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12話 恋のはじまり? 1

 あれから一週間経った月曜日の放課後、黒井先輩はユウと赤城のおかげで今の状況がおかしいことに気が付いたのか竜樹支持派を一掃し始めた。宇恵野から噂で聞いたのでひとまずは安心だ。まぁ一掃しているのは黒井先輩ではなくて僕だけど、その辺は誰にもバレていないようなので良かった。


「なぁ藤咲、お前って会長と知り合いだったよな?」

「そうだけど?」

「頼む。俺をあの人の部下に推薦してくれ」

「自分でアピールしてこい」


 復活した黒井先輩はさらに人気になり男女問わず魅了をしているみたいだった。クラスメイトAもその一人だったりするけど……これは洗脳に近いのでは? そもそも一週間経ったと言ってもユウと赤城の二人に色々と相談したのは火曜日でしかもその日だけときたもんだ。どんだけタフなんだって話だけど解決に向かっているのであれば僕が何かをする必要性はないかな。


「やぁ久しいね。咲人くん?」

「そこまででしょう」

「君に会えない日は寂しかったからね」

「それはまた嬉しくない言葉ですね」


 黒井先輩がクラスに乗り込んできたので少しだけ面倒だと思いつつも無視する訳にはいかず会話をする。このクラスにも数名、黒井信者がいる為無視をするようなことがあれば火炙りにされてもおかしくない。まぁその時は逃げるから問題はないだろうけどな。


「ユウと赤城に用があるのでは?」

「あぁそうだった。君を見かけたからつい」


 おそらくはこの前の件のお礼を言いに来たんだろう。二人は部活がある筈だし放課後ではなくても良かったんじゃないだろうか。・・・何か嫌な予感がするから帰る準備をしておこう。というかそそくさ逃げるように帰ろう。


 帰る準備ができたので黒井先輩が二人と喋っている間に教室から出て行こうとすると「咲人……話がある」と竜樹が教室に入って来た。コイツはいつも間が悪すぎないか? そういう呪いでもかかっているような感じしてもおかしくはないんだよな。


「これはこれは副会長、私は仕事を頼んだ筈では?」

「会長殿ではないですか。ここで油を売っていていいので?」


 最悪なことに黒井先輩と竜樹が僕を間に挟んでバチバチし始めたので僕は帰ろうとしても帰れない。教室に残っている奴らはどうなるかを見守っているだけだった。助けてほしいんだけどもこの二人を相手にそれは無理だろうな。


 とりあえず二人の会話を聴くことにした。竜樹は「俺はコイツを勧誘しようと思ったんですよ」と言いながら目でお前が部下を減らしたんだろ? と言いたそうに睨んでくる。黒井先輩は「いやぁ私も勧誘をしようとね」と言って僕の方を見てくる。二人が僕を見ているから教室中の視線が集まってくる。


 はぁ……高校生活では普通な人みたく恋をして勉強して友達と遊んでしたかったんだけどなぁ。二人が僕に何を求めているかは知らないけども答えは決まっているよね。


オレ(・・)は生徒会に入る気なんてないですよ」

「じゃあ私の恋人にはどうだい?」

「お断__」

「サキくんは私のなので会長さんにも渡しません」


 どこからもとなく現れた雪菜さんがそう言い放った。しかも僕の右腕に抱きつきながらだぞ!! 柔らかいし、いい匂いするしなんかこうヤバい。流石に冷静にいないとヤバいので大きく深呼吸するが隣からものすごくいい匂いがした。


「・・・咲人くんでもそうなるんだね」

「お前が……あの桜木か」


 二人はびっくりしながら雪菜さんを見るがそれを無視して僕を引っ張って教室から一緒に出て行く。引っ張られたことで冷静になり雪菜さんにさっきの発言の意味を聞いた。そしたら顔を紅くしながら「君が困っていたから……です。ごめんなさいぃ」とものすごく可愛い反応をよこしうぅてくれた。


 これが俗に言う“キュン”となのか。初めて知ったけといいのものだね。いや……そんなことは別にどうでもいいこともないけど、今は目の前の雪菜さんを記憶に焼き付けるべきではないだろうか?


「咲人くんは嫌じゃなかった?」

「サキくんでいいよ。雪菜さんにはそれでもっと呼んでほしい」

「えっ⁇」

「えっ??? なんで??」


 雪菜さんに【サキくん】なんて呼んでほしいと思うとか頭イカれてるのかな? 記憶が無くても本能的にそう願っているとしたらこの目の前にいる人が僕の初恋の人になるんだけど……何故思い出せない? そこが引っかかるんだよ。


 今での想っているのであれば思い出す筈なのに……どうして記憶が元に戻らないのか。雪菜さんではなくて別の子が居るからなのかが分からない以上、今の感情に関しては蓋をしておかないとだな。善意で助けてくれた雪菜さんに失礼すぎる。


「っ!! どうかしたの?」

「いや、お礼を言わないとなって思ってさ」

「そ、そうなんだぁ」

「助けてくれてありがとう」

(ずるいよぉ)


 雪菜さんが小声で何かを言ったが小さすぎて聞き取れなかったが聞き返すのはやめておく。おそらく独り言だし、もし気持ち悪いとかだったらショックで寝込むと思うからな。帰ったら父さんに相談してみよう。母さんには少し恥ずかしくてこんなことは言えないからな。


「お前ら……熱々なのはいいが避妊はしろよ」

「「へぇあ? あぁぁ!!」」

「くっくっく面白いな」


 新井先生と会って僕らはまだ腕を組んでいたことを思い出して二人して距離を取った。僕は新井先生を思いっきり睨むが「藤咲どうした? もっとくっ付いていたかったのか?」と言われた。ほんの少しだけ図星ではあるけども。いやマジで本当にほんの少しだけだよ?


「先生、あまり揶揄わないでください」

「・・・桜木、お前も顔に書いてあるぞ」

「何も書きてません!!」

「くっくっく。じゃあな」


 二人してただ新井先生に揶揄われただけだった。このまま呆然と立ち尽くす訳にはいかず雪菜さんの手を掴み下駄箱へ向かう。すれ違う生徒たちに温かい目で見守られてしまっているが気にせずに進む。


 下駄箱について、履き替える際には手を放したけども雪菜さんが少し寂しそうにしたのを僕は見逃さなかった。くっ……それは僕に効くからやめてほしい。

◇◇◇


 俺は今親友の恋路を見守っている。この二人には絶対に結ばれてほしいと心から願っているので俺は雪菜ちゃんに協力をする。今日はその大きな一歩になるだろうから部活を休んで影で見守っている。ただ大きな誤算としたら……


「彼女が君が言っていた超えられない壁かい」

「えぇそうですよ」

「まだまだ入り込めそうだね」


 黒井先輩が全然諦めていなかったことだった。大抵の人はあの二人の間に挟まりになんて行けないだろうがこの人は違う。普通に入りに行こうとしているのでびっくりだよ。まぁまだサキが距離を置こうとしている節があるからいけるかもしれないな。


 雪菜ちゃんがんばれ


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