16話 揉め事? 1
竜樹に正門で勧誘を受けてからは特に何かがあったわけではなく昼休みになった。ユウは部活のミーティングがあるとのことで今回は一人で食べることになった。ユウ以外に喋るやつは出来たんだが……図書委員に自分で立候補したクラスメイトの名前は坂内徹。決してぼっちではないからな。
それはさておいてお昼をいつも食べている場所が今日は埋まっていたので食堂まで来たのだが……何やら騒がしい。面倒なことには巻き込まれたくないので食堂を後にしようとしたら「神村先輩は何もしてないじゃないっすか!!」と坂内の声が聞こえてきてしまった。アイツ……図書委員の仕事があるって言っていたのに逢引きをしてやがるだと……まぁ別にいいか。
友達を見捨てるなんてことはしないけど、ゴリ先輩がいるのはすごく面倒だなぁ。ゴリ先輩は190cm以上はあるから相当怖いはずなのに坂内は神村先輩と言う人の前に出れるな。坂内は見た目をチャラくしているが身体の方はヒョロヒョロなのでアレに殴られでもしたら即ダウンするだろうなぁ。ユウが居れば良かったのだがいないので手助けに行こうか。
「童、受け止めてみせい」
と坂内に向かって殴りかかろうとしているので僕は近くにいた先輩にお弁当を預けて邪魔な生徒会役員を避けながらゴリ先輩の右横脇腹に蹴りをくらわす。少しだけ蹴り飛ばしたがあのゴリラなら大丈夫だろう。坂内が大丈夫かを確認するが殴られる前でよかった。間に合わなかったら重症だった可能性が大きいからな。
「藤咲っち……怖かった」
「何があったの?」
「あの國先輩が神村先輩のブローチを奪って壊そうとしてきた」
「國って誰???」
「えっ」
神村先輩が「國って言う人はさっき君が蹴り飛ばしてた人のこと」と教えてくれた。あのゴリラってそういう名前だっけ? まぁ別に覚えなくてもいいだろうから引き続きゴリ先輩って呼ばせてもらおう。僕はあのゴリラのこと大嫌いだしね。
「このぉぉクソガキがぁぁぁ」
ゴリ先輩が怒りながら殴りかかってくるので二人に少しだけ距離を離してもらって誰も座っていない席に転ばす。他の生徒会役員たちも僕へと襲い掛かってくるので相手の力を使って全員転ばしていく。流石に昼休みが終わってしまうの坂内と神村先輩を逃がしてから僕は去ろうと思ったが少しやることを思い出したのでゴリ先輩に近づく。
「神村先輩のブローチどこにやった?」
「お主のせいで壊れたぞ」
僕のせいで壊れたのであれば弁償もするし謝罪もする。それはしっかりとしないといけないんだよ。他人の大切は自分の大切ではないが……大切は重要なんだよね。もしブローチが僕の大切な人が大切にしていたら守るんだよ。だからね國先輩、僕は貴方を潰すことだってする。
「咲人、そこまでだ」
「止められる覚えはないけど?」
「國はブローチを渡せ」
騒ぎを聞いて駆けつけたのであろう竜樹がゴリ先輩からブローチを受け取り僕に渡してきた。返してくれたのならいいかと思って立ち去ろうとした時、「すまなかったと伝えておいてくれ」と神村先輩への伝言を言われた。ゴリ先輩はものすごく悔しそうにしていたことから別に竜樹への忠誠はないんだろう。僕には関係はないので気にせずに教室へ帰る。
途中でお弁当を預けた先輩にお礼を言ってから受け取り裏庭で昼食をとった。流石にギリギリなので急いだから途中詰まらせて死にかけてしまった。食べ終わり即教室に戻って坂内にブローチを渡したら先輩の元へ行こうとしていたので流石に止めた。チャイムが鳴るから放課後に行けよ。授業に遅れる理由にもよるが反省文を書かされることになっているので、できるだけ書かないようにすべきだ。
神村先輩がどんな性格かは全く知りはしないがいい先輩であれば自分のせいで坂内が遅れて反省文を書かされるのは罪悪感は少なからず感じるのでないか? 本当にその人のことがわからないからあれだけどな。それはさておき神村先輩ってどこかで聞いたことがあるんだよな。明日にでも夜夢に聞いてみるか。
「藤咲っち……本当にありがとう」
「気にするな。友達だろ?」
「じゃあ咲っちって呼ぶわ」
坂内はニコニコで自分の席に行った。流石に咲っちはやめてほしいが……別にいいか。今は授業に集中しておかないといけないからな。本当に平穏な日々がいいのに周りはそんなことを許してくれないとか面倒だな。まぁ別にそんなことが気にならなくなってきているのはどういう心境の変化なんだろうな。最近の僕は少し変だ。まずは暇さえあれば雪菜さんを目で追っていることが多くなった。次に人の為に自分の才能をひけらかすことが多くなったのもある。
ユウに「だいぶ変わってきたな」とニヤニヤされながら言われた。母さんからも「恋っていいものでしょう。簡単に変わってしまうから」と微笑まれた。はぁ……何故に僕が恋しているってことを決めつけるんだか。間違いではないので否定できない。
「それはさておき、生徒会と揉め事は避けるべきだったわ」