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メイドの土産 〜ボンボン探偵✕毒舌メイドの事件簿〜  作者: 路明(ロア)
【6】太陽は夜を知らず月は昼を知らず、恋人はだれが死神かを知らない

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大海原家執務室 1


「被害者は市内の小売会社の会社員、大川 達也(おおかわ たつや)さん。会社の近くの自宅マンション六階から転落して死亡。転落した窓の痕跡から何者かに突き落とされたものと推測される。――室内に置かれたPCのディスプレイのうしろには、隠すようにタロットの太陽、月、世界、恋人、死神のカード。二年が経過するが、いまだ有力な手がかりがないことからお身内が懸賞金を設け――」


 大海原家の執務室。

 さきほど友人の刑事、八十島(やそしま)から送られてきた懸賞金つき事件の概要に(つげる)は読み上げた。

 コトっと音がして、執務机に紅茶が置かれる。

 多香乃(たかの)が無言で一礼してきびすを返した。

「あ、多香乃さんにも手伝ってもらうかもしれないから待機してて」

「メイドとしての契約の時間内は、こちらのお屋敷の休憩室で待機しています。それ以降は時間外手当をいただくことになりますが」

 コツコツと室内履きの靴の音を立て多香乃が執務室の出入口に向かう。

「だから探偵助手の契約してって言ってるのにぃ」

「向いているとは思っておりませんので」

 多香乃がドアを開け一礼する。


「向いてるでしょ。多香乃さんのおかげでいままでなんど助けられたか」

「覚えがありませんので非常にモヤモヤしているんですが」


 多香乃がわずかに眉をよせる。

「お給料、いまより上げるつもりだけど」

「あまり高給というものを重視するほうではありませんので。生活ができて福利厚生がしっかりしていて、心身ともにあまりムリがないというのがいちばんだと思っています」


「それでも見ない? 今回のネタは女の人ならみんな大好きタロットカードだよ?」


 告は現場の画像が映ったタブレット画面を多香乃のほうに向けた。

 多香乃がしばらくこちらをじっと見てから、ゆっくりと執務机のほうに歩みよる。

 やっぱり謎解きじたいは好きなんじゃないかなあと思う。あまり得意ではないみたいだけど。


「刑事事件の手がかりをネタなんて言う方がありますか」


 それでも上体をかがめてじっと画面を見つめる。

 被害者が日常的に使っていたと思われるPC。

 そのディスプレイのうしろから見つかったタロットカードがアップで写されている。

「五枚ってことは、ヘキサグラム法じゃないね。ケルト十字法にはさらに少ない」

 タブレットを両手で持ち多香乃のほうに向けつつ告は言った。

 多香乃が眉をよせて顔を上げる。

「そんなにお詳しいのなら、ご自分で解いたらいいじゃないですか」

「多香乃さんの意見が聞きたくてさ」

「タロットの意味なんか知りません」

「もう一声」

 告は真顔で言った。

「そのなんとか法というのは法律かなにかですか?」

「ううん。タロットの並べかた。僕が知る限り、たぶんいちばん多く使われるのはヘキサグラムかケルト十字」

「なら足りないというのは犯人が持ち去ったのでは?」

「あーなるほど」

 告はタブレット画面を自身のほうに向けた。

「持ち去ったか……」

 そうつぶやいて頬杖(ほおづえ)をつく。


「男性がタロットカードをお持ちなのって珍しいですね」

「副業で占いのチャンネルやってたんだって。ユーチューブで」


「へえ。そんなチャンネルが」

 多香乃が考えこむように宙を見上げる。

「儲かるのかな、うちも開設してみようか。チャンネル名なにがいい? 多香乃さん」

 告は画面を見ながらつぶやいた。

「探偵は廃棄ですか」

「ううん。こっちもやるよ」

 告はタブレット画面をスクロールした。

 多香乃が無言で眉をひそめている。


「経営のことに口出しするつもりはありませんが」

「いいよ、出して。聞くよ?」


 タブレット画面を見ながら告は答えた。

「口出しするつもりはありませんが、このあいだドラッグストア等を経営する他社を傘下に入れたばかりなのでは。探偵なんかやっている(ひま)があるんですか」

「暇だからやってるんじゃないよ。やそっちへの愛でやってるんだよ」

 多香乃が顔をゆがめた。

「あ、って言ってもBLみたいな関係じゃないから」

「それは先日も聞きました」

 多香乃が顔をしかめる。


「そもそもそれは被害者からのダイイングメッセージとか、そういったものと断定されたんですか?」

「僕は断定してるけど」


 告は答えた。





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