3話 衝撃1
入学式が終わり晩御飯は食べに行くとのことだが……僕は守友家にお邪魔している。その理由は守友朝晴が話があるとのことで呼び出された。ジジィのことだから祝いの言葉ではないだろうな。夜夢と一緒に家まで来たのはいいけど、居間で待たされて10分が経った。父さんや母さんが昼を用意しておくって言っていたんだからさっさと終わらせておきたい。
「よく来てくれた」
「さっさと用件を話せ」
「うむ……ワシのこと嫌いすぎんか?」
そりゃ嫌いだよ。別にあの事故はじいさんのせいではないからそこは別に怒っていないんだよ。ただその後の対応でジジィのことを嫌いになっただけだからな。流石に子供を……親元から遠ざけるのはいけないだろうよ。毒親だったら分かるがそうじゃなかった訳だしな。父さんと母さんの下で産まれてよかったと思うと同時に守友家には産まれなくてよかったと心底思う。
「用件じゃが、お主……戻ってこぬか」
「いや」
「即答か。夜夢との婚約もするわけじゃしいいじゃろ」
「良くねぇよ。ボケ老人」
夜夢のことは本当に嫌いって訳ではないけどさ、結婚は違う訳だしおそらく上手くいかないだろう。僕には多分気になっている人が居ると思う。分からない理由は黒いモヤがかかっているからその子を思い出すことが出来ないからだ。その子が気になっているのはどうしてかも分からない状態で誰かと婚約とかはあり得ない。このジジィにも伝えてある筈なのになぁ。
「ワシは花蓮を幸せに出来んかったんじゃ」
「せめてその子供はってか」
ジジィ、それは虫が良すぎるって。しかも母さんは今が幸せって物凄くいい笑顔で言ってくるんだぞ? 守友家にいた時の地獄よりも父さんとの地獄を選ぶような人だ。幸せは自分で掴むことが出来る凄く強い人だぞ母さんは。だからじいさんは……母さんのことを諦めて父さんと平和に暮らさせてやれよ。そして僕にも干渉してくるな。
「花蓮と戻って来てくれぬか」
「いやだし、オレは条件はクリアしていた筈だぞ?」
僕が中学生の時に父さんと母さんの下に戻ることを言ったら突き付けて条件を受け入れてやってここで2度と暮らさないと言ったんだが、どうしてもジジィは受け入れたくないんだろうな。「あの若造に洗脳されているんじゃないのか?」と言ってくるのでムカついて長机を折ってしまった。それを見たら以降言わなくなったが思ってはいるんだろうな。
まぁそれはいいか。父さんはしっかりとしている人だし母さんが助けを求めてきたわけだしどうにかしようと動いてくれるからなぁ。あの夫婦の邪魔をするなら……マジで許さん。ということでジジィの邪魔を妨害していたしこれからも全力でしていく。最悪縛ってばぁちゃんに監視してもらっておくか。普段はばぁちゃんには敵わないから問題はないだろうな。
「咲人よ。お主は知っておるか?」
「何が?」
「結婚して10年以上も経つのに付き合いたてのカップルみたいな感じなんじゃぞ!!」
知ってるし……この前、偶々、二人でデートしているところを見たけど手を繋ぐことですら躊躇していたしね。おそらくアレを何度も近くで見ていたりしているから脳破壊? っていうのをされているんだろう。そうじゃなくても探偵とか雇っているだろうしそれで写真や動画を見せられているのかも。まぁどちらにせよ僕としては父さんと母さんが幸せならそれでマジでいい。
運命の赤い糸で結ばれているってのはあの二人のことを言うんだろうな。僕にもいるかなそんな人が……雪菜さんがいいなぁって何を思い浮かべてんだよ僕は!! ……よし話を逸らしていこう。流石にここで顔を赤くするとじいさんにからかわれてしまう。
「これだけは言っておくぞ、ジジィ」
「どうしたんじゃ__顔赤いぞ?」
「気にするな。それと家は継がんからな」
「それはどうかのぅ」
ばぁちゃんから聞いた話ではじいさんは元々こういう性格ではなかったらしい。この家を継いでからこういう性格にしたとのこと。継がないとばぁちゃんと結婚出来ないって言うから成りたくなかった当主までなってばぁちゃんと結ばれたらしい。ジジィは僕が夜夢のことが好きだとでも思っているのかな? だから当主になってくれると思っているんだろうなぁ。
「朝晴さん、サキちゃん来ているの」
「来未ちゃん……今、話してるんだけど」
「あら、ごめんなさいね」
「まぁいいけどさ、次は気を付けてね」
父さんと母さんも大分仲が良いけどこの祖父母も仲良くないか? 仮にも孫がいる所でイチャつき始めるとか……自重してくれないか。この二人はイチャつきモードに入ると2時間くらいは周りの存在を忘れてしまう。はぁ、こうなるかもしれないことは来る前に予想はしていたけども流石に早すぎませんかねお二人さん。これなら無視しても問題なさそうな気がするなぁ
帰って軽くお昼でも食べるか。晩ご飯は回転寿司だしたくさん食べれるようにお腹を空かせておきたいなぁ。なんて考えながら部屋を出て玄関まで来ると着物を着た長い白髪の女性が玄関先で立っていた。その女性は芝谷みかんさんだ。20代でも通用しそうな肌つやと若々しさで、優しそうな目つきでこちらを捉えてくる。ちなみに結婚をしていて4人の子を産んでおり……孫も……ひ孫もいる年齢不明の方だ。
「坊ちゃまではないですか」
「みかんさん、お久しぶりです」
「見てください桜が咲いています」
「来た時に見させてもらいました」
玄関先に植えてある桜の木を見つめていたらしい。みかんさんはこの時期になるとよくここで桜を眺めているから来た時にいなかったのが不思議だったが仕事を終わらせていたんだろう。ジジィが産まれる前からここにあるって話だったな。確か祖父母が60歳以上だから少なくとも7、80年はあるだろうなぁこの木は。
「この木は私の夫が植えたんです」
「え! 相当前じゃ」
「えぇ85年前になりますかね。あの時は25歳くらいでした」
今日1番の驚きなんだけど!? 110歳はいっていることになってますがいいですか? みかんさん。嘘だと言ってくださいよ。みかんさんは驚いている僕を見て「ジジババの馴れ初めなんて聞きたくないですよね。夫が先に旅立ったでの思いでしか会えないんです」とはにかんでいた。辛すぎるのでこれ以上は何も聞かないでおこう。
ここで働いている姿や他の従業員さんと話している姿を目撃しているけど、幻とかではないよね? なんでこんなにも若々しいんだよこの人。妖怪や幽霊の部類ではないよね?




