2話 主人公とモブの入学式2
どこの学校も同じかもしれないけどなんで校長の話って長いんだよ。眠くなってくるんだけどもこの後が面白いことがあるから起きておかないと損するんだよなぁ。あのクソジジィの驚く顔を近くで見れないのは残念だがまぁいいか。このあとにある在校生代表の挨拶と新入生代表の挨拶で新入生の代表は首席だが、僕ではなくて次席の人になっている。
クソジジィは僕に受験で首席を取ることを条件に出しきたからそれを守りはした。その条件のおかげで両親の元に帰ってこれたんだから代表挨拶なんてしなくてもいいだろうから辞退させてもらった。あのジジィは納得はしないだろうがそんなのは知らん。代表挨拶までは含んでいないアレが悪いからな。
『次に在校生代表___黒井鏡花の挨拶です』
へぇ黒井先輩が代表挨拶をするのか。あの人より守友竜樹を代表にすると思ったんだが……アイツ生徒会の会長になり損ねたってことだな。ここの学校は在校生代表は生徒会会長がすると決まっているので成績とかは度外視である。まぁ他の学校でも同じかもしれないが、会長にならないと出来ないことの1つだ。竜樹が3年生だったらまた違った結果になっていただろうがアイツも黒井先輩も2年生だ。
『私は彼に言われてここまで来れました。それ以外にも家族や友人、先生方に助けられたんです』
ん? 一体何を言っているんだこの人は? 内容的に自分が生徒会会長であることについて試みやそれまでの経緯か。黒井先輩が何かを言われて会長になるきっかけを作った奴がいるのか、同じ中学だった訳だしもしかしたら知っている人かもしれないな。・・・そういえば中学生の時も会長をしていたけど、3年生の時だった筈だから2年生から3年生になるまでの間に心境の変化があったんだろう。
初めて会った時は会長になりたいなんて思っていないって本人が言っていたのに……なったらなったで物凄く生き生きしているんだから教師勢も生徒達も応援したくなるんだよなぁ。さてと周りはどんな反応をしているかを少しだけ見てみるか。流石に後ろを見るのは目立ちすぎるからやらないけど、周囲を見渡したり聞き耳を立てるくらいは良いだろう。
教師勢から「流石、会長に選ばれる生徒ですね」「守友家……を抑えてですから」など好評? みたいだ。新入生は「あの先輩か……っこいい」「中性よりの顔だなぁ」「踏まれたい」「一目惚れした」「はぁ、顔が良い奴は得するんだよ」など、さまざまだった。1名ほど変な奴がいたような気がするが別に気にしないでおこう。ただ新入生の中でも先輩が会長であることに反対する奴もいるのは厄介かもな。竜樹の奴がそれを利用しないと良いんだが。
『続きまして新入生代表__えっと、守友夜夢の挨拶です』
黒井先輩の挨拶、全く聞いていなかったけど、別にいいか。やっぱり次席は夜夢だったのか……良かった。他の奴だった場合ジジィがもっとうるさくなっているところだった。溺愛している孫娘に花を持たせてやるんだ……何も言うなよ。小さい手鏡を使ってジジィがいる席を確認すると教頭らしき人を呼び出して外に出て行った。
本来であれば僕の名前が呼ばれる筈なのに呼ばれなかったことでジジィは疑問に思ったんだろうなぁ「何故、咲人が呼ばれない」ってな。代表挨拶が辞退できることについてはジジィは知っているんだろうが……この学校が始まって以来のおかしな行動である。辞退しない方がメリットが多いから首席を取った者達は辞退を申し出をしない。だが僕にとってはデメリットの方が大きいと判断したから辞退した。
ジジィの計画では夜夢と結婚させて僕を当主にして両親との縁を切らせて家をもっと繁栄させるつもりらしい。それを潰すことを目的として挨拶は辞退した。藤咲家と守友家は親戚になってしまっているのであのジジィが何かしらを用意していたら印象が悪くなる。母さんはジジィの実の娘な訳だし、危害を及ぼすようなことはしないだろう。父さんの身が危ないんだけど、それも大丈夫だろうからな。
『これで入学式を終了されていただきます』
おっと終わったみたいだな。僕のクラスは1組なので1番最初に出ていけるので楽である。さっさと教室に戻りたかったがユウに引っ張られて教室に戻れなかった。別に次は10分ほど休憩なわけだからいいけども終わった途端コレだとは思ってなかったな。ユウに人気のない場所に連れて来られた。放課後とかに聞かれると思ったんだが。
「お前、首席じゃなかったのか?」
「首席ではあったよ。ただ辞退しただけ」
「あのじいさん……相当怒るんじゃ」
「えぇ、怒るでしょうね。お兄様のせいで」
3組の夜夢がいつの間にかやって来ていた。従兄妹でねぇやにぃを付けることはあるだろうけども「お兄様」はどうかと思うぞ。やめてくれと言って聞かないので意味なんてないからもう好きに呼ばせている。実の兄である竜樹に対しては「兄さん」と呼んでいるみたいだ。そっちの方が良かったんだが「他人ですので」と夜夢が冷たい声でいうので何も言わないでおいた。
「爺様は私とお兄様の婚約を広めたかったみたいですよ」
「危なかった」
「夜夢さん、前から思っていたけど守友家って権力あるの?」
「さぁ知りませんが苗字で呼んでください。クソ虫」
通りで学校に辞退する時に対応してくれた事務員さんがビクビクしていた訳だ。あのジジィは1度計画が失敗に終わっても諦めはしないだろうから次の手を考えないとな。僕は平穏に暮らせればいいんだけども流石に隠している才能を見抜いている奴からしたら逃がしたくないんだろう。そのせいで父さんと母さんには迷惑を掛けてしまったからな。
あの二人は駆け落ちして両家の縁を切りたいと思っているみたいだし巻き込みたくはないからここでバッサリとジジィとの縁を切らないとヤバイな。夜夢やばぁちゃんが嫌いなのかで言われたらそういう訳ではないので、守友朝晴だけを大人しくさせればいい。・・・まぁ計画を潰しながら青春を送ることにするかな。最悪、才能をフル活用すればいいだけだしなぁ。