」
魔法攻撃は水中よりも海上からの方が早く気付ける。
俺の声を聞いたコバン、オルカは水龍の弱体化に向けて動き始めた。
水流が荒れ狂い、上からはどうなっているのか分からないくらいだ。
水流が落ち着き始めると、また様子が確認できるようになった。
俺にはさっぱり様子が分からなかったが、みんなは予定通りの動きが出来ていた。
「いくぜ!!!!」
まずは、オルカの打撃でシールドを破壊。
打撃の衝撃で波紋の様に波が広がる。
水龍がひるんだところで、すかさずコバンが弱体魔法を掛けた。
「2人共ナイス!!」
「あとは私の出番だねぇ~。」
クララが動き出したと同時に、サンゴが水龍の眼前まで移動して攻撃を引き付ける。
本来なら攻撃を受けるところを避けることで対応している。
クララが見つかる可能性が上がるが、この状況ならば仕方がないだろう。
水龍がサンゴへ狙いを定めた瞬間、クララが魔法を放った。
複雑に絡み合う水流は、やがて光る水の刃へと変わった。水の刃は意志を持ったようにランダムに動き回り、水龍の身体に次々と傷を付けていく。
水の刃は地上で見たよりずっと大きく見える...というか、実際に周囲の水を巻き込んで大きくなっているのだろう。嬉しい誤算だ。
「思ったより良い感じ~。」
クララも手ごたえを感じているらしい。
火力面は不安要素だったから安心だ。
再び耐えるフェーズに入り、突進する水龍の攻撃をサンゴが受け・・・
「っ!?」
今、サンゴのシールドが割れた気が…!?
それを見たキョウがすかさずシールド魔法を掛けた。間一髪、防げたようだが...
「キョウさん、ありがとうございます。助かりました。」
「礼には及ばないさ。しかし、困った事になったね…シールド魔法の威力を上げなければ耐えられないか…。」
まさかここに来て、耐久が難しくなるとは。
「キョウ、シールド魔法の威力を上げる事はできる?」
「可能だけど、それでは燃費が悪くてね。耐久戦は難しいだろう。」
「そっか…。」
キョウのエネルギーにも限りがある。
一度作戦を練り直した方が良いだろう。
* * * *
撤退の連絡をして、再び海遊ビーチに戻って来た。
悔しいが、安全第一で作戦に臨むためには仕方がない。
「いやぁ〜、惜しいところまでは行ったんだけどねぇ〜。」
「まさか、水龍様が強くなっているなんて…」
「不甲斐ありません。」
どうしたものかと悩んでいると、キョウが人差し指を立てた。
「1つ。作戦がある。」
「「「「「?」」」」」
「高威力の魔法で短期決戦を仕掛ける。ただし、賭けになるけれどね…?」
確かに、耐久が出来ない以上はそれしか無いが…
「そもそも〜高威力で必中する魔法なんて使えないよぉ〜?使えたら最初からそれ使ってるし〜。」
「そうだね。でも、低威力で必中の魔法を使える人はいるだろう…?」
まさか。
「え…えっと…わ、わたし…??」




