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26話 愛情? 1

「さてと……お前に何があった?」

「いつも通りだろ」


 いつも通りねぇ。今はカフェに入りユウと話す為にここに来たのはいいが来る道中で困っている人が多かったがそれを全て無視したのには驚きだった。それはお前にとっていつも通りではないのにしんどいのではないのかな。まぁそんなことを僕が気にしているのは変だろうからなぁ。何かを話してくれないってことで待つ以外の方法をとれないからな。


「サキ、俺はお前を許せない」

「急にどうした?」

「親父が無実だって知っていたんだろ」

「知っている」


 もしかして竜二の野郎……これが狙いじゃないだろうな。ユウ……裕太の父親は僕が大怪我した事件の加害者として報道された。それを無実だと僕は知っているがあの人と約束しているので何も言わずにここまできたのが仇となったな。あの時に声をあげても無視されて僕の周りへ被害が来るからそれを出来ずにいた。流石にユウやおばさんには何もないようジジィがしてくれたから問題はなかった。


 今さら真実を話しても意味がないだろうからどうしたものかな。いつも通りのコイツでいてくれるのであればそれでいいんだけど……真実を言っても曇るだけだろうから何も言えないだよな。おっさんの事を教えてあげたいのはあげたいけど、言えないからどうしようもない。ユウには「それを知らずに生きてほしい」って言っていたのは彼自身だ。


「お前の大怪我を知っているけど……」

「おばさんはなんて言っているだよ?」

「身勝手な人だって言っていたよ」

「・・・身勝手ね。確かにアレは身勝手だな」

「何を笑っているだ!!」

「ごめん」


 ユウは怒りのままテーブルにお金をおいて出て行ってしまった。確かに笑われるのはむかつくだろうから僕の失態だな。おばさんは苦笑しながら言っていそうな言葉だな。はぁ、どうもうまくはいかないものだね人付き合いってのは。ユウの親父さんのことは一切知らないけどあの日である程度人なりは知ったつもりではある。あの時に僕ら二人を助ける為に来てくれたのはあの人だけだからなぁ。


 まぁ遅かれ早かれこういうことにはなっていたとは思うから別にいいか。大好きな父が自分が知らない間に犯罪者に仕立て上げられていたら普通なら憎むはずだ。多くの人がそうなるし僕だってなる自信しかないからな。本当にあの親子は凄いといえる……だから僕があの人の約束とか抜きにして幸せになってほしいし良好な関係でいたいと思っている訳だし、何があっても守れる範囲で守りたい。二人が僕のことを憎んでいてくれていいからあのままでいてほしい。


「それは無理だろう」

「なんでてめぇが居やがる。竜二」

「彼が飛び出して行く所を見てね」

「お前が仕組んだんだろ。クソが」


 竜二がいつの間にか向かいに座っていて僕を見てニヤニヤしている。物凄くムカつくので殴り飛ばしたいがここには人が多くいるため出来ない。竜二は「別に君が色々と話せばいいじゃないか」と言ってきたがその通りである。僕が何も気にせずにあったことを全て話せばそれで終わりだろうけど、何も言えないのは僕が弱いからだろうな。あの人との約束はただの言い訳でしかない。


 二人の世間を恨まないでほしいってのも自己満足で、決める人達のことは完全無視の押し付けでしかない。なんてマイナス? なことを考えている僕へ竜二は「こんなつまらない人間なのか。失望したよ」と言って席を立って店を出て行った。店員さんや他のお客さんから憐みなのかは知らないがそういう視線を感じる。会計を済ませて出て行くか。




 店を出てぶらぶらしてから家へ帰ると玄関の前に雪菜さんが座り込んでいた。驚いていると僕を見つけたと同時に抱き着いてきた。何故抱き着かれたかが分からず困惑していると「どこに行っていたの? 心配したんだけど」と言ってきた。正直に話すべきかは迷うが色々と説明をした。雪菜さんは赤城から家の住所をもらったことを相談されたようで、「どうして?」と真顔で言われた。


「ユウと雪菜さんが一緒に出掛けたって聞いたから」

「直接話してもらおうとしたの?」

「そういうことになるかな」


 まぁもし僕の部屋に居ない場合でも雪菜さんの家はお隣なわけだしなんとかなると思っていたから家の住所を渡したんだよね。面倒だから放り投げたわけではなくて……単にそっちの方がいいと思ったからしたわけで、しかも僕は一切知らないわけですからね。


「あの〜離してくれませんかね?」

「いやだ。今日は一緒に寝る」


 その言葉を聴いた僕は抱き付いてきている雪菜さんを引きずりながら桜木家のインターホンを押した。奏さんが出てくれたので事情を説明しようとしたら玄関がガチャリと開いて海さんが出て来て引っ付いてきた。何故増えたのか分からずにポカンとしていたら奏さんが出てきてくれたので助けを求めたが抱き着かれてしまった。これ以上増えられても困るが引きはがされないから応援を呼ぶしかない。


 引っ付きむしになっている三人に家に入ることを言ってからお邪魔すると亜紀さんと涼香さんが玄関の所で座り込んでいた。死んでいたと思い込んでいた人が実は生きていたことを知らされた人達みたいな反応するのはおかしくない。・・・そういえば僕って2日間意識がなかったんだったな。気にしていなかったけど、普通に考えたらヤバイんだよな。


「はぁ、3人とも放してくださいよ。両親にも会いたいんで」

「二人なら呼んだわよ。今日は泊まりなさい」

「「お邪魔します。サキ」」

「えっ! ちょっ」


 父さんと母さんが玄関を開いて僕へダイブしてきたので避けようとしたが引っ付いていた三人に押されたので避けれない。抱き付いて来た二人は「「よかったぁ」」と泣きながら言っているので頭を撫でながら「心配かけてごめんなさい」と謝った。目を覚ましてからするような行動では無かったな。


「良かったね。サキくん」

「・・・なにが?」

(消えないでね君は愛されているから)


 耳元でささやかれた言葉は……昔、1度だけ言ったことがあることへのおそらく返事だろう。やっぱりこの人があの……子だな。

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