第九話 トライ&エラーエラーエラー
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次の日。昨日決まった作戦を実行し水龍に制魔の宝玉を飲ませるべく、海遊ビーチに集まった。
「マスター、避難完了したぜー!!」
「こっちもテープ張り終わったよぉ~。」
「みんな、ありがとう...!」
周辺住民の避難を済ませ、海遊ビーチ付近を立ち入り禁止区域に設定。
イヤホンのような通信水晶を装着して、手順の最終チェックを行った。
さて、ここからが本番だ。
コバンはとても緊張しているようで、先ほどから深呼吸をして心を落ち着かせようとしている。
それもそのはず。今回の作戦はコバンが要であると同時に不安要素でもあるのだ。
「前衛はサンゴちゃんと私、中衛はオルカちゃん、陸上はクララちゃんとユーゴさん。これで間違いないよね...?」
「うん、間違いないよ。」
「わ、私が前衛なんて出来るのかなぁ...。」
「ご安心を。マスターの事は私が守ります。」
こくん、と頷いたコバンの表情は先ほどよりも和らいでおり、サンゴに絶大な信頼を寄せているのが伺える。
* * * *
「それでは、行ってまいります。」
まずはサンゴに水龍を誘導してもらい、ギリギリまで海遊ビーチに近づける。
ここは広くて状況も見やすく、撤退もしやすい。まさに絶好のフィールドだ。
しばらくすると徐々に波が高くなっていき、ついに...
「来た!クララ、強化魔法!」
「りょ~かいっ!」
水龍が来たらコバンに魔法バフ。同時に波の制御を始めた。そして...
「コバン!サンゴとオルカにシールド!」
「うん!」
そう。今回コバンに使ってもらうのは回復ではなくシールドの魔法だ。
ウィンドウを見た時、コバンの「防御」が高かった。華奢なコバンが何故、とずっと疑問に思っていたがシールド付与の魔法を使っており合点がいったのである。
少し離れた地点で、何かが衝突したような大波が立った。
恐らく、前衛2人と水龍が接敵したのだろう。
そこから絶えず同じような波が立ち、水面から水龍の胴体や尾がバシャバシャと見え隠れしている。
そして、ここからはオルカのスピードと見極めに頼る。
まるで、地面が揺れているかの様な水の音と、勢いよく打ちあがる白い飛沫が水龍の猛攻を物語っていた。
しかし、これは思った以上に...
「ん~、水中だと攻撃はやいねぇ~。」
「やっぱり、クララからもそう見える?」
前回の海遊ビーチの時は打ち上がっていた為、攻撃速度は問題では無かったのだ。
しかし今回は水中で、いわば水龍専用フィールド。
前回の様に打ち上げようにも、砂埃で視界が遮られればスピード勝負な今回の作戦では悪手になる。
「2人に頑張ってもらうしかない...。」
しばらくすると、飛沫が上がっている地点の海流が渦巻きはじめた。
事前にみんなが教えてくれた通り、水龍も魔法を使えるようだ。念のため通信で安否を確認する。
「コバン、サンゴ大丈夫?」
「えぇ。マスターの魔法のおかげで受けきれます。」
「私も大丈夫...!」
ほっとしていると、オルカから通信が入った。
「さっきの渦の魔法使った後ならちょっと隙がある!次の渦魔法で行くぜ!」
「了解です。」
さすがオルカ。動体視力がすごくいい。
そう。今回の作戦は、ひたすら攻撃を受け続け、オルカのスピードで僅かな隙をついて宝玉を投げ込み、ダメなら再トライ。
名付けるならトライ&エラーエラーエラー作戦だ。
当然、宝玉もたくさん用意してオルカに持たせてある。
再び海流が不自然な動きになった瞬間、猛スピードで飛沫へ向かう小さな波が見えた。
しかし・・・
「クッソ、ダメだ!!気付くのが早え!!」
そもそも、宝玉が投げ込める位置まで接近するのが難しいのだ。隙を見て、尚且つ攻撃に巻き込まれない様に近づく必要がある。近づきすぎれば噛み殺され、遠すぎては宝玉が届かない。
「早えけど、無理じゃねえと思う!悪ぃけどもう一回やらせてくれ!!」
「了解です。」
「が、がんばる...!!」
しかし、この作戦の問題点は「持久力」。トライ出来ても失敗すれば、また次のチャンスまで耐久が必要になる。
特に、今回はシールド魔法が切れたらかけ直す必要があるため、コバンが前衛。物理攻撃はサンゴが防いでくれるとは言え、魔法攻撃は自分で避けるか防がなければならない。コバンの体力がEなのを考えると、あまり時間は無い。
コバンの体力か宝玉が無くなったら撤退だが、避難や封鎖、船の運休の事を考えるとそう何度も行える作戦ではなく、今日一日やって駄目なら別の方法を考えようという事になった。
再び絶えず水しぶきが上がり、大波が立っていく。
そのたびに前衛の二人は大丈夫だろうかと不安になる。俺が戦えたらどれだけ良かったか。
もどかしく思っていると、クララが声を掛けてくれた。
「不安でもどかしい気持ちは私も一緒だよぉ~。でも~あの二人なら大丈夫だって~。」
「そうだね...。ありがとう。」
そんな言葉を交わしていると、再び通信水晶からオルカの声がした。
「渦の魔法攻撃後、もっかい行くぜ!!」
「了解しました。」
「りょうかい!!」
しばらく飛沫が上がり水流が変わった頃、さっきより早いタイミングでオルカが動き出した。
「オラァッッ!!」
どうやら、投げる事には成功したようだ・・・!!
「どう、飲み込んだ!?」
「駄目ですね。遠すぎて届いていません。」
「すまねぇ・・・ビビっちまった!」
「いやいや~、安全第一。トライ&エラーだよぉ~。」
予想した通り難易度は相当高い。
その後も、渦の魔法が来るまで耐久→失敗を繰り返し、かなりの時間が経ってしまっていた。もう何度挑戦しただろうか。
「そろそろマスターの体力が限界です。」
「私は大丈夫だから・・・。」
「こら~、また別の作戦を考えればいいいんだからさ~、無理は・・・
クララがそう言った瞬間、通信水晶から何かが衝突したような、大きな音が響いた。
「何の音!?みんな大丈夫!?」
「はい。私たちは無事なのですが...水龍様が海中の岩に激突しました。」
良かった。怪我をした訳じゃなかったのか。
しかし、撤退には丁度いいタイミング...
「水龍サマの動き、鈍くなってやがる!手負いの今なら行けるんじゃねぇか!?」
「しかしマスターにもう一度耐久出来るほどの体力は...。」
「わたしは、大丈夫だから...。」
「コバン、無理はしちゃ駄目だ。」
「うん、分かってる。あと一回。これで駄目なら諦める。」
確かに、畳みかけるなら絶好のチャンス。これで決まらなくても、別の方法を考えるまでだ。
そしてまた耐久のフェーズになったが、確かにさっきより飛沫が上がる頻度が少ない気がする。前線からしてみれば、その差はかなり大きいだろう。
しかし・・・
「はぁっ、はぁっ・・・っ・・・!!」
通信水晶から聞こえるコバンの荒い息遣いは、聞いていて心が痛む。今にも水流に流されてしまいそうで、早く隙を見せてくれと願う。
「来ました!渦の攻撃です!」
「やってやらぁ!!!」
水流が変わり、小さな波が再び水龍へ向かう。タイミングも良い。
今度こそ・・・!!
「オラァッ、飲み込めぇっ!!!!!!!!!!」
「っ!!飲み込んだ...!!!」
通信水晶から波の音が消え、海上の方も波紋が静かに消えてゆく。
これは・・・
「鎮静化、成功です!」
「いよっっっっしゃぁぁぁ!!!!」
オルカの嬉しそうな雄叫びが聞こえる。
「3人とも~、お疲れ様ぁ~!」
「本当にみんなすごいよ!!あんな無茶な作戦をやり遂げるなんて...!」
感動していると、
「よかっ...た...けほっ。」
「おい、マスター!?」
「マスター...全く...無理しすぎです。」
「無事でよかったよ。ゆっくり上がってくればいいからね。」
どうやら、コバンは体力の限界のようだ。水龍の脅威はもう無いのだし、ゆっくり撤退すればいい。
「クララも、長い間波を止めてくれてありがとう。」
「いやぁ~。それくらいしか出来なくて申し訳ないよぉ~。」
「クララがいなかったら、この辺全部波に呑まれてたかも。」
「まあねぇ~。」
先んじてテープの回収をするかな、と後ろを向いた瞬間________
「あぶねえっ!!!!!!!!!!!」
突然、オルカの叫び声が鼓膜をつんざいた。
その瞬間、海面が再び大波を上げ、飛沫が高く舞い上がる。
「なに!?どうしたの!?」
「______!!!!」
サンゴが何か叫んでいるようだが、海流の音で何を言っているのか聞こえない。嫌な予感に心臓がバクバクする。
水流の音が消え、次第に声が聞こえる。
「オルカさんが噛まれました!!!!!」
次回について、作者のリアル都合によって更新を見合わせます
何卒ご理解よろしくお願いいたします!




