46話 二人の母? 1
後処理も終わったところでカフェに入ったのはいいものの、すごく怖がられているのはなぜだろうか? クー母には何もしていないし指一本も触れさせていない筈なのに。まぁ20人以上いたんだしいきなり来られたら普通にビビってしまうから仕方ないよねぇ。落ち着くまでは少しの間黙っていた方が良さそう。
「私の娘のクレンは無事なのか?」
「大丈夫ですよ」
「ほ、本当なのか? 何か失礼なことを言っていたり……してはないだろうか?」
クーさんは誰に失礼なことを言ったのか? あの学校には金持ちも居れば、普通の人もいるから他の所と変わらないとは思うが……お偉いさんの子供なんていたのかなぁ? 僕には分からないからとりあえずは「さぁ?」としか答えられない。そういえば竜樹や夜夢には言葉遣いを気をつけている生徒は見たことがあるな。
あの二人には護衛が四六時中、付いているから何か無礼を行おうとすれば制圧されるだけだからその時点で学校には居れなくなるだろう。そういうことを考えると何も失礼なことはしていないってことになるけど何か違うような気がする。
「私に出来ることならなんでもするから娘だけはどうか!!」
「はぁいぃ!? 落ち着いてください。ここはお店ですよ」
「あの子は命に変えても守ると決めているんだ」
「何か勘違いしてません?」
取り乱しているクー母をなんとか落ち着かせることに成功はしたが僕はものすごく疲れた。僕はあの家の血縁者ではあるが……当主になれる資格は普通に除外されている。あのジジィが勝手に次期当主だとか言っているだけで守友家、守枝家、子守家、友楼家などが消えないと無理だ。
代々当主を務めて来ている守友家には正当な継承者がいるんだからわざわざ他の家の人間を当主にする必要がないんだよ。竜樹から派閥があるから気をつけておけと言われているから警戒はしているけど、今のところはどの分家も動いていないから何かする必要性はないだろう。
「つまり本来は継承権はないと?」
「そうゆうことですよ。勝手に持ち上げているだけ」
「他は継いで欲しいと思っているんじゃないのか?」
「オレが継ぐ気がないですよ。ただ家族や大切な人を守る為に必要なものではありますが」
ジジィに宣言した通り僕は一切あの家のことを継ぐ気はない。だが普通に使える権力はバンバンと使っていくつもりではある。特にあの守友家関係にはそれで対抗しないと……周りが傷ついてしまっては意味がないからな。まぁ個人でのし上がっているやつは直接潰すしかない訳だからどうしたものかと悩むがな。
そんなことは忘れていても別に問題がないことだけど、今はこの状況をどうにかしないといけない。対処に追われていて考える暇がなかったが……色々と問題が起きるのが早過ぎる。ゴリ先輩のことは100%あの竜二が黒幕だろうけど、今回は大人しくしているとは思う。
あのメイドのレベルが高いからおそらくは数名は学校に紛れ込ませているだろう。この前で刑務所にいた奴がどうやって集めたのかは気になるが……考えて仕方ないだろう。僕は本当に大切な人だけを守れるだけでいいからどうでもいいことは極力したくない。
「落ち着いたなら今後のことを話しましょう」
「よろしく頼む。私からの情報は二人は父親は同じだ」
「今日で告白をしている筈です。何やら邪魔が入ったようですが」
「真実を伝えた方がいいのだろうか?」
それは知らんとは言えないなぁ。僕なら自分でどうにかは出来るようにするけど、他は違うからそこのところをどうすればいいのかは一切わからない。あなた方に何があったのかは知りませんし教えてもらってもどうこう出来るような力はないんですよ。
コーヒーを飲みながらこれからのことを考えるがようと思ったら誰かが僕らの座っているテーブルまでやって来た。あのメイドさんではなくスラッとしている黒髪ロングの女性だった。どちらさんかは分からないので僕は黙っていると……
「久しぶりにこっちに来たと思ったら若い男を連れているとはね」
「君には関係ないだろ」
「あるわよ。私の娘がアンタの子を好きって言っているんだから」
「それは知っているから連れ戻しに来たんだ」
おや? これってさもしかしなくても修羅場って奴じゃねぇか。店員さんがこっちを凄く睨んで来ているからここで喧嘩をしないで欲しいんですが、外に出るしかないよね。店員さん、店に迷惑をかけてすいませんでした。普通に出ますのでさっさと出て行けオーラを引っ込めてくれませんかね?
今回のことで何かに首を突っ込むことはやめておこう。こんなことになるくらいなら普通に二人のことは無視しておいてしとけば良かったと思ってしまうわ。
とりあえず二人をカフェから個室で防音室がある場所に連れて来た。喚き散らすかと思っていたけど、そんなことはなく普通にお互い黙ったまま一言も喋らず無言のままお互いを睨み合っている。そんな二人に挟まれている僕は放置して注文をする。ここの料金は結構高いけどもあのカフェにいるよりかは断然マシだ。
「はぁ……ごめんなさいね。関係ない貴方まで巻き込んで」
「別にいいんですが二人には話すんですか?」
「アンタ、こんな幼い子にあのことを話したの!!」
「ち、血が繋がっていると言うことだけだ」
「それを赤の他人に言っちゃあダメでしょうに」
うわぁ、何かまだあるみたいだけど絶対に聞かないようにしておかないと何かをぶち込まれてしまうなぁ。絶対に嫌だから耳を塞いでおこう。これ以上、この一家の家庭事情に首を突っ込むことはしたくない。相当なところまでは突っ込んだとは自覚しているけど、もう本気でこれ以上はいやだ。
そして頼むから僕を解放してくれませんかね? あとは親御さんで話し合えばいいと思いますが……その後でお子さんも含めて家族会議でこれからをどうするとかをですねぇ。チー母は「私は別に反対じゃないのよ」と言った。クー母は目を見開いているがチー母はそれを無視するかのように続ける。
「結婚はさせてあげれないけど、一緒にいることくらいはさせてあげれるでしょ」
「君のところも反対していたんじゃ」
「あら、私はいつでもウェルカムよ。アンタを含めてね」
「だったら……」
めっちゃいい人だけどおそらくは父親の方に問題があると思っていたが次の一言で全てが吹き飛ばされた。「アンタが反対をする限りは私達も反対するわ」と堂々と言い放った。クー母が反対するからチーさんの両親も反対し続けるのか。娘に恨まれる可能性があるのにそんなことが出来るとは……すごいと思う。
「私は……逃げたんだぞ」
「ふ〜ん、だから何?」
「お前達の……幸せな姿を見て嫉妬する自分から目を__」
「それでも私達は家族の席を空けてあるわよ。アンタがどこかに行ったとしてもね」
「くっ……」
すげぇ感動できる訳ねぇだろうが!! 普通なら感動できるような場面だとは思うけどさ、意味がわからないまま放置されている僕の身にもなって欲しいものだね。金だけ払って放置して帰るぞ。明日のこともあるし……もう本当に帰ろうかなぁ? 二人の母親がお互いに抱き合っているところを見せられる赤の他人の僕ってどんな絵面だよ。