24話 お見合い? 1
2日間寝ていたみたいだけど、母さんと父さんが手錠を掛けていた理由にはならないな。って考えると雪菜さんがやった可能性の方が高いんだよなぁ。どうかは分からないから別にいいか。そんなことよりもこの人のお見合いについて解決しなくても僕には何もないんじゃないのかな? ただこの人が嫌だと言っているから仕方なく手伝ってあげるか。
「ってか先輩は抜け出してきたんですか?」
「そうなるね。白紙になってくれたらいいんだけど……」
「そうはならないって訳ですか」
「まぁね。相手は権力だけはあるからね」
ジジィにお願いしてもいいんだがそうなると今度は僕がお見合いさせられるようになるだろうから嫌なんだよな。最終手段としては考えておくか。お見合い相手の情報がないのはどうにもならないから先輩に聞いてみたが「一言で言うならば美人だね。タイプではないんだけどね」と言いやがったがそういう情報が欲しいんじゃないんだよな。
黒井先輩が珍しく美人と褒めるのは珍しいから相当美人なんだろうな。とりあえずは移動しながらでも考えるかな。どこかで服と包帯を手に入れたいから買える所って近くにあったのかな? スマホを取り出し……スマホが無いんだけど、財布はあるのに!! そういえば財布は予備の靴の近くにあったから取って来たけどスマホはなかったな。まぁ特に使うことはないだろうからいいけど。
「先輩、この辺に服屋と薬局ってありますか?」
「スマホ持って来てないんだね」
「持ってきてないです」
「歩いて10分くらいの所に商店街があるからそこに行こうか」
確かに少し遠くまで来たのはきたけど商店街なんてあったかな。先輩が案内してくれるみたいだしその辺はお任せして僕は作戦を考えるか。お見合い相手は権力者の娘だと言っていたけどさ、抜け出して来れたのはどうしてなの? 元々お見合い自体が無い可能性はあることはあるけども流石にそれはなんとも言えないから様子見ってことにはなるな。
権力者であれば優良物件である先輩を逃がすわけがないだろうな。得する条件や同等かそれ以上の相手を用意しないと先輩は断りにくいとは思うな。相手によっては後継ぎさえ産めればそれでいいと思っている人はまだ一定数いるからなんとも言えないからな。先輩の両親の仕事が何かは知らないから相手の利益の問題かも分からない。純粋に先輩に惚れているのであれば別に全然アリだと思うし、その人に押し付けられるから僕が助かる。
本気で先輩に惚れているのであればの話ではあるから会ってみないと本当に分からない。付きまとわれなくて済むから……いやこの人ならそれでも付きまとってくるだろうな。最悪の場合は婚約者と一緒になって付きまとってくるだろうからどうしようもないからなぁ。あとファン共をどうにかしないといけないのは面倒なんだよな。
「何か作戦でもあるんですか?」
「そんなのはない。諦めてもらえるように説得する」
何もないのかよ。この人ならどうにかできるだろうけども流石にそれはどうかと思うかな。権力者をどうこうはできるとは思うけども心配なのは心配だからな。卒業したら仕方ないけども今はこの人が会長じゃないと絶対に平穏に暮らせなくなる。どうしてもそれだけは避けないといけないから絶対に何もないようにしてやる。
「私が辞めた後は君に会長になって欲しいかな」
「絶対に嫌です。あと心を読まないでくださいよ」
「えぇ君と私の仲じゃないか」
「さっさと行きますよ。解決しないとなんで」
周りに勘違いされるようなことは言わないでほしいが突っ込んだらウザくなるだけなので無視するのがいいだろうな。本当に僕に惚れている意味が分からないし今みたいなことを普通に言ってくるのはやめてほしいと思うのは間違っていないと思うのは僕だけですかね。アレが解決した後からずっと言ってくるから慣れて来たのは慣れてきている自分がいる。
「そういえば君と佐藤くんが助けていた子が今回のお見合い相手だね」
「だったら別にユウでいいじゃないですか」
「私はやめていた方がいいと思うな」
僕がスマホを持ってきているのであれば連絡をこっそりと入れておくけどもないからできない。疑問なのが1つあるけど、先輩に言っても答えてくれないだろうな。明らかにユウを避けているだろう。僕が2日寝ている間に一体何があったんだよ。先輩って別にユウを避けるようなことはしなかった筈なのになんで避けているか気になる。お見合いのことが終わった後にでも聞けばいいだろうから。
「着いたよ。ささと終わらせよう」
「了解です」
いつの間にか商店街に着いていたので僕と先輩は薬局と服屋に行き目的の物を買ってから先輩が呼んでいたタクシーに乗ってお見合いの場所まで行った。あまり来ないような和食のお店に着いたが……これは僕が入っていいのか分からないんだけど。一応ちゃんとした服を買っているので問題ないんだけども流石に気が引けるんだけど。
これさ後でお見合いをめちゃくちゃにしたということで請求されたりしない? おこずかいと貯金している分で足りるかな? 父さんと母さんには迷惑を掛けたくないから今からでも引き返そうかなと思うが仕方ないか。先輩に念のために聞いたら「えぇそんなことを気にしているのかい」と言って笑った。いや気にするでしょうよ。
「心配しないでいいよ」
「それなら安心ですが……」
「・・・私や君ではなく彼が心配だけどね」
先輩が言っている『彼』と言うのはおそらくはユウのことだろうな。呼んでいないのに来る可能性ってのは絶対にないと思いたいが……この前助けた子がユウと関わりを持っているのであればくるだろうな。その時は別にいいんだけど、何を危惧しているんだろう。
「そんなことよりもだ」
「どうお見合いをなかったことにするかですよね」
「そうだね。と言いたいところだけども」
先輩が頭を抱えて「君を連れて来なくてもよかったみたいだ」とめんどくさそうにそう言った。どこかで言い合いをしている部屋があるみたいだけど……もしかしてその部屋が先輩のお見合い相手がいる場所か。とりあえずは確認してみないと分からないから先輩と急いで行くが……信じられない光景が目に入ってきた。
「先輩と……サキなんでここに」
「咲人くんは私が来てくれと頼んだんだ」
ユウに対して先輩は冷めた言葉でそう言った。ユウはお見合い相手をお姫様抱っこしてここから逃げようとしている瞬間だったからだ。流石の僕も頭を抱えたくなる光景だが、先輩が静かに怒っているので何も言わないでおく。先輩は二人に対して「私は元々断るつもりだったんだよ。君がどういう想いで彼を呼んだのかは知らない」と優しく言う。
先輩は固まったままでいる二人に続けて「佐藤くん、彼女を連れて行って君は責任を取れるのかい? 原さん、君も彼と生涯を共にする気持ちなのかな?」と低い声で言い放った。先輩のは正論だろうから二人は何も言えずにただ呆然とするしかない。だがいつものユウならこんな事はしない筈だし、周りに相談する筈なのに何故だ?
「佐藤くん、この前の一件で君は気付いた筈だ」
この前の一件とはなんぞ? 僕が知らないところで色々とやらかしているんじゃないだろうなぁ