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76話

 僕が母さんの手作りケーキを食べようとした瞬間にインターホンが鳴った。母さんに言い負かされた父さんが出るので僕はゆっくりとケーキを_「咲人、お客さん」_食べれなかった。父さんがお客さんって言うってことは佐藤がやって来たってことだろうなぁ。面倒だけど適当に相手してさっさと帰ってもらおうと思いながら玄関を開けると雪菜さんが居てその背後に……原さんが隠れていた。何故? 疑問に思いながらとりあえずはリビングに通した。


 リビングに通した後、僕の部屋まで案内しようかと思ったがケーキがあるのでリビングの方がいいだろう。テーブルの挟み向かい合わせて座った雪菜さんと原さん。僕は少し前まで座っていた場所に戻ったが、二人の距離が近いような気がするのはどうして? もう少し隙間がある筈なんだけど……無くない? 雪菜さんはニコニコしているし、原さんは表情がふやけているんだが? とりあえず何があったのかを聞くことにした。



「ぷっはっはっ……ひー腹がいてぇ」

「笑い過ぎだわ」

「だってさ、お前が即堕ちして……だめだぁ」

「笑うな!!」


 何故距離感が近くなかったのかを聞いた結果、僕は爆笑して腹が痛すぎるくらい笑うことになった。僕と原さんの仲が良さそうに見えたのか雪菜さんは嬉しそうにしていた。仲は良くはないと思いたいけど……こんなやりとりしていたら勘違いされても仕方がないか。そんなことは一旦おいておくが、本当に原さんはチョロすぎないだろうか? 二人が昔遊んでいた仲だとしても「ダメ?」と言われただけでこうも距離が近づくものなのか。


 まぁ雪菜さんに友達が増えて僕も嬉しく思うからそこはいいんだけど目的はいいのか。雪菜さんと友達になってしまったらお前はちゃんと僕へ何かしら出来るのか? まぁ僕としては敵が減って何もしなくて良くなるから全然やらなくてもいいんだよね。原さんの場合は分かっていてもやるしかないって感じがするからなぁ……どうにかして別の方向に持っていけないものなのか。


「藤咲、アンタは私のことをたぬきって呼んでいいわ」

「は?」

「私の名前よ。原たぬき」


 原たぬき……ってどこかで聞いたことがあるような名前だな。検索すれば何かヒットするかもしれないと思い検索してみたが……超売れっ子舞台子役たぬきが表舞台から消えた!? その理由とは? って感じの記事が多いな。あの事件の被害者ってことならばそりゃそうだろうな。顔に火傷を負っていたら見せようだなんて微塵も思えなくなるからなぁ。一生残る傷だとしたら余計、表舞台から消えたくもなるだろうよ。


 貯金の残高ってどれくらいあったか? ジジィが僕名義で作ってやったぞい。とか入院している時に言っていやがったからそこまではないだろうけど、治療費として出すか。どれどれ……一、十、百、千、万、十万、百万……五百万!? あの爺さんアホか。高校性に持たせる金額じゃないってことを今度言っておかないといけないな。最悪母さんにも協力してもらうことになるんだけど、別にそれは大丈夫だろう。今回ばかりは助かったんだけどな。


「原さん」

「何? 私のことはたぬきでいいわよ」

「そうか。たぬさん、この通帳に五百万入っているんだけど」

「たぬさん!? いや、そんなことより何故それを私に渡そうとしているのよ」

「皮膚の治療に使ってくれたらいいよ」

「サキくん!?」

「お断りよ」


 まぁ普通に断るよねぇ。雪菜さんが「たぬちゃん……いいの?」とたぬさんに聞いている。たぬさんは何も言わずに首を横に振る。プライドが許さないって感じなのか? などと考えていたら「アンタに貰うくらいなら今の姿で舞台に戻るわよ」と大声で言ってきた。僕的には勝手にしてくれてかまわないんだけども顔の半分を髪で隠しているってことは半分は火傷があるってわけだろ。見たことはないけど酷い傷をさらすことになるってことだろ。


「私は……アンタに負けているのよ」

「は?」

「たぬちゃん、あの時は仕方ないと思うけど」

「それでも、私はアンタに演技で負けたままではいれないの」


 何やら僕と深い溝があるみたいだけど一切に覚えていないから反応に困るなぁ。たぬさんがやる気を出してくれたのは良かったわ。それを全力サポートさえすれば僕と敵対はしなくなるだろうから良かった。厄介ごとにはもう出来るだけ巻き込まれたくないからね。食べかけのケーキを……母さんに取られた。何故、僕からケーキを取ったんだって感じで視線を送ったら睨まれた。これ相当怒っているやつだ。


 立ち上がって逃げないといけないけど、足を怪我しているから急がないし父さんが後ろに回り込んで僕の肩を押さえているから立ち上がれることが出来ない。いや待ってくださいませんかね? 僕は何も悪いことはしていないから……怪我しているから説教だけはしないでほしいんだよ。母さんは「ごめんなさいね。二人は帰ってね」と優しく微笑んでいたがそれが今は怖すぎる。父さんは怒っていないと思いた_「私たちで説教をしないといけないからね。聞きたくないでしょ」と優しい声で言った。二人とも怒っているからヤバいわ。



◇◇◇

[原 たぬき視点]


 藤咲のご両親が何やら説教をしないといけないということだったので私と雪ちゃんはお暇させてもらったわ。ものすごく助けて欲しそうな表情をしていたけども私はそれを無視して雪ちゃんの手を取ってから家を出たわ。雪ちゃんの手はすべすべしていて柔らかいからずっと握っていたいわ。私は……こんな綺麗な手をしていないから誰からも褒められたことはなかったのよね。あのクソ虫は褒めてきたけどもね。


「たぬちゃん……大丈夫?」

「大丈夫よ。私はがんばれるから」

「サキくんのことも大事だけど、最初の友達のことも心配だよ」


 なんて優しい子。これ以上私をどうしようってのよ。クソ虫……ユウくんの前で演技出来るかしら? 自分を騙していたのに、それを雪ちゃんに壊されてしまったからもう無理かもしれないわね。と言うか彼は“友達”として認識されていなかったのは嬉しいわね。彼が最初に雪ちゃんと遊んでいたし、守っていたからてっきり“最初の友達”だと勝手に思っていたわ。ふふふ、勝ったわ。初めて彼に勝てたわね。私はここまで単純だとは思ってもみなかったけど。


 次は演技で彼を認めさせてやるわ。ただ、あの女の件を終わらせないと行けないわね。あの女は藤咲を騙したわけだから少し気を付けておかないといけないわね。

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