44話 タヌキと死神? 1
訳あって商店街を一人で歩いていたら路地裏で今朝に見たメイドさんが頬から血を流しているのが見えてしまったので仕方なく助けに入ったが拳銃を持っていたのにはびっくりしてしまった。日本じゃ中々手に入らない筈のをチンピラ? が持っているわけがないと思って左でキャッチ出来るかを試したら出来た。
本物とは少し銃弾が違うようだから良かったけど、本物は絶対に素手で掴むなんてことは出来ない。試したことはないから適当言うがそんなことが出来る奴は人間を辞めていると思う。まぁそんなことはどうでもいいか。メイドさんは……無事みたいだから助かりはしたんだ。顔に傷がついてしまったけどこれくらいならあとは残らないだろう。
「咲人様は、何故ここに?」
「面倒ごとの処理をしようと思って」
「知っていたのでしょうか?」
「まぁ自分で突っ込んできたことだしね」
「なるほど……侮れませんね。警察と救急車をお呼びいたしますのでお帰りください」
僕は言われた通りにその場から離れたが帰ることなんてはしない。メイドさんも何やら分かっている様子だったから一戦やらないといけないと思ったがそんなことがなくて良かったわ。再起不能には出来るけど、こっちの出方をしっかりと見るようなタイプだから時間はかかる。
さて今日、この辺にクーさんの親が来るって情報だったんだよなぁ。顔や名前は知らないけど車のナンバーは知ってるからそれっぽいのを見つけたら少し話をさせてもらおう。僕は足止めをするのが役目だし、別に殴られても抵抗しないでいれば誰かが警察を呼んでくれるだろうからそれで時間が稼げる。
「そこの君、すまないがこの学校の生徒だよね」
「はいそうで_デカっ!!」
身長が高いから驚いてしまった。明らかに日本人じゃないのに日本語も上手いなこの人。クーさん、お父さんがこんなにデカくてムキムキならちゃんと前もって言っておいてくださいよ。しかもスキンヘッドとか絶対に強いのは確定じゃないか?
素人の足止めくらいならいくらでも可能ですけど、プロ相手は時間は長く持たないですからね。絶対に終わらせて欲しいですよ。あっちは雪菜さん達に任せているから問題が……何かあれば対処はしてくれるはずだからこっちに集中しないといけないな。
「君は……なるほど。娘の場所に案内をしてもらおうか?」
「今は無理ですね」
「それなら私を気絶させるか?」
「いいえ、僕の目的は足止めですから」
「娘は告白をするんだね。彼の子に」
は??? 少し待ってくれないでしょうか? 一体全体なんの話をしているだか分からないんだけど。そのすごく気になるようなことをほざいてくれたなぁ。彼の子ってことは両親は面識があった上で反対していたのかよ。あるかもしれないとは思っていたけど、そんな個人的な付き合いとは思わないだろう。
「退いてくれ。娘を不幸にしたくないんだ」
「どんな過去があろうがここを通せませんよ」
「二人は血が繋がっていると言ってもか!!」
「さっきから情報が多いわ」
「がばっ」
出てくる情報が多すぎて思わず殴ってしまったけど僕は一切悪くないよ。チーさんには外国人の血は混じっているような感じではなかったんだけど、それでどうやって血が混じ__人工授精がある。クーさん側に日本人の血が混ざっていてもおかしくはない。ならなんでこんなにも父さんとクーさんは顔のパーツが似ているんだ?
みぞおちを狙って殴ってしまったが……大丈夫なのだろうか? クーさんがものすごく強いと言っていたから問題はないと思いたいけど、殴ったところを押させたまま動かなくなっているんですけど本当に大丈夫なんだよね!! これで大丈夫じゃなければ先輩のせいってことにしておこう。そうしよう。
「あの〜大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫に決まってるだろう。坊や」
「なっ! 逃げ足が速いな」
「このまま、巻かせてもらうよ」
あのタヌキオヤジめ、痛がるふりをして僕が近づくのをずっと待っていやがったんだな。仕方ないか「ウワァーアレハボクデモオイツカナイカラアキラメヨウ」と言ったので絶対に追いつかないとあの人は思うだろう。10分くらいしか稼げてないけど、思う終わってるよね。確認するかぁ。
「あ、雪菜さんそっちは終わりました?」
『終わってないよ。先輩達が固まってしまってるんだ』
「そっちに親が向かって行ってると思う」
『佐藤くんのグループにいる原さん? が乱入してるから止めに行って』
え〜あのタヌキを止めないといけないとか嫌だ。そうなことを言えたらいいんだけど雪菜さんの頼みだし聞くことにするかぁ。「じゃあ親御さんの方追いかけるからよろしく」と言って電話を切り軽く準備運動しながなら集中する。切る直前に原さんもお願いと言われた。
距離は相当、離れているから流石に本気じゃないと追いつかないからしっかりと準備運動は必須だな。にしても原さんとか面倒な奴よりもあの人を足止めしておいた方がいいだろう。面倒な奴を雪菜さんに押し付けた形にはなるから後で何か奢るとかしておこう。
◇◇◇
[赤城沙耶視点]
藤咲くんが電話を切ってクレン先輩の親を追いかけて行っているってことを雪菜ちゃんから聞いたけど、正直に言って私達の方を助けて欲しい。あの原さんとかいう人が急にやってきて「裏切り者!!」とか面と向かって言うものだから先輩達が固まってしまったよ。空き教室も借りて千尋先輩にバレないようにしたのに。
クレン先輩の告白を邪魔してくれちゃって、私も乗り込んで行ってやろうかと思ったけども雪菜ちゃんに止められちゃったから何もしていないだけだよ。私だったら遠慮なくぶっ飛ばしてやるよ。そういえば原さんって私が佐藤くんの近くに居た時は一切来なかった筈なのに急にどうしてなんだろう?
「沙耶ちゃん、どうする?」
「そうだねぇ」
「大丈夫だと思うけど、サキくんだし」
私たちは離れた場所からビデオ通話で観ているから速く入ってはいけない。助けに行こうにも行けないなんてもどかしいけど、雪菜ちゃんが大丈夫だと言っているから何か策があるとは思うよ。ただね……もしかして藤咲くんに頼ろうとしていないのかな?
私は一旦考えることを放棄してスマホの画面を見ると原さんがワーワー騒いでいるけど、ほとんどが同じ「裏切り者」「ユウくんを傷つけないで」を繰り返して言うだけになっているから何も中身はないと思うかなぁ。正直に言って確かに佐藤くんのことは今も好きだけど、間違っていることを正したいとは思わないのかな? 対立しても私は二人の味方をするからね。
『・・・あんな死神にどうして唆されたの!!』
「雪菜ちゃん……」
「サキくんのこと。助けてくれ後に言われた始めた」
「保育園時代の?」
「それは違うと思う。中学でも呼ばれていたことがあるって言ってた」
中学時代で藤咲くんのことを知ってるなら話は違うけど、私的には知らないと思うかなぁ。原さんは藤咲くんと佐藤くんに助けられたんだよね? 助けてくれた人のことを死神なんて言うかな? 私には分からないから何も知らないけどね。
「雪菜ちゃ__
『あの人は貴女達を利用する悪だからユウくんの所へ戻ってきて』
_ん。落ち着いてね絶対に何もしないで」
「私のサキくんをよく知らないで……」
「お願いだからぁ落ち着いてぇ」
校庭から空き教室に向かおうとする雪菜ちゃんを必死に止めようとはするが意外と力が強くて引きずられてる。藤咲くん〜早く来てぇ。