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17話 婚約者1

 今日の授業が終わり、何もなくて帰れると思ったが昼休みの件で……新井先生に放課後呼び出されてしまった。生徒指導室でテーブルを挟んで向かい合ってソファーに座って10分経ったが何も言ってこない。何も言うことがないのであれば帰りたいんだけど、そんなことを言ってみろ。怒られるだろうから黙って新井先生が何か言うのを待っている。


「今回の件だが、何か言い訳はあるか?」

「ないですね。僕は悪くないので」

「はぁ……あそこで生徒会連中をねじ伏せたのが問題なんだよ」


 ねじ伏せたとはなんぞや。向かって来た連中を返り討ちにはしたがそれでも加減はしたし他の生徒や職員さんには怪我などはさせていないし攻撃もしていない。しかもアレに関しては絶対あのボケどもが悪いわけで僕が責められるのは分からない。暴力がいけないことは知っているので殴る蹴るはしていなかった筈……覚えてないから自信はないけど。


「まずはあの馬鹿の暴走を止めてありがとう」

「意外ですね」

「元々問題視されてはいたんだよ」


 アレかゴリ先輩の後ろには竜樹がいるから教師勢は手が出せないという理由なんだろうな。けど新井先生は気にしないような気がするんだけどなぁ。何か理由があるだろうから詮索はしないでおくが……教師勢は問題視していただけはマシだな。問題なんてありませんでしたとか普通にあるんだからな。怖いことに。だが今回の件でゴリ先輩は終わっただろな。


「それとは別件で最近こういうのが送られてきたんだが……」


 と新井先生が茶封筒を渡してきた。開けてみるとそこには僕が竜樹派閥の生徒を買収しているところの写真が入ってあった。誰もいないことを確認をしたはずなのにこれがあるってことはその生徒が仕掛けていたカメラに撮られたということだろう。ただ不思議なのが先生が今になって渡してきたことが意味が分からない。


 よく見たら窓越しに撮っているな。撮ったであろう人物が少しだけ映っているから詳しく調べれば簡単に分かるけども目的が分からないとどうにも対処が出来ないな。予想は竜樹の部下だとは思うがそれ以外って考えると一体だれになるのかが予想付かない。僕がこの写真をどうしようかと考えていたら先生が「もう一件お前に言っておかないといけないことがある」と言って見知らぬ女生徒が入ってきた。


「初めて松川理瑠(まつかわりる)です。アナタとお話がしたくて」

「コレは先輩が?」

「えぇそうです」


 松川理瑠って名前は聞いたことがあるな。ジジィの家で名前が出ていたが何故出ていたかは知らんしどうして僕と話をしたいかも全く予想がつかない。松川先輩は先生の隣に座って「竜樹様の婚約者になりますので、仲良くしておきたいです」とにっこりと言ってきた。僕は少し驚きはしたがそこまでの衝撃はなくて平然としていた。流石にここで思いっきりびっくりしてもおかしいからな。いや……おかしくはないか。


「竜樹様の下でお力をお使いください」


 と言いながら頭を下げてくる松川先輩に新井先生はぎょっとしていた。僕は大きくため息をついて「何故オレ(・・)ですか? もっと適任があるかと」と言った。最悪、竜樹の下についても僕的にはいいと思うがあくまで最悪の場合はだ。それ以外は相当な理由がないとつきたくはない。それに夜夢の方が適任だと思うからそこはわかってほしさがある。


「アナタが彼を変えてしまったのでその責任をとってください」


 なんともくだらない理由だ。いや彼女からしたらくだらなくはないんだろうが僕からしたらそれがどうした? である。変えた責任を取れと言われてもどうしようもないし、それなら世界で影響力がある人は全てに対して責任を取らないといけなくなる。この女は自分がアイツを支えようとしているのだろうか?


 婚約者って嘘をついているかもしれない。竜樹は意外とモテてるらしいが婚約者がいるなんてことを耳にしたことがない。公開していない可能性もあるが……それでも竜樹の近くでコイツを見たことない。何か事情でもあるんだろうが面倒ごとに巻き込まれたくないので聞く気はない。


「お断りします。先輩がまた変えればいいだけなので」

「私は……所詮は政略結婚のための道具です」

「・・・解決する奴を紹介しましょうか?」


 僕はそう先輩に言い、新井先生にユウの呼んでもらった。適材適所があるのでそれはアイツに任せる方が上手くいくのを僕は知っている。新井先生が呼びに聞くこと10分、ユウは指導室に来た瞬間、僕の胸ぐらを掴み「お前はなんでこういう時に俺を呼ぶ!!」と叫ばれた。適材適所って返すと乱暴にソファーに座らせられた。


 少し機嫌が悪くなってしまったユウは小さくため息を吐き、松川先輩に自己紹介をした。ある程度、お互いを知ったので本題にユウは入った。松川先輩は少しずつ途切れながら話していった。その話を聴いた僕はなんとも言えない顔になっているだろう。流石にここまで酷いとは思わなかった。


 松川先輩と竜樹の婚約は10歳の時にされたもので、先輩が一目惚れをして親に相談した結果らしい。ただ両親は善意でそうしたわけではないのが少しだけ可哀想だとは思う。松川先輩の家は守友家よりは歴史は短いが優秀な経営者という。だがここ最近は経営があまり上手くいっていないとのことだったので、守友家に支援をさせる目的で婚約を持ちかけたらしい。


 両親はそれを松川先輩の目の前で言ったのが不味かった。12歳になった日に「道具としてはちゃんと育ってくれてよかった」と言われた。3歳下の弟は家を継ぐ人間で自分より地位は上だとその時から教えられた。言葉遣いを間違えたら罰を与えられ、使用人みたいな扱いになっていたらしい。だが折れずにいられたのは惚れた竜樹のためだと本気で思っていたからだ。


「竜樹様に……高校に上がる前に婚約を解消してもいいと言われました」

「サキ、どうしてだと思う?」

「知らんわ」


 ここで僕に聞くのは間違えだろう。竜樹本人に聞くの一番いいんだろうが……今の現状では無理だろうし松川先輩からも僕からも接触はあまりしない方がいい。そうなると第三者が必要になるからどうしようもない。ユウや坂内は僕と仲がいいのはわかっているだろうから目的が探られて終わりだ。それにこの二人では竜樹に情報を抜き取られてしまうだろうから最悪の場合は先輩の家での立場は無くなるだろう。


 それは別に僕の知ったことではないのでそれはいいんだけど、人としてあまり好ましくないからちゃんと対策をたてるだけ。ここに居なくて別に婚約解消の話をしても何も違和感のない奴は……守友家の人間以外いないだろうなぁ。頼み込んだらしてくれるとは思うが流石に借りを作るのは絶対に避けたい。ジジィはイヤだし夜夢は何を言われるかわからないからやめておきたい。竜樹が話しているであろう人物に当たるしかないか。


「みかんさんは……妖怪枠だし、月美さんに連絡をしてみるか」

「妖怪? 誰でしょうか?」

「竜樹のその言葉の意味を知っているであろう人物にお願いしようと」


 月美さんは竜樹の側近兼護衛の役割をジジィからもらっているはずなので色々と知っているだろうが……これまた学校で近くにいるのを見た記憶はない。婚約者と同様で近くに居ないのは不思議だよなぁ。


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