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19話 婚約者3

 生徒会室の前までやって来た僕たちはノックをしてドアを開けた。竜樹は入ってくる僕らと言うか松川先輩を見て目を見開いていた。月美さんから何も聞いていないのかは知らないけど、話し合いはしてもらうので攫うか。生徒会室に1歩踏み出した瞬間に左から拳が見えたので避けるが後から入って来ている雪菜さんに当たりそうになったのでソイツ拳を受け取り蹴り飛ばした。


「大丈夫? 怪我はない?」

「うん。サキくんは?」

「僕が避けなければ危ない目にあることはなかった」


 いや……そんなことよりも何故殴りかかって来たのかを問い詰めることの方が最優先か。松川先輩の話し合いはその後でも出来ることだし別に優先順位を下げてもいいよね? 蹴り飛ばした奴の方に行くとゴリ先輩だった。しかも当たり場所が悪かったのか気絶している。竜樹の方を見ると「用はその女についてか?」と言い松川先輩に目を向けていた。なので僕は頷いて別の場所に移動するようにアイコンタクトを取った。


「ここは任せる。そこで気絶している奴を運んでおけ」

「了解です」

「あとは明日にでもする」

「分かりました。手足を縛って連れて行くぞ」


 もしかしてゴリ先輩の扱いって雑なのかな。まぁ自業自得だし僕が気にすることではないな。とりあえずは竜樹に案内されるのだが、松川先輩が雪菜さんの後ろにピッタリとくっついて前に出てこようとしない。僕は呆れているが……雪菜さんがスマホで「私に任せて」と見せてくるので任せている。引っ張り出せばいいと思うもののそういうわけにはいかないわけなので本当に面倒だ。


「色々とすまないな」

「そう思うのであればしっかりとしてくれよ」

「・・・着いた。理瑠、咲人と先に話させてくれ」

「分かりました」


 何故僕なのかは分からないが何かを話したいのだろうから仕方なく一緒に入ることに。空き教室に入って竜樹に何を話すのかを問い詰めようとした時、両肩を掴まれた。いきなりのことなのでびっくりしたが

「可愛すぎるのだがどうすればいい!!」と竜樹は顔が真っ赤になった状態だった。しかもまあまあ声が大きかったんだけど、外に響いていないかが気になる。


「ダメだ。本当に可愛い」

「お前、そんなのになるのかよ」

「・・・咲人だけには言われたくない」


 竜樹は「はぁ、あのくりくりした目も可愛いし俺を見つけた瞬間に何かに隠れる所も好き」と言い廊下にいるであろう松川先輩に想いをはせているんだろうけども僕の中での竜樹のイメージが壊れていく。もっと冷たいような奴だったはずなのに。いやそんなことよりもなんで婚約解消を持ち出したのかが気になるな。


「婚約しているんだろう?」

「解消する予定だ。あのクソ共をどうにか出来ないからな」

「家でのことを知っているのか?」

「当主が決めたわけではないからな」


 ジジィが決めた訳ではないのか。じゃあアイツが決めたことになるんだろうけども……何故先輩の家のことを知っているのかが気になるんだけども聞くのは怖いのでやめておこう。竜樹の反応と先輩の反応を見るに……両方想いだなぁ。面倒なことに思いっきり巻き込まれた。


「二人で話し合え」

「待て……まだ準備がっ!」


 僕を止めようとしている竜樹を無視して教室を出ていく。教室から少し離れた所に雪菜さんと引っ付いている松川先輩は緊張しまって「どどどどど」と壊れたラジオのようになっていた。流石にこの状態であの竜樹がいる教室に入れるとなると心配になってきたな。部外者の僕や雪菜さんのが入るのは違うだろうから……悩ましいところではあるな。


「先輩、入って話し合いを……」

「む、無理です」

「なんでですか?」

「かっこ良すぎて!!」


 竜樹と全く似たようなことを言う先輩に対してイラッとしてしまって雪菜さんから引っ剥がして無理矢理に教室に投げ込み出てこれないように閉じ込める。雪菜さんは何も言わずに見守っているが……どうしたのだろう? 先輩に信頼されていたみたいだけど。


「サキくんどうだった?」

「両方想いだったね」

「そっか……やり直せるといいなぁ」


 それはなんとも言えないな。あの二人は単純に話し合いを出来てなさすぎるのと竜樹が一方的に知り過ぎているのが原因だろうから……やり直すも何もないと思うけど黙っておこう。とりあえず雪菜さんと二人であのアホ共が出てくるのを待っていると……一番会いたくない人がやって来た。しかも超いい笑顔で。


「やぁ咲人くん……と桜木さん?」

「こんにちは、会長」

「はぁ何しに来たんですか?」


 雪菜さんと黒井先輩はお互いにバチバチと火花を飛ばしているのは何故かは知らないがあのアホ共が出てくる前にどっかにやらないともっと面倒なことになるのは確実だ。なのでさっさと用件を済まさせて帰っていただく方がいい。


「松川くんを知らないかい?」

「松川? 知りませんね」

「そうか。竜樹くんの婚約者なんだけど」


 黒井先輩は三日月のように口角を上げて笑った。普通にバレているんだろうけどここは嘘を突き通す方がいいだろう。僕が知らないと言おうとすると隣から「理留さんは今は想い人と二人でいるので邪魔しないであげてください」と雪菜さんがもたれかかっているドアを指差しながら言った。


 そんなことを言うと思っていなかったので僕は鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしているんだろう。黒井先輩が腹を抱えて爆笑している。雪菜さんはそれを不思議そうに見ているが「君のその選択はミスだ」と急に笑うのをやめて冷めた声で言った。おそらくこの人は雪菜さんを敵だと認識したんだろう。


「黒井先輩、雪菜さんに何かしたらオレ(・・)が潰してやりますからね」

「はっはっ彼女は君が思っているよりも強いみたいだよ?」


 そう言われて雪菜さんを見ると真っ直ぐに黒井先輩を見ている。敵意を向けられて真正面から受ける人はいるが慣れていないであろう雪菜さんが受けれるとは思っていなかった。一応大丈夫なのかを確認しようと「雪___」と僕の声は途中で途切れて脇腹に蹴りを喰らわされた。


「「えっ!!」」


 雪菜さんと黒井先輩の驚きの声がするが蹴られた僕は竜樹を睨みつけた。竜樹は何も悪びれずに婚約者と手を繋いで僕を見下していた。「邪魔だろ」と言ってくる竜樹にぶん殴ってやろうと思ったが松川先輩が注意をしているのでよしとする。


・・・なんか距離近くなってるしものすごくイチャイチャしているだけど??? もう少しさ……初々しくあれよ!! 別にいいけど、それが一番驚いたわ!!


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