80話 勝負と後悔 1
生徒会室にカバンを忘れていたので取りに戻ったが誰も気が付かなかったのでそのまま待機していたら何故か怒られた。気がつくまでいるというイタズラをしただけだというのに……まぁ生徒会室を追い出されたから許されたって事にしておくか。松葉杖は本当に歩きにくいなぁ。車椅子にしてもらうほどの怪我ではないから幸いだったか。こんなに廊下が長いのか……ヤバいなぁ。
「おや藤咲くんじゃないか。こんな所でどうしたんだい?」
聞き覚えがある声が聞こえたので振り返ったら……先輩Aがそこにいた。ただ雰囲気が先輩Aなだけで人格は西さんだろう。勘だから外れる可能性はあるけど何故かそう思える。おそらくは僕へ敵意を向け始めて来ているのが彼女だけだからだろう。あの時に僕を手駒にしたかったがそれが出来ずにイラついている可能性もある。まぁどちらでも僕としてはいいんだよねぇ。潰そうと思えばいつでも出来るから。
もし先輩Aの方だったとしたら、僕に接触して来たということは記憶は共有されていないって訳だろう。都合が悪いのは共有されないのか? こんなことを考えても僕は専門家ではないから分からないだけか。だが気になるから少し探ってみるのも手だな。母さんに少しの間は監視されるだろうから僕が直接的には動けないからどうしたのもか。
「聴いているのかい?」
「すいません」
「上の空だから心配になるな。送って行こうか?」
「お気遣いありがとうございます。西さん?」
「へぇ〜やっぱり分かるんだぁ」
ビンゴだったみたい。流石に当てずっぽうだから心配だったけど正解を引けて良かったよ。いやぁ〜相当面倒くさい空気になって来たからどうしたものかな。西さんの空気感が一気に変わっていくのを感じた為、僕はここからさっさと逃げたかった。この人は油断ならないってことをこの前で知ったからだ。こうゆう時にたぬさんが居てくれたら……? やっぱり変だな。
雪菜さんじゃなくて何故にたぬさんが出て来たのかが分からない。雪菜さんは頼りになるだろうと付き合いが浅いなりに分かるが……アレに関しては以前までは面倒だから近づきたくないと思っていた筈なのに。まぁ素を見たから印象が変わったってだけだろう。とりあえず今は目の前にいるめんどくさい奴の相手をしないといけないな。西さんから今の状態で逃げることは可能だが……まだちらほらと生徒がいやがるから後から面倒になるのか確実だな。
「ねぇ? 君はぁ見分けをつけれるのかなぁ?」
「さぁ……勘ですね」
「本当のことを言ってくれないんだねぇ」
うわぁ〜だるぅ。帰りたいからどうしたら__また押し倒されてしまった。考え事してたら周りへの注意不足があるのを治さないとな。今度は前回の失敗をしっかりとしてから押し倒してきていやがるなぁ。これじゃあ身動きなんてとれやしない。誰かに仕込まれていることは分かるくらいには動きが綺麗だったな。神月辺りにでも芸を仕込まれてきたと考えて行動すべきだな。
西さんは「ねぇ……貴方はどうして救おうとしているの?」と不思議そうな表情をしながら言ってきた。僕が一体誰を救おうとしているように見えるのかは知らないが何も答えれるわけがないだろう。誰も救う事なんて出来ないのに。・・・はぁ邪魔だし、面倒だし、鬱陶しいからあの時の選択は間違えてしまったのかもな。このまま何も抵抗せずに居たら勝手に自滅してくれないかなぁ。
「抵抗しないのならこのま___うっ!?」
「うわぁ、痛そう」
「咲人様に手を出したら後悔しますよ」
「今、後悔しているよぉ」
「蹴りで済んで良かったですね。咲人様ならもっと酷い事をされていたでしょうから」
月美さんからの蹴りをもろにもらってしまい軽く浮いた。月美さん、助けてくれたのは嬉しいですけど後悔するとは一体どうゆう事なのかをお聞きしたいんですが? あと別に僕は酷いことはしませんよ。邪魔だからと言って手を上げたりはしていないんですから。西さんがここまで大胆な行動をするなんて思っていなかった。アイツらは何をしているのかを報告させないとな。
まだ下校していない生徒がこっちに向かって来ているからとりあえずは何処かに運ぶように月美さんに言おうと思ったら「月美……その女を私に渡しなさい」と低い声を出してこちらへ向かって来ている夜夢が居た。流石に主である夜夢に言われたのであれば差し出すしかないと思うのだが、月美さんはその命令を拒否した。主の命令は絶対と教えられていると以前聞いたことがあったがアレはなんだったのか。
「いいから渡しなさい」
「夜夢様……私に任せてください。くださいましたら」
「・・・」
「咲人様の脱ぎたてほやほやのシャツを差し上げますので」
「ゴックリ……いいでしょう」
「ありがとうございます」
ちょっと待てぇい!! 誰のをあげるとか言いやがった? 僕のシャツを「差し上げますので」って言ったよね。流石に嘘だと思いたいんだけど……こっちにニコニコと笑顔を見せながら月美さんはやってくるから逃げようと松葉杖を掴むが小石で弾かれてしまう。無駄にスペック高い奴って嫌いになりそうなんだけど。
松葉杖は弾かれたし……片脚のまま立ち上がるのは危ないだろうから這いつくばって逃げるしかないかも。流石にスペックが高い月美さんを相手に逃げれるとは思えないから本気で対策を考えないと、身ぐるみを剥がされる。まずは夜夢の気を逸らさないといけないから何かを言わないといけないんだけど、全く思いつかないんだが、どうしよう。
「咲人様、申し訳ございません。ご覚悟を」
「ちょっと待ちなよ。守友夜夢……藤咲とデート券欲しくない?」
「月美……待ちなさい。貴女はどちら様でしょうか?」
「原っていうものよ。知っているでしょ」
「お兄様とのデート券と聞こえたのですが?」
月美さんにあと少しで服を掴まれそうになっていたところをたぬさんが助けてくれた。のはいいんだけど、どうして学校にまだいるのかが分からないんだけどぉ? 忘れ物をした可能性もあるから何も言わないでおくけどさ、マジで助かった。あとでお礼として何かを奢ろう。それかなんでも言うことを一つ聞くってのをいいかもな。
「ただし、勝負に勝ったらだ」
「いいでしょう。何にしますか?」
「フッ……料理といこう」
たぬさんの雰囲気が変わったかと思ったら演技をしているのか。よく観察しないと分からないくらいだから相当すごいんだな。ってか料理勝負をする流れになっているけど、作れるのか? この人は。僕は知らないよぉ〜勝負を持ちかけたことを後悔しても。




