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メイドの土産 〜ボンボン探偵✕毒舌メイドの事件簿〜  作者: 路明(ロア)
【1】ローマにいるときはローマ人がするようにしたらよろしいが、ここは日本なんですが
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大海原家食堂広間

「玉一とうふ茶屋の豆腐(とうふ)と一蔵のワカメのお味噌汁(みそしる)、味噌は特選亀ヶ城味噌。亀岡の温崎カブの浅づけ、塩は耶麻の山塩、閖上産サンマの塩焼き、塩は浪士の塩です」


 大海原家の食堂広間。

 明治の時代独特の和洋折衷の内装に、しぶいダークブラウンの調度品で統一された重厚な雰囲気の室内。

 メイドの制服を身につけた多香乃(たかの)が、カートに炊飯器と味噌汁のナベとおかずのトレーをのせて運んでくる。

「こちらは肉じゃが。桜本青果のメークイン、佐々蒟蒻堂のしらたき、お肉はお好みもあるでしょうけど豚肉を選びました」

 一品ずつていねいに長テーブルに置く。

「お台所に朝食を作り置きしておきました。あすの朝は、お味噌汁はご自分であたためてください」

「ありがとう」

 暖炉(だんろ)のまえの上座で(つげる)は礼を言った。

 

「では」


 多香乃が一礼して立ち去ろうとする。

「あ、待って。多香乃さん」

 告は呼び止めた。

「言い忘れました。食後の甘木茶舗の玉露(ぎょくろ)とデサートの一万石のスクードパイもお台所にご用意しております」

 多香乃がもういちど礼をする。


「一人で食事するのさみしいんだけど」

「だからなんですか」


 多香乃が眉をよせる。

「多香乃さんの分は?」

「自宅で食べますので」

「お食事つきあってくれたらその時間分の時給払うよ?」

 告は、味噌汁の(わん)を手に持ちワカメを(はし)でつまんだ。

 ダシはかつお節か。いい香りだ。

「そういう職種ではありませんので」

 多香乃が淡々と言う。

「じゃ、プライベートとして」

「それでは時給が発生しないでしょう」

 いちいち頭の回転いいなと告は思った。

 お婆さんの代から大海原(わたのはら)家に務めていた家の人なので、学生のころから知っているが。

 

「銃砲店をやってるお爺さま、元気?」

「……あしたの夕食はフグを希望ですか?」


 多香乃がそう返す。

「多香乃さんってシャレもいけるんだ」

「本気で言っていますが。フグの調理師免許は持っていますので、鍵つきのゴミ箱をご用意しておいてください」

 多香乃が言う。

 いまだと料理にわざとフグの内臓を入れられそうな気がする。

 フグはもう少し経ってからおねがいしようと告は思った。

「まあ座って。いま手がけてる事件のこと話せる人がいなくてさ」

 告は手近な席をすすめた。

「わたしは話す気もありませんが」

 多香乃が眉をよせる。

「まあそう言わず」



「あとから思ったのですが、あの現場写真とやらは捏造(ねつぞう)された画像かなにかでは?」



 告は箸を止めて味噌汁にしずむ豆腐を凝視した。

「ちゃんとした刑事さんから回してもらった現場写真だけど、何かおかしかった?」


「ダイイングメッセージを書くのに使われたデミグラスソースの色が、バラバラだとあとで気づいたんです。書かれてから乾くまでの時間がそれぞれ違うということでは?」


 告は椀を置いた。かたわらに置いたスマホを手にする。

 友人の刑事から送信してもらった画像を表示させた。


「ダイイングメッセージなら、一気に書くものでしょう? 時間差があるなんてなんだかインチキっぽいなって」

「どこ? どの文字?」


 告は多香乃に画像を見せた。

 自身には書かれた文字の色はすべて同じに見えるが。

 多香乃が、かがんで画像を見る。



「……あ、バラバラというか二種類なんですね、あらためて見ると」



 多香乃がダイイングメッセージの部分を指さす。

 告は、指さした箇所を中心に画像を拡大させた。

「どれとどれが同じ色? 指さしてくれる?」

 多香乃が怪訝(けげん)な顔でこちらを見る。こんなあたりまえのことをと言いたげだ。

「JとGが同じ色、UとIが同じじゃないですか」

 告は画像をじっと見た。


「ありがとう。やっぱり多香乃さんでよかった」

「ほめてもお食事までごいっしょはしません」


 多香乃が眉をよせる。

「あしたから夕食は三人分つくって。多香乃さんのと来客用」

「わたしは食べませんと」

「あ、デサートも三人分おねがい」

 多香乃が無言で眉間にしわをよせる。


「あと英会話教室、せっかくだから楽しんでね。受講料の心配はいらないから」





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