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40話 藤咲家、恒例“正”コイントス 1

 反省文を書き終わって家に帰ってきた僕はソファーに倒れ込んだ。制服のままなので母さんに軽く怒られたけど、今は無視をする。クーさんは同性愛者なのは今日で分かったけども……チーさんがどうなのかは知らないからどうするべきかな。佐藤に告白させて玉砕させるってのが早いんだけど、それをよしとはしないだろうから諦めている。雪菜さんに連絡を入れて今日電話で話せないかを聞かないと。


「制服にしわができるから着替えなさい」

「イッテ。分かったよ」

「ショートケーキあるから食べていいわよ」

「晩御飯の後にね」


 流石に軽く叩かれたので着替えることにした。本気で怒られる前に着替えておかないとおかずが1品減るからなぁ。さっさと着替えてソファーでゆっくりしておこうっと。アレだったら母さんの手伝いをするのでもいいけど流石に下準備は済ませているだろうから無理か。着替えてリビングに行きソファーに座る。


「そうだ母さん」

「ん?」

「同性愛ってどう思う?」

「・・・裕太くんのことが好きってこと?」


 いやそんな訳あるか。佐藤のことは好きな部類だけど恋愛対象ではない。さっきの言葉だけじゃ説明不足すぎたのでクーさんとチーさんの関係を話した。そしたら母さんは「サキがする必要性ってどこにもないと思うけど」と言われた。あー佐藤との今の状態も説明しないといけないんだったぁ。


 僕は今の状況を説明したら母さんが出掛けようとしたので全力で止める。流石に佐藤家に突撃されるのは僕としても困る。僕は必死に止めるが「母さんは話し合いに行くだけだから離しなさい」と額に血管を浮き出させながら言う。説得力が皆無すぎるからさ、落ち着きましょうね。


「ただいまぁ。サキ、母さんに抱きついて何やってるの」

「父さん、母さんが暴走してるから手伝って」

「あなた、サキを引き剥がして」

「二人とも止まって」

「「イッテ」」


 母さんと僕は仲良く父さんからのチョップをくらった為、一時的に止まった。父さんにも状況を説明したら「難しい話だ。サキの言う通りに玉砕した方がいいかもしれないが」と言ってくれた。佐藤との件は一切触れないので特には気にしていないのだろう。父さんが理性的で良かったわ。


 母さんは今は大人しくしてくれているけど、おそらくは機会を伺っているだけだから油断はしないようにしておかないといけない。母さんを警戒しながら僕と父さんはどうしたものかと話をして、玉砕はしないことに決めた。それのせいで二人の関係にヒビが入る可能性があると言われてしまったから告白大失敗作戦はやめておくことにする。


「お母さんは晩ご飯の準備をして」

「・・・は〜い」

「お父さんは裕太くんをバットで殴__イッテ」

「あんたもそっち側かよ!!」


 母さんにご飯を準備させて自分は殴り込みに行こうとか野蛮人かよ。父さんはいつの間にバットを取り出したのかが分からなかったけど、マジックをしたってことにしておこう。頭を叩いて止めたのはいいけど、ご立腹なのは意外だったわ。冷静に話を聞いていてくれたと思っていたのに。


「サキは殴り込みは嫌なんだね?」

「そりゃそうでしょ」

「お父さんとお母さんは殴り込みをしたい」

「みたいだね」

「ならアレをするしかない」

「あなた、アレをするのね」


 アレって一体何が始まるのさ。あと今日はテンションが高い日なのかな? 時々テンションが高いことがあるけど何かいいことがあったのか。僕としても暗い雰囲気よりは明るい方が好きだから別にいいけど、たまについていけないことがあるからなぁ。


「「藤咲家、恒例“(せい)”コイントス!!」

「はぁ〜なにそれ」

「私たち夫婦が喧嘩した時にすることなの」

「ちなみにお母さんの方が勝率は高い」

「知らんわ!!」


 何故に僕がツッコミ役に回らないといけないんだよ。それはそうと恒例とか言っているけど僕は一切そんなことをしていたなんて見たことも聞いたこともないんだよ。あまり喧嘩をしているところを見ていないから知らないだけかもしれないけどさぁ。


 二人の楽しそうな会話が聴こえてきたので机の方を見ると。父さんと母さんは楽しそうにコイントスで使う硬貨を色んな種類を並べていた。二人の様子を見るに怒っていなさそうな気がするから今回はコイントスをするのもいいかもしれないな。


「ルール説明はお父さんの方でする」

「説明してもらわないと困る」


 我が家の恒例コイントスの意外とルールは簡単だった。

その一

『十二枚あるうちから一枚選び、裏表を決める』

そのニ

『トスする側は先に裏表のどちらかを声に出した後にトスをする』

その三

『紙に“正”の字を書けた方が勝ち』

その四

『トスする側が失敗した場合は書きている途中の“正”は消す』

その五

『1回交代で行い、楽しむこと』


 がルールらしい。シンプルではあるけど、コインは十二枚もいるのかと疑問に思うけどもツッコまないでおこう。楽しむのがルールにあるからなぁ。この夫婦が考えそうなことだけど、僕は好きだな。さてとどのコインでやろうかな。


「父母コンビで、息子一人チームでいい?」

「母さん、それどうにかならない」

「サキ諦めた方がいい。お母さんのは治らない」

「二人とも晩ご飯抜きがいいかしら?」

「「すぅすみませんでしたぁ」」

「ふははは、よろしい」


 母さんが「ご飯抜き」と言ったら速攻で謝らないといけない。この中では母さんが権力的には上なので、ご飯抜きにされたら飢え死にしてしまうと父さんから聞いた。別に自分で用意するか買うかすればいいと思うが、そんなことはしない。


 父さんいわくは、そんなことをしたら母さんを裏切ることになるからということらしい。母さんが体調不良の際は僕か父さんが家事をすることになっている。本当にここにいて良かった。


「そうだ!! 私が勝ったら二人でご飯を作って貰いましょう」


 母さんの思い付きで、1対1対1になってしまった。途中変更なんてありなの!? 父さんは何も言っていないから問題ないんだ!! せめてルール説明の時に言っておけよ。

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