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43話 メイドさんの暇と癒し

◇◇◇

[メイドさん視点]


 はぁ、どうしてなのでしょうか。彼に捕まってしまった際に咲人様は一度気付いていないふりをしようとしたはずなのに何もせずこちらと話すのを選んだのでしょう。よく考えてみればそんなことをしなくても気になさらない方な筈なのですが……一体どうしてなのでしょうか?


 現在敵対していない人物であればその時の気分で決めるお方かと思っていましたが雪菜様の存在で変わるみたいですね。竜二様は化け物とお呼びしますので無視をすれば良いものをと今朝までは思っていました。確かにアレは気になって仕方なくなります。こちらのことを一切気にしていない様子なのにちゃんと観てくれていると分かってしまっては流石に……ギャップがすごいです。


 私は咲人様のことを好きにはなっておりませんが今後どうなるかは分かりませんので楽しみですね。お祖母様には「坊ちゃまにはあまり関わらないように」と言われていたのをあの時に思い出してしまいましたね。お祖母様と竜二様が言っていたことがようやく理解できました。


「さて今日はもう暇をいただいてしまったのでどうしましょう」


 竜二様から「今日はもう帰っていい」と言われて自宅に帰ってきたのはいいのですが……やることがありませんね。今回の任務が失敗したから暇にしたのかは分かりませんがいらないことをしてくれましたね。私への罰であるのであれば「休み」にするのは正しい判断だと評価してあげましょう。


 私は妹に会いには行けませんしお祖母様に会いに行けば相当怒られることでしょうね。訓練をしようにもあの二人は学校に行っている頃ですからやることがなくて暇すぎますね。丁度良い暇つぶしがあるのをすっかりと忘れていました。準備をしてから早速出発しましょう。




「ここですね。失礼いたします」

「あらメイドちゃん久しぶりね」

「はい。いつもの所は空いておりますでしょうか?」

「空いてるわ。注文もいつものにしておくわ」


 私が来たのは喫茶店“モリえん”というところです。暇つぶしに良い理由といたしましては守友家の分家になる守枝(もりえ)家の夫婦が経営しています。私はここでやることはすでに決まっているのです。嫌がらせをするためになんて来てませんのでご安心ください。


「やはりここからの景色は最高ですね」

「何もないわよ? 見えるとしたら猫のお尻くらいかしら」

「それが良いのですよ」


 モリえんに来たのは入ってから右奥にある席にある小さなお尻を見るためなのです。(よう)様は引かれた顔をしておりましたが気のせいに決まっていますよね。猫様になんては微塵も興味はありませんがこのお尻を見た時から私はもう虜にされてしまっているのです。


 何がいいかと聞かれては答えれるのは一つだけになります。猫のお尻のフォルムが美しいのです。まぁ流石に本物ではジッと見ていれば即逃げられるので観察を出来た試しがありません。いつかはリベンジをしてやると思ってはおりますがいつになるのやら。まぁ眺めるのは程々にしないと苺タルト、コーヒーが美味しくなくなってしまいます。


「テメェ何故ここで食事してんだぁ!!」

「相席でもされますか?」

「するわけねぇだろがよ。舐めてんのか!!」


 また面倒な輩を引き込んでしまっていますが今回はどんなお方なのでしょう。大声で怒鳴り付けてくる紳士の方は一体どこのどちら様なのでしょうかと質問をしようとしたら「お前は帰れ」と厨房からいかにも人を殺めてそうな人がやってこられました。油断している隙にGPSをこっそりと付けました。


 元治(げんじ)様がやってきて彼に対して怖かったのかさっさと帰ってしまいました。元治様は相変わらずに顔がお怖いですね。先ほどの彼が来ますのでこんなにも空いているのですね。事情を聞いてもおそらくはお答えしてくれないでしょうから私が直接調べるとしますか。私の癒されることを邪魔をする方には地獄を見てもらわないといけませんね。


「すまねぇな芝谷さん」

「警察にはご相談はされたのでしょうか?」

「したのはしたんだが……何も対応をしてくれないんだよ」

「おそらくは守枝家が手を出しているのですね」

「陽さんと無理に結婚したからだろうな」


 元治様は陽様との結婚を猛反対されていたところ、朝晴(ともはる)様が許可を出したことにより出来たのですが守枝家はそれがいまだに許せないのでしょうね。それよりも咲人様にはこのことを知られていないかを把握しておかなければいけないのです。


「咲人様にこのことは?」

「言っていない。そんなことを言ったのであれば即潰されるだろ」

「いい判断かと思います」


 咲人様は今のところ、守友家の時期当主に一番近い位置に居られる方なので分家くらいなら簡単に潰せる権力はある筈です。我が主の竜二様にご相談出来るように取り合ってもいいのですが、権力は剥奪はされていますので元治様のご実家は手を引かないでしょう。何やら良くない噂も聞くようになりましたしね。


 ご子息である竜樹様に取り合っても何もしてくれはしないと思いますので、論外でしょう。夜夢様につきましてはトラウマがあるので元治様の所には近づかない筈なので意味はないでしょう。部下の情報によると以前の食事会でナイフとスタンガンを仕込んでいたそうなので、絶対的に無理でしょう。


「もしかしたら閉めるかもしんねぇ」

「それは困ります。猫のお尻が見れなくなるのは」

「タダで譲るぞ」

「魅力的ではありますがこの店あってこそです」


 私は照れくさいセリフを吐きながらテーブルに料金を置き店を出ました。さて外に出たのはいいのですがしっかりとGPSが機能してくれたらいいのですが……相手が熟練者なのかも知れません。わざと私を泳がせている可能性も大いにありますので油断は一切せずにしましょう。




 私はGPSからスマホに送られる位置情報を頼りに走って相手がいるところまで向かっています。タクシーを使ったのかは分かりませんが、5.7km以上はある道をビルの屋上を飛び越えながら彼がいる所まで急ぎます。これ以上何かをされては本当に店を畳むことになってしまいます。


 スマホの位置情報では現在いる地点から2時間くらいは動いておりません。流石に気づかれてしまってGPSを捨てられた可能性の方が大きくなってしまいましたが途中で諦めるわけにはいきません。私の娯楽の為の犠牲に彼にはなってもらいましょう。今は私が正義で彼が悪と決めつけます。


「居ましたね。誰かと一緒なのですか」


 なるほど、待ち合わせをしていたから二時間は動いておられなかったのですね。彼らはド素人なのは待ち合わせと周囲への注意不足で分かりました。殲滅を開始した方が良いかもしれませんが8階もあるビルから飛び降りようものなら一人くらいは逃しそうですね。


 逃げられそうですが、まぁ合計で9人だけですので何も問題はないでしょう。私は軽く準備運動をしてから飛び降りました。その際に衝撃を和らげる為、壁を蹴りながらジグザグにおりました。着地点の近くにおられた方をみぞおちを的確に狙い再起不能に致します。軽くは浮いてしまいますが男性なので何も問題はありません。


「テメェ、付けられてきてんじゃねぇか」

「確かに誰もいなかったんすよ」

「お話を出来るほどに余裕があるとは恐れ入ります」


 ボスだと思わしきスキンヘッドは最後にするとしまして他の7名は早めに片付けましょう。何かを隠し持っている可能性がありますからね。一人一人片付けていっている最中に店にいた方が何かを準備しているのは気付きましたが先にもう一人を片付けます。


「さて残りはお二人になりましたが降参されますか?」

「するわけないだろ。おい、やれ」

「初めて使うので外すかもしれないっすよ」


 秘密兵器がなんだとしても先に動けなくすれば良いだけで______す? 彼が構えた物を認識出来た次には何かが頬に掠めました。まさかのハンドガンを出してきたのは予想外ですね。しかもサイレント付きとはしっかりとご準備をされていらっしゃいます。


 銃弾を避けるくらいであれば簡単なので良いのですが……流石に近づいたりは出来ないので詰みになりますね。このままでいるのは癪なので弾切れを狙う方がいいでしょう。何もせずにいると弾はそのままになりますので何かアクションを起こさなくては。


「おっさん達、犯罪だぞ」

「はっ! このガキを撃て」

「ガキがいる方は商店街っすけど知りませんからね」


 学校帰りであろう咲人様が路地裏に入って来られて標的にされてしまいました。私はお守りする為に全力で走ろうとしますが銃弾の方が遥かに速いので発砲されてしまいました。今度は正確に頭を撃ち抜けるでしょう。


 咲人様であれば避けるのは簡単でしょうが避けてしまったら無関係な人々まで危険に晒してしまうので避けるなんて選択肢は無い筈です。何かで防ぐことにかありませんがお待ちしているものでは貫通してしまいます。・・・申し訳ありません、花蓮様……


「イッテェなぁ」

「えっ」

「はぁ?」

「咲人……様?」


 私は咲人様が死んでしまうことを想像しましたが左手を痛そうに握っています。もしかしてですが……受け止めたってことはありませんよね? ないと言ってください。私の思いは無視されたらしく「止められない訳ねぇじゃん。そんな粗悪品」とおっしゃて弾を捨てます。


 咲人様以外で絶句している間に銃も持っている方の腕を折り、銃を回収した後にそれでスキンヘッドを殴っておりました。ちなみに私はそれを見てドン引きをしてしまいました。こんなのにどうやってバレずに色々と情報を集められるのでしょうか? はっきり言って無理ですね。・・・戻って癒して欲しいですね。暇ではなくなったのでいいのですが。

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