11話 黒井先輩3
宇恵野樹里と名乗った女生徒に質問攻めを受けたが放課後またやる気満々だった。少し面倒だなと思う反面、どうして黒井先輩がああなっている情報を教えてくれるみたいだ。気にはなっていることだったので教えてくるのであればありがたい。ユウに情報を共有しておけば僕が何か動く前になんとかしてくれるとは思うんだけど一応持っていた方がいいかもしれないしね。
黒井先輩を助けてくれる人は決まっているだろうし、今回は偶々僕が適任ってだけで昼に誘われただけと思い込むことにしよう。じゃないと卒業式の後に言われたことが冗談だと言えなくなってしまう。そんなことは横に置いておいて僕が出来ることを考えよう。
「サキ、もう放課後なのにさっきから何を唸ってんだよ」
「黒井先輩をどうしようかとね」
「俺も聞こうと思っていたんだが食堂での一件」
ユウは食堂で何があったのかを教えてほしくて部活を少しだけ遅れていくみたいだった。そんなに気になるのであれば自分で黒井先輩に聞きに行けよとは言わないでおく。仕方なく喋ろうと思ったが何か話すようなことはおきていないことに気がつく。まぁ竜樹に絡まれたってことだけ伝えよう。
「なるほどな。確かに先輩にしては変だな」
竜樹に絡まれただけと話したら「なわけねぇだろう。全部話せ」と言われてしまったので事細かに話してやったらユウもおかしいと思ったらしい。ユウが悩んでいるので僕は周囲が気になったので見てみると教室には結構な人数が残っていてびっくりした。さっさと帰れよと思うが昨日の代表挨拶でファンになった奴からすると気になるのか。食堂での一件は……
「サキはどうする?」
「手助けはするけど」
「俺も手伝うぞ。そのゴリ山先輩とやらが厄介だろうけどな」
ゴリ山とは僕を蹴り飛ばしてくれた先輩のことだ。竜樹だけを狙って潰すのは意外と簡単だけどあのゴリ山がいると話は別だ。宇恵野の話を聞いてから作戦を立てる必要があるからどうしようもない。とりあえずはユウには情報共有とどうするかの作戦を伝えることを約束した。
「俺は部活に行くけど、勝手に暴走するなよ」
「するわけないだろうが!!」
「雪菜ちゃん、サキをお願い」
「任せて」
おい、そこの二人。何をしれっと幼馴染み感を出してやがるんだよ……僕も混ぜろ。なんてことは言えないので黙って二人のやりとりを眺めていると「もしかしてあの二人できてる?」と宇恵野が言ってくるので僕は「知らん。知り合いではあるみたいだがな」と返しておいた。
「そういうことね」
宇恵野は僕と雪菜さんを交互に見て何かを分かった感を出している。いや……何を分かったのかわからないんだけど教えてもらってもいいですかね? ユウも一切教えてくれないんですわ。まぁ追々わかると思うからいいけどね。
「さっさと本題に入るぞ」
「えっ? ここで」
「入学二日目であんな目にあったんだぞ。流石にムカついてきた」
「・・・まずは確認させて」
宇恵野は僕の左腕を掴み袖を捲った。左腕を確認するということは僕が蹴り飛ばされたところを見たんだろう。僕の左腕を確認した宇恵野は「これは……」と言葉を失ってしまったみたいだけど、それは単に昨日の傷が開いただけですので気にしないでもらえるとありがたいですね。
「咲人くん、病院に行こ」
「あっ雪菜さん、大したことはないよ」
「あの國とか言う人許さない。私のサキくんを傷つけて」
「これ、昨日の傷ね。ただ開いただけだから」
ん? ちょっと待てぇい。今なんとおっしゃいました??? 僕の聞き間違えで無ければ『私のサキくん』って言わなかった? えっ? 言ったよね? 僕の聞き間違えみたいだな。雪菜さんは何も反応ないし、宇恵野も驚いてない訳だし。
「そうだったんだ」
「4mくらい飛ばされただけだからさ」
「無理はしないでね。お義母さんも心配するから」
「分かった」
お母さん? 奏さんのことか。確かにあの人なら僕のことも心配しそうな雰囲気はあるから。少しだけ違ったような気がしたけどもさっきと同様で気のせいだろうし気にしないでおこう。なんて思っていたら宇恵野から「イチャイチャしてないでやるぞ。はよ」と少しキレ気味で言われた。
僕と雪菜さんは宇恵野から質問を受けてそれぞれが答える形で終わった。「理想のタイプ」や「好きな食べ物」など誰得の質問しか無かったがまぁ雪菜さんのことを少し知れて良かったとは思うな。仲良くなれているかは分からないけどね。
「ふぅ、満足した。それで今の会長さんの置かれている状態だが」
「黒井先輩ならあそこまでは遠慮はしないんだよ」
「ウチも先輩に聞いた話だけども」
宇恵野の話では元々は竜樹押しの生徒が多く居たらしく黒井先輩はポッと出の生徒でかっこいい女生徒がいる程度の認知度だったらしいがいざ表舞台に立てば観る人の目を奪うほどの美しさだったらしい。それで生徒会選挙は黒井先輩の圧勝だったみたいだが、一部の竜樹を支持していた連中はイジメに近いことを黒井先輩にし続けているみたいだった。
おそらくはあの人はこれは仕方ないことだと思って受け入れてるので遠慮をしているんだろうな。さてと僕がすることは決まったな。ユウには黒井先輩のケアをお願いするとしてもユウだけでは心配ではあるな。雪菜さんは……ダメだし宇恵野にお願いしても何を質問するか分からないからな。誰かうまいこと出来る人間はいないものか。
「私も混ぜてよ!!」
「誰???」
「昨日自己紹介したじゃん!?」
赤城沙耶という少女が仲間になりたそうな目でこちらを見てくる。仲間にしますか? 丁重にお断りをした。赤城は「えぇぇなんで!?」と僕の肩を掴み揺らしながら聞いてくるがそんなの決まっている。守友家の権力は相当なものらしいからだ。この学校にも息がかかっている訳だし誰がスパイかが分からないからな。
宇恵野に関しては直接何かをする訳ではないし、おそらく中立な人間だから危害は加えられることはないし、雪菜さんは僕が何がなんでも守るが赤城は違う。ユウにはあのジジィは甘いから問題はないからアイツと常に行動を共にすればなんとかなるかも知れないがな。
「咲人くん、仲間に入れようよ」
「雪菜さんあのね、これって結こ__」
「咲人くんが守ってくれるでしょ?」
「・・・分かったよ。よろしく頼む赤城」
そういうと赤城は「よろしくね、藤咲くん」と眩しい笑顔を見せてきた。面倒なことになってしまったが雪菜さんにああ言われたら仲間にするしかないよな。
なんで雪菜さんに言われて・・・どうゆうこと???




