42話 超人メイドさん1
昨日は雪菜さんと話した後、竜樹に電話してクーと呼ばれている人についてのことを聞いたら相当な大物だった。海外では有名人の娘で今回の留学は視野を広めさせるためのものだったのにチーさんに恋をしてしまったので連れ戻そうとしているらしい。竜樹……守友家の情報なので確かなものだろう。それよりも学校行きたくない。昨日のことが広まっていることを宇恵野から連絡があったんだよなぁ。
「サキ、雪菜ちゃん来てるよ」
「着替えているからリビングにでも通しておいて」
「もう通してあるからね」
母さん、流石ですね。仕事が早くて助かっているけどノックはしてほしいかな。学校に行くのがめんど過ぎるけどしっかりと行かないと雪菜さんにも二人にも悪いから準備しないと。とりあえずはクーさんの情報は集まったからいいとして……チーさんの情報がないのはどうしたものか。
「サキくん、入るね」
「リビングで待ってくれたら良かったのに」
「パパがね土曜日、空いてるかを聞きたいらしいの」
「・・・空いてない。佐藤に部活に呼ばれてるから」
「えっなんで」
それは僕が聞きたいんだよなぁ。部活がある日ではなくてない日に呼べばいいのに何故、部活をやる日に呼ぶのかは分からない。普通に一対一でやると思っていたのに。まさかチーム戦でもする気じゃ__ないな。僕の予想が正しいのであれば新井先生が関わっているだろ。
新井先生に問いただしてもいいけどスルーされることがあるからそんなことは出来ないんだよな。そうなると佐藤がちゃんと説明するまで待たないといけないな。僕からの接触は出来ないことの方が多いからどうにも出来ないんだよ。そうなると僕よりも他の人に任せた方がいいだろうな。
「サキくん、行かないと遅れるよ?」
「そんな時間なのか。雪菜さん行こうか」
遅刻するわけには行かないのでカバンを取って家を出る。登校中は雪菜さんと会話していたけど、佐藤と女子三人組が一緒に登校していたのを見かけてしまった。雪菜さんは明らかに嫌そうにしているが僕はなんとも思わない。あまり見ていると気づかれると思ったので雪菜さんに少しだけ遠回りをしようと提案してみた。幸いなのかは分からないけど僕らの前にいたので気付かれずに移動できた。
「そうしよう。佐藤くんは嫌い」
「悪い奴ではないんだけど……嫌いなら嫌いでいい」
「理由は聞かないの?」
「何かあったんでしょ。なら聞かないよ」
「うん、いつか話すから」
父さんや母さん、雪菜さんとその家族なら無理に話す必要はないからね。他は別に聞きたくはないけど、あの子なら聞くだろうから聞いて答えるだけなんだよ。今はそんなことはどうでもいいか……誰か僕らをつけているような気配がするからそれを解決しないと。いつからいたのかは分からないけど、家を出た時からだろうな。
ジジィの駒ではないとは思うけど、竜二あたりは何かと調べようとするタイプって前に元奥さんが言っていたような覚えがある。僕らが遠回りしてからじゃないと気づかないってことはあのメイドさんだろうなぁ。ここで何かアクションをとってもいいけど雪菜さんを巻き込んでしまう可能性があるからどうしたものか。
「サキくんどうしたの? さっきから難しい顔をしているけど」
「いやぁ後をつけられているみたいでさぁ」
「逃げた方がいいのかな?」
「無理かな。多分、追いつかれる」
守友家に仕えている人達なら人外だと考えていた方がいいから変なことはしない方がいい。みかんさんに僕がもし逃げた場合は追いつかれるかを聞いたことがあるから間違いない。その時に「坊っちゃまがお一人である場合は逃げれます」と言われたがそんなことはないだろう。
まぁみかんさんの話が本当であれば雪菜さんと一緒の時は逃げきれないって意味になるからここは大人しくしておくのが一番だ。何か変な出来事が起きないのであれ__「一体何をしているんだ!!」と聞き覚えがある声が後ろから聞こえた気がするがそんなことはないな。僕らは別のルートを選んだ訳だしこんな所で出くわすことはない。そう思いながら後ろを振り向くと、佐藤と女子三人組がいた。
しかも佐藤は僕らの後をつけていた人に関節技を決めれているように見えた。隣にいる雪菜さんの方を見ると青筋が浮かんでいるので、そっと視線を元に戻してどうしたものかと考える。このまま放置して行くことの方が簡単ではあるがそんなことしたら、あの面倒な原さんが学校で絶対に絡んでくるのは予想できる。アレやコレや言ってくるんだろう。
「大丈夫で……したか。サキと雪菜ちゃん」
「よぉ佐藤。昨日ぶりだな」
「サキは鈍ったのか?」
「お前に関係あるのか。いや全くないだろう」
「また貴方ですか!! ユウくんに構って欲しいですか!!」
うわ〜すげぇうざい。あの時に参加せずに傍観に徹していればよかったなぁ。何もしない方がこんな変な生物に関わることなんてなかったのに。よし、めんどくさいからコイツは無視をしよう。ワーワーとうるさい生物は放っておいて、佐藤にその人を離すように言った。僕がそう言うと「自作自演だったのか?」と聞いてくる。
コイツはアホなのか? そんなことをする必要がないってことはお前なら分かる筈なのに何故そ……佐藤と一緒にいる女子の一人に見覚えがあるような顔がいるな。僕は邪魔な生物を退かしてその女子に近づく。佐藤と生物がうるさいけど、とりあえずは無視してジッと観察する。顔を逸らされたがそんなのはお構いなしに見る。
「やっぱりどこかでみ__うぉと、危ないな」
「藤咲咲人様、流石です。今のを避けるとは」
「佐藤しっかりと抑えておけよ。さっきの変装な訳ね」
「私を抑えられる筈がないではありませんか。それと変装ですね」
服装も体格も顔のパーツさえ変えれるのはもう魔法の域な訳でしてね。僕らをつけていた人の正体は竜二の付き人……メイドさんだった。只者ではないとは思っていたけど、あの時に会った二人よりか全然強いわ。下手に攻撃をしたら腕を千切られそうな気がするので大人しくしておく。
「彼女を狙ったら殺されますね」
「ん、殺しはしないよ。両親と雪菜さんに嫌われたくないし」
「大人しく退かせていただきます。それでは」
忍者みたいに消えたメイドさんと先程までいた女子が逃げている。まぁ別に追う意味はないから放置していてもいっか。そんなことよりも速く学校に向かわないと遅刻するから雪菜さんをお姫様抱っこして安全に走った。学校には間に合ったのはいいけど、新井先生にすごく怒られた。
新井先生に正門で怒られた後、教室に入ったら腹部に強い衝撃がきた。何も身構えていない状態だった為か普通に倒れて頭を強く打ってしまった。僕を倒した人は「えぇ〜そこはしっかりとしないとぉ」と責任を押し付けてきやがった。先輩Aこと西さんが僕に突撃をしてきたのだった。
昨日の感じ的にね、一時は来ないと思っていたんだけど来やがったよ。そこはテンプレで来ないのが一番いいんじゃんか。そんなことより退いてくれないから立ち上がれないし、遠くにいる雪菜さんがものすごく並んできているので退いてください!! この教室だけ気温がマイナスとかになっているんじゃないかと思えるほど寒いんですよ。
「そろそろ退かないと刺されるかもしれないね」
「何用ですか? 西さん」
「おや? いつものように先輩Aとは呼ばないのかい?」
「まずはオレの質問に答えろ」
「へぇ〜面白いね。特にこれと言って用はない」
じゃあなんで僕に突撃してきてダメージを与えてきやがったんじゃテメェは。僕が睨んでいると手を差し伸べてきた。先に立ち上がっている先輩Aは起こしてくれるみたいなので手を取って起き上がる。立ち上がった瞬間に先輩Aの顔が近くになったが……すぐに右横からまたもや強い衝撃があり、僕は気を失った。これはあのメイドさんよりも強いわ。
◇◇◇
[メイドさん視点]
私は咲人様の尾行から離れて主の下へ帰還しました。私の主、竜二様は会社の社長室のデスクでお仕事をなされておりました。軽くお辞儀をした後に今回の任務を報告しました。私は報告を終えると竜二様は大声で笑いました。一体どこに笑うところがあったのかをお聞きしたいですね。
「よほど咲人が怖かったのだな」
「いいえ、怖くなんてありません」
「くぅくっく、お前が言うなら信じよう」
竜二様は全くと言っていいほど信じておられないようですね。私は竜二様が言った通りに怖いです。咲人様はこちらのことを生物……いいえ物体だと認識しているのだと思っております。咲人様とやる場合は無力化ではなく冥土に送られることになるでしょう。
私は自分自身が超人であるという自覚はありますがあの方はそんな次元ではないことは確かです。咲人様の弱点は花蓮様やあのクソ男、雪菜様とそのご家族であるのですが、狙えばこちらが確実に潰されます。それを知っているはずの竜二様は雪菜様を狙うのはよく分かりませんね。