16.キャリアはひとつなぎの物語
田中「この前提案したホランドさんの職業興味検査が評判良くて褒められました」
安井「それは良かったよ。田中君の結果はどうだったんだい?」
田中「あ〜!肝心の僕も佐藤さんもしていません!褒められて満足してました」
安井「あららら、また個人的にしてみるんだね」
田中「僕だけしても仕方ないです。でも褒められるのは気持ちいいです。もっと役に立ちそうなこと教えてください」
安井「会社の役に立てるなら俺は嬉しいから構わないけど相手を知るのも大事だけど自分をしることはもっと大事だよ」
田中「褒められるのはもっと大事です!もっと教えてください」
安井(やれやれ本題を見失ってるけど興味を持ってくれるならイイか)
「じゃあ、この前スーパーという人の理論を言ったのを覚えてるかい?」
田中「キャリアレインボー、アーチでしたっけ?」
安井「そうだ。ライフステージと役割などを説いた「キャリア発達理論」を広めた人だけど、それの拡張版として「キャリア構築理論」を確立した人がいるんだ」
田中「スーパーさんの考えをさらに拡張したんですか、それはスゴイですね」
安井「その人はサビカスと言って時代が進み不安定な労働環境を脱雇用と表現して新たな課題は"変化の多い職業人生をいかに上手く乗り越えるか"としてキャリアを自分で作り上げる、つまり構築するという考えからキャリア構築理論なんだ」
田中「時代に合わせたキャリア論なんですね」
安井「そうなんだよ。サビカスは「確固たるキャリアの道筋もなければ成功に至る確実な筋書きも持ち合わない我々は、まるで地図も羅針盤も持たない旅人のような存在である」と述べたんだ」
田中「どお生きるかみたいなこと言ってるんですね」
安井「そうサビカスは人生を物語の様に考えているんだ」
田中「詩人ですね、名前は鉄鋼みたいなのに、それで有名なのは何があるんですか?」
安井「有名なのはナラティブ(物語り)を聞き出しキャリアテーマ(金の糸)を見つけていく手法などが有名かな」
田中「ナラティブ?」
安井「分かりやすく言えば人生は自分を中心とした一つの物語。人生は物語の読み手ではなく書き手。だから自分の物語つまりナラティブ」
田中「自分の生き方の物語、ナラティブなんですね。でも、そんなのがキャリアにどう関係あるんですか?」
安井「そうだね。なんで関係あるかだね。サビカスのアプローチにキャリアテーマ=人生の物語のテーマを見直すことでキャリアの見直しと未来に繋がるんだ」
田中「見直しが未来になるんですか?」
安井「それが最初に行った、自分のキャリアのテーマが分かれば人生の羅針盤や地図になるんだ」
田中「分かりました。テーマが分かれば、今後の生き方がわかるんですね。どうやったらわかるんですか」
安井「興味が出てきたね。人生が大きなテーマだとしたら常にプロット=筋書きがあり、それにつながるマイクロナラティブ=小さなお話とマクロナラティブ=大きな物語の連続でできているんだ」
田中「小説の一節、一章みたいな話ですか」
安井「その通りだ。筋書き=プロットがあり、それに沿ってマイクロナラティブを繋ぐとマクロナラティブになる。だから小さなお話は一見関係ない様に見えて全て繋がっている。だから小さなお話を聞いていくんだ」
田中「小さなお話って具体的ににどんなことなんですか」
安井「これは小さなエピソード、例えば有名人の活躍する姿をみて憧れてその仕事をやり始めたとか、嫌いな人に肉体的特徴を指摘されてコンプレックスになったとか、小さな転機となるエピソードだ」
田中「あ、言われてみれば、そんな小さな出来事が人生を変えてる話はよく聞きます」
安井「そおなんだ、そんなお話を客観的に聞き出してマクロナラティブ=大きな物語を現時点で主観的な意味を与えることができるようになる」
田中「小さい物語の連続が僕の人生を構築してるんですね」
安井「そうやってナラティブを聞き出していくのがナラティブアプローチというんだ。これの凄いところは人生をやり直すことが出来ることなんだ」
田中「人生をやり直すこともできるんですか」
安井「そう、人生は物語だ。人生の書き手は本人なんだ。自分の人生が小さなお話の連続でできているなら小さなお話は客観的にみると違う意味を持つ、そこで意味が変わる。そこで、かつての人生のテーマを見直せば人は生まれ変わることができるんだ」
田中「そんなので本当に変わるんですか?」
安井「例えば今まで自分が辞めれない悪癖を小さな時のエピソードが原因だったと分かった時に現在見つめ直したら実は大したことなかったとか、もしくは別のエピソードに差し替えたら認識が変わったりする。人は認識が変わってテーマが分かればモノの見方が変わったりするんだ」
田中「認識って、そんなに変わるモノなんですね」
安井「こればっかりは経験しないと分からないモノだね。物事の見方が変われば人はきっと変われるものなんだろうね」
田中「安井さんは経験があるんですか?」
安井「さあね。でも素敵なアプローチだと思うけど」
田中「僕も無限の可能性を感じます。是非、僕の物語を変えて、憧れの方と一緒になるナラティブを作りたいです」
安井「じゃあ、先ずは田中君のテーマを知ることが大事やね」
田中「テーマは決まってます。美人のお姉さんとウハウハです」
安井「‥‥俺はできないから、病院を紹介するよ」
田中「よろしくお願いします」
やはり変わらない田中君であった。