大海原家執務室 2
ドアがノックされる。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
カチャッという控えめな音とともに多香乃がカートを押して入室する。
八十島がすわった格好でわずかに後ずさった。
「七保堂茶本舗の玉露と、ソッリーゾ・デル・セッティマのピスタチオジェラート、ベレッツァのビターチョコレートです。ジェラートは溶けないうちにどうぞ」
多香乃がそう淡々と告げながらお茶とお菓子とスプーンをテーブルに置く。
「ありがとう、多香乃さん。もう上がっていいけど帰りは危ないから、よかったら送っていくよ」
告がそう伝えると、多香乃が無言でうなずく。
折り目正しいしぐさで礼をすると、カートを押して出入口のドアを開けふたたび礼をして退室した。
八十島が、はー、と長い息を吐く。
「なんなんだろうな、あの人の妙な威圧感みたいなの」
そう言いながら心臓のあたりに手をあてる。
「多香乃さん、そんなに威圧的かなあ。そう感じてるのやそっちだけじゃないの?」
告は湯飲み茶碗を両手でもち玉露を口にした。
「何か、この雇い主にしてこの従業員ありっていうか。おまえが助手に選んだの何か分かるっつうか」
「うんまあ自分で自分の身は守れそうな人だからかな、選んだ理由。あとフィーリングが合いそうだから?」
告はそう答えて湯飲み茶碗をテーブルに置いた。
もういちどスマホ画面を見る。
「で。ちなみにこのシンさん、今回はheは何しに日本へ?」
独特のイントネーションで問う。
「どっかのテレビ番組か」
八十島が顔をしかめた。




