84話 私の初恋で一番愛しいサキくん 3
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[桜木雪菜視点]
サキくんが心配して来てくれて嬉しいとは思ったけど違和感をなんとなく感じた。見た目もニオイも歩き方も……背格好もサキくんそのものだけど、おかしい。サキくんは足を骨折しているからここまで来るのには時間がかかるし、ママやパパから連絡を貰ったとしても花蓮さん達が探すことをさせないはず。ってことを考えるとこのサキくんは偽物ってことになる。少しだけ引っかけてみる。
「ねぇサキくん」
「どうかした?」
「その足でここまで来たの? 結構離れているよ?」
「雪菜さんの為なら苦でもないよ」
偽物ってことが分かってしまった。ここから家まではそんなに離れていない。ただサキくんの松葉杖での移動速度を考えた上では時間がかかるってだけで10分もかからない距離だ。何よりもサキくんが私の為なら苦でもないって言葉を今は言うことはない。少し近づいてみて分かったことが……サキくんのニオイはするが別人の匂いもする。・・・この匂いは夜夢さんだ。彼女がサキくんの変装をすることはしないだろうから使用後のを使っているのかな?
サキくんじゃないのはほぼ確定したけど何が目的なのかが分からないから私からは動かないでおこう。私は弱いから下手に刺激して攻撃でもされたらひとたまりもなく私はやられる。かといってサキくんに頼れるかって言われたら頼るわけにはいかないから自分でなんとかしないと。何かあった時の為にスマホで録音だけでもしておかな__「気付いてるね?」__私が偽物ってことに気付いていることがバレた!!
「完璧だったと思うんだけどなぁ」
「私はサキくんの偽物に気付かないわけないでしょ」
「それもそっか。君は彼のストーカーだしね」
「な……違う」
「違わない。ストーカーしてナンパや痴漢にあって彼に助けられてを繰り返していたでしょ」
うぐっ……サキくんが今何しているんだろうって気になって仕方なく後をつけただけでストーキングなんてモノとは違う。私はサキくんの将来のお嫁さんだから将来の旦那さんの動向を探る権利はあるから断じてストーカーではない。そんなことよりもなんで私がサキくんの後をつけていたことをこの偽物は知っているわけ? そんなことよりも一体あなたは誰なのかを教えてほしい。
待ってサキくんの後をつけていることを知っている人は二人ほど居た。夜夢さんと護衛の月美さんと言う人は知っている。そのことを思い出して私は動揺しながら「月美さんですか?」と聞く。私の問いに彼女は「やっぱり気付きますよね」とニッコリと笑顔を浮かべながらサキくんの顔を剥がす。恥ずかしいところをみられた。
「全く心配しましたよ。この男と会うので」
「私の変装をしてた変態さん」
「まぁあながち間違えてはありませんが……」
「何かあるんですか?」
「ここではアレですので車に乗り込んでください」
月美さんにうながされるまま車に乗り込んだんだけど、夜夢さんが乗っていた。驚くことではないのは分かっているけど……いると思っていなかった。私が乗り込んだのを見た夜夢さんは「お母様の所へ一緒に行きませんか?」と言ってきた。冗談だろうと思ったけど目は真剣だったので私はお断りをした。だってあの人に会ってことは面倒なことに巻き込まれるのが確実ってことだから断ることが重要。
断る私を見て夜夢さんは嫌そうに「お兄様と似ています」と言った。サキくんと似るのは仕方ないとは思う。愛しい人に近付きたいって思うのは自然なことだし……夜夢さんもサキくんに似ているところはある。その才能とかね。夜夢さんは私に嫉妬しているかもしれないけど私も貴女に嫉妬しているんだよ? お互いにないモノねだりしても虚しいだけなのは分かっているから何も言わないんだよね。
「私から説明させていただきたいのですが……よろしいでしょうか?」
「月美さんからですか?」
「えぇ私から説明した方がよろしいかと」
「・・・お願いします」
「ではまずはあの男からの話を」
確かに月美さんから説明された方が嫌味などを言われないだろうからお願いする。それにこの人の説明はすごく丁寧で分かりやすいから普段からこの人に色々と説明されたい。こんなことを考えている場合ではない。月美さんの説明が始まっているのだからしっかりと聞かないといけない。最初はあの変態さんについての話だったから少しくらいなら聞いていなくても大丈夫なはず。
簡単に変態さんのことをまとめると金で雇われたバイトで中身を知らない紙をサキくんの家に置いて行くって仕事をしていたらしい。所属先はないから別に何かをして報復されるなどはないらしいけど、身柄は守友家で捕獲しているとのこと。アレ自体に問題はないとしても雇った人に問題があるみたいだ。今回……アレを雇ったのは生徒会の誰からしい。流石にそれはないと思いたいけど、何故サキくんの家に紙なんて置かせたのだろう。
「凛奈様は……竜樹様だと睨んでいるようなのです」
「サキくんと敵対する気はないのでは?」
「兄様はあるのですよ。貴女も巻き込まれたあの事件を」
「事件……まさか、あれはサキくんは関係ないじゃないですか!!」
「あるから言っているのです。月美、彼女をここで降ろしてあげなさい」
「・・・承知いたしました」
私は月美さんに取り押さえられて車から降ろされた。必死に抵抗したのだが簡単に拘束されてしまった。丁寧に降ろされたが「ここなら歩いてすぐでしょう」と夜夢さんは言ってきた。月美さんに関節を決められているから暴れられないから「サキくんは私が守るから」と夜夢さんに向かって言った。流石に何か言い返してくると思ったが帰ってきたのは「そうですか」だけだった。
「あの約束は無しでいいです。私の方が時間は長かったので」
「何が目的?」
「目的などありません。ただ……アナタとは正々堂々とけりをつけたいだけです」
彼女らしくない弱々しい表情を浮かべながらドアを閉めた。それを見た私はただ茫然としていた。月美さんが何か言っているのも聞こえないまま。私はまた蚊帳の外でサキくんや彼女に守られるだけなんだと現実を叩きつけられたような感覚がした。私の勘違いだとは分かっているがどうしてもそう考えてしまう。
そんなことを考えていたらいつの間にか家に着いていた。部屋に入ってベッドに倒れ込む。サキくんのことを守ると堂々として言ったのに……彼女に守られてしまった。しかも相手は“恋”を諦めた表情をしていた。これからいがみ合って取っ組み合って、仲を深めていくとどこかで私は考えていたのだ。
「私は最低だなぁ」
「雪菜さんは最低なのか?」
「すごく最て_えぇぇぇ」
「良かったら話聞くよ?」
サキくんの幻聴が聴こえてくると思って話しながら起き上がるの目の前にいたからびっくりしてしまった。初恋で一番愛しいサキくんの顔を至近距離で見てしまったら悩みが一瞬で吹っ飛んでしまった。




