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53話 佐藤裕太との勝負? 3

 断ったら佐藤に怒られたんだけど、理不尽じゃねぇかよ。だって顧問が3点取られたらって話だし、たった1点を獲ったくらいで僕に出てこいとかふざけているんだろうって思うわ。仕方ないが僕が出ないと納得しない観客も2名ほどいるみたいだしここは出てあげる訳ねぇだろ? コート近くまで行って大声で僕は全体に喝を入れる。敵味方なんてどうでもいい。


「何を負けたみたいになっているんだ?」

「藤咲さん、あんなもの見せられたら無理ですよ」

「そうか、なら出るしかないのか」

「サキしかいないに決まっているだろ」


 心が折れてしまっている奴に強制的にしても意味がないだろうからこの程度だとしか思わない。顧問に言って心が折れてしまっているメガネくんを交代させて……というよりかは僕が全員申し訳ないが下げてもらえるようにお願いした。一人しかいない状況なんて久しぶりだけど、佐藤ならチームを全員下げるなんてことはせずに点を決めに来るだろうな。


 顧問にお願いしたがそんなことをさせることは出来ないとのことだったので選抜は任せたので僕は先にコートの中に入ってボールで慣らすことにした。リフティングとか言うものをしていたら佐藤がやって来て「軽く勝負しようぜ」と言われたのでハーフコートで軽く勝負することになった。軽くなのでそんな熱くはならないだろうし、別にいいか。


「まだお互いに決まらないみたいだし本気で相手にしてやるよ」

「佐藤、本気ならフルじゃないと出来ないだろ」

「ならそうするか。ぶっ潰してやるよ」


 ハーフではなくフルコートですることになったので真ん中のラインに行き審判をどうしようかと二人で話していると新井先生が請け負ってくれることになった。ボールは僕が持っておりホイッスルが鳴ったら佐藤にパスをして返してもらってスタートになる。お互いに握手して「勝てると思っているのか?」と佐藤が言うがそれを無視する。


 ホイッスルが鳴りパスし合いボールはもちろん僕の下にある。佐藤は僕の動きをしっかりと見て対応しようと思っているんだろうな。佐藤……お前は選択肢を間違えてしまったんだよな。僕に本気を出させることがどういうことなのか近くで見てきたお前ならわかると思っていたけど、全くわかっていなかったらしい。確かに僕は佐藤よりもサッカーは知らないし技術もないがそれを超えることは簡単にできるんだよ?


「本気でいいんだよな?」

「当たりま__えだ。は?」


 僕は佐藤が答え終わる前にゴールを決めた。キーパーを誰かにやってもらった方が良かったと少しだけ後悔してしまった。股がちょうど開いていたからそこからゴールまで一直線で決めれた。抜かれたってことは気が付いたみたいだけど流石にゴールを決められたことまでは反応できなかったみたいだ。


 さっきのは少し卑怯だったとは思うけど油断する奴が悪いしこれくらいは反応してくれないとちゃんと本気出さないんだけど。新井先生が呆然としているので声を掛けて「今、なにした」とか言ってくるのでゴールを決めだけですよと返したらホイッスルを鳴らしてくれた。遅いと思ったけど普通に不意打ちだったからそりゃ反応も遅れるか。


 とりあえずは佐藤にボールを渡ってしまったから今度は奪ってからシュートをしないといけないのは相当面倒だな。ホイッスルが鳴ったのでさっきと同じようにして佐藤の動きを待つ。佐藤は何故かリフティングを始め僕へボールを勢いよく蹴ってきた。反射的に避けたのはいいがそれが狙いだったらしい。


「今度は俺が一点だな」


 と通り過ぎる際に言われた。煽られているのは分かっているけど、こんなことを言われたのは新鮮で少し楽しいと思ってしまった。一点くらいはいいかなとか思ったけど実力差を教えてやりたいので0点のままでいてくれないとな。敗北を認めてくれないかもしれないから心を折ることにするかもしれないけども簡単に潰れないでほしいな。




◇◇◇

[佐藤裕太視点]


 サキは固まっているからこのままゴールまで突っ走れば……少し後ろから足音が聞こえてくるから勢いよく振り返るがそこには誰もいなかった。止まってサキがあの場所にいるかを確認するがいない。ということはさっきの足音はサキで振り返った際に居なかったのは前に出てきているからなのか。俺は恐る恐るゴールがある所を見ると見覚えがある人物がただ立っていた。


 サキの目は光を失っており俺のことをしっかりと捉えているのかが分からなかった。それが少しだけ怖くて距離を置こうとするが、ゴールが近いのにそんなことをしていいのか? 今のアイツに対しては恐怖を感じるが技術や運動能力では俺の方が勝っているから恐れることはない。自分にそう言い聞かせてここからシュートを決めてやろうとボールを蹴るとしたがそこにあったはずのものがなかった。


「いつ獲った?」

「ん~お前が油断している時に」

「もう油断なんてしない」


 つまらないとでも言いたそうにサキはリフティングをしながら俺が来るのを待っているみたいだった。素人なはずのサキが簡単そうにリフティングを続けているのを見ると俺は内心では見下されていたのかと思えてしまう。友達もアイツからしたらごっこ遊びで俺を憐れんでいるだけの奴なのかもしれないと考えたくもないことを考えてしまう。


 そんなことは後で考えればいい……今はただサッカーに全力で取り組めばいい。サキのボールを奪うため力強く踏み込み地面はえぐれた。俺が来たからリフティングをやめてゴールへ向かうかと思ったがその場で俺を待っているようだった。獲れるわけないとでも思っているんだろうが俺はひたすら練習を続けてきたんだ。獲れないわけないだろ……う。


「単純過ぎる。佐藤……」

「一回阻止したくらいで油断をするな」

「・・・」


 一回だと思っていたんだ。必死にボールを獲ろうとするけども赤子のように遊ばれている。サキからの視線が段々と冷たくなってくるのを感じたが俺はそれを気にすることなんて出来ないくらいに焦っていた。サキとはいい勝負できると勝手に思っていたがそれは違っていて俺を簡単に負けすことをできるくらいには差があった。親友だと思っていたのに……対等だと思っていたのに…… ボールを簡単に獲れもしない。


 それでも俺は努力してきたから絶対に喰らいつけるとボールが獲れないなら何度でも挑めば___サキからボールが消えたように見えた。実際は反対側にあるゴールに向かって蹴ったのだった。今から走れば間に合うかもしれないと思い踏み込むがそのまま転んでしまった。軽く顔をぶつけてしまったがまだ間に合うと思い顔を上げると、ホイッスルが鳴った。


「くそ……くそぉ……くそ!!」

「まだ行けるだろ。続けるぞ」

「差が大きすぎるだろぉ」

「知らん」


 俺が嘆いていても冷めた声でサキは言い放つ。サキなら「頑張れるだろ」や「努力続ければ大丈夫だろ」って言ってくれる筈なのに……何故ここまで冷たく言える? 敵意を向けてしまったからなのか、それとも元々俺に興味なんてなかったからなのか? 俺に答えを教えてくれよ……サキィ。


◇◇◇


 やべぇ佐藤の心を折るために冷たくしたけどやり過ぎてしまったかも。うずくまって5分くらいは経つけど、一切動かなくなってしまったから僕が悪いことになるのかなこれ? 赤城も見に来ているのにさ、かっこ悪い所をお前が見せてどうするんだよと思いはするんだけどね。僕が何かを言ってしまったらこんなことをした意味がなくなってしまうわけですよ。


「藤咲くん~悪役みたいだよ。あのまま叩き潰しちゃえ」

「咲っち、ラスボスすぎじゃん。ファイト」

「応援してないだろ、お前ら!!」

「裕太くんはそのままでいいの? 藤咲くんが本気を出しているんだよ? 凹んでないで立たないと最後のチャンスだよ」

「そうだぞ。サッチは咲っちに勝てるかもじゃん」


 あの二人め……佐藤を心配しているみたいなのに僕のことは散々言いやがって。佐藤がこれを聞いてどう思うかなんて僕には一切分からないし理解したくないけど、お前なら立ち上がってくれるよな? 僕のためじゃなくて自分と応援してくれる仲間のためにさ。佐藤への応援が段々と増えてきているからここからどうなるかは__「サキ、まだ勝負は続けてくれるよな?」__と言われた。別に僕は悪役とかじゃなくてただのモブになろうとしている人間なんだけどなぁ。


「ユウ、オレ(・・)に本気で勝てるとでも思ってんのか?」


 今回ばかりは仕方ないから君たちのご要望通りに動いてやるよ。けど絶対に次はやらないからなこんな本気を出しながら演技とかは!! 筋肉が千切れているんだから物凄く痛いんだよ。

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