83話 私の初恋で一番愛しいサキくん 2
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[桜木雪菜視点]
私がサキくんに初めて出逢ったのは2才の時だった。隣に引っ越して来た夫婦は元々は少し遠い所で住んでいたらしく七年ぶりに地元に帰って来たとのことだった。当時は幼かったから何を言っているのかは理解できなかったが今は理解しているつもりだ。そんなことよりも私がサキくんを好きになったのは一目惚れだった。誰も……将狼さんと花蓮さん以外は知らないしみたことがないであろうところに惚れた。
サキくんは光で照らされて近くで見ると髪や瞳が青くなる。凄く薄くて本当に近くで見ないと分からないくらい薄いけど、綺麗で見惚れてしまった。私はそれを初めて出逢った時に見た。2才の時なんてほとんど憶えていないけど、これだけはしっかりと覚えている。初めて会った時以外で憶えているのは一緒に遊んでいる時くらいだ。サキくんを好きなったのは一目惚れだけど知っていけばいくほど私はサキくんに惹かれていった。
3才の時は保育園にサキくんと同じ所に入った。私は凄く嬉しかったから飛び跳ねていたのを今でも思い出せる。たぬちゃんとも出会えたからいい想い出もあるけど最悪なのは佐藤くんと会ったことだった。組のみんなとはあまり遊ばなくてサキくんやたぬちゃんと遊んでいた。それを面白く思っていなかった佐藤くんが二人が用事で休みの日を狙って私の物を隠したり描いた絵を破り捨てたりされた。私は凄く泣いた。涙や声が枯れて次の日、風邪で休むくらいにダメージを受けた。
二人には心配してほしくなくて絶対に言わないでほしいと両親にお願いした。ただそれが良くなったのだろう。佐藤くんやその友達は私が一人でいる時を狙ってイジメてくるようになった。私もこんな人達に負けてたまるかとジッと堪えていたが……ある日サキくんが保育園で問題を起こした。私がイジメられているのをどこかで知ったらしく佐藤くんのグループを一人残らずボコボコにした。直接、私に暴力を振るおうとしていた佐藤くんには顔面にパンチをくらわせていた。
佐藤くん達を聞いた私の両親は感謝していた。私がイジメられているのを知らずに「楽しいか?」などと聞いていた自分たちを責めていた。私が隠していたのが良くなかった筈なのに二人とも泣きながら「気が付かずごめんなぁ」や「ごめんねぇ」と何度も謝られた。二人は悪くないとその時も思っていた。悪いのは佐藤くんとそのグループ、そして意地になっていた私だ。なのにサキくんは__
『ユッちゃんはがんばって悪に立ち向かっただけだ』
__そうぶっきらぼうに言った。初めて会った時と同じように光が彼を照らした。
その時、私は心臓が一気に苦しくなった。サキくんに対する“好き”が家族やたぬちゃんに対する好きとは全くの別物だと気が付いた。それについている名前は知らなかったが私は“恋”を自覚した。そのことをママに言ったら「それはね恋よ」と言われた。“恋”を自覚した私は変わった。サキくんのことをずっと考えるようになり気がついたら跡をつけるようにもなったし、飲食をシェアするようになった。
サキくんが使わなくなった物をこっそり回収して保存するようにもなった。私の中でサキくんが中心になっていくように……元からではあるけど、もっと深くなっていった。本当にひどい時はサキくんが居るか居ないかで決めていた時もあったくらいだ。今の私はそんなことはないからいいけど……本当に暴走していたのだと思う。けど仕方ないと思ってほしい。
『ユッちゃん』と初めて呼ばれた時が色っぽくて、『頑張った』と言って助けてくれた時はカッコよくて私と誓いのキスをした際は顔を真っ赤にした時は可愛いかった。サキくんからプロポーズしてくれたんだし誓いのキスをするのは当然。その時の言葉は__
『ユッちゃん、誕生日おめでとう』
__だったんだから。
「手作りの指輪を貰って喜んでいたのに、あの事故で無くしちゃったんだよね」
あの時のことは私とサキくんは事故としているけどもアレは事故じゃなくて事件だった。それに関しては別にどっちでもいいんだけどそれのせいで指輪を無くした事は絶対に許さない。あの指輪は木製だから燃えてしまっては跡形も無くなるしサキくんが一生懸命に作ってくれた婚約指輪なんだから。
「ほんとに暗示って厄介」
サキくんが思い出したくないって言うなら仕方ないけど……夜夢さんいわく思い出そうとしているってことだからここは少しだけ引いてみよう。多分いまの関係性は友達以上恋人未満な筈だしね。少しだけ距離をおいてすれば何も問題ないはずだから……夜夢さんやたぬちゃん以外は佐藤くんに惹かれると思うから少しだけ安心出来ると思いたい。
サキくん成分が足りないから今度、夜夢さんにサキくんの服を借りようかなぁ。流石に私が家まで行って盗んでくるとバレるから絶対にそんなことはできない。はぁ……またサキくんに助けられないかな? どさくさに紛れて抱きついて匂いを嗅げるのに。そんなご都合展開なんてあるわけないよね。
「お嬢さん、夜道を歩くのは危険ですよ?」
「ナンパで す か? なんでここに……」
「そりゃ奏さんと海さんが心配していたから」
ナンパかと思って振り返ったら松葉杖をついているサキくんが背後にいた。色々聞かれたのかと一瞬焦りはしたけどそんなことはないみたい。・・・願ったらサキくんに会えたのって運命だからだよね? もうこのまま襲ってはダメだからしっかりと耐えないと。




