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メイドの土産 〜ボンボン探偵✕毒舌メイドの事件簿〜  作者: 路明(ロア)
【4】口で言えないことは花で言えと言われても、死人に口なしなんですが

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大海原家食堂広間

「フォーシーズンズファームのジャガイモとよつ屋のほうれん草のお味噌汁(みそしる)、味噌は特選霞ヶ城の合わせ味噌。岩四田のしょうがの漬けもの、さくらたまごのタマゴと、ハム工房一路の桜燻ベーコンのハムエッグ。木ノ国屋のトリュフ醤油(しょうゆ)、一茅舎の塩コショウ、壱池醸造の中濃ソース、お好きなものをかけてどうぞ」


 大海原家食堂広間。

 早朝の出勤にもかかわらず、きちんとメイド服を身につけた多香乃(たかの)が朝食のメニューを読み上げる。

 

「執事の大江(おおえ)さんもおなじメニューです。お台所のテーブルで召し上がるそうです」


 そう多香乃が続ける。

 執事はじつは辞めていないというのは、多香乃には内緒にしておいたものの先日の朝っぱらからいきなりバレてしまった。

 しかしその後とくに隠していた理由を説明していない。

 自身にも大江にも、眉根を引きつらせて接する多香乃の様子を見ていると、やはり説明すべきかと(つげる)は思った。


「多香乃さん」


 味噌汁のジャガイモを(はし)でつまみながら告は切りだす。

「いっしょに食べない?」

「けっこうです。自宅ですませてきました」

 行儀よくテーブル脇にひかえた多香乃がそう返す。

「先日は探偵の助手ありがとう」

「まったく覚えがないのですが。毎回なんの話をしていらっしゃるんです」

 多香乃が眉をよせる。


「多香乃さんって何時に出勤してるの?」

「契約書にきちんと書いてありますが」


 多香乃が答える。

 話題がふくらんでいかない。告は味噌汁を飲んだ。

「大江さんみたいに多香乃さんの個室用意するからさ、住みこみにしない?」

「二十四時間、炊飯器のフタの開けかただの、お味噌汁のあたためかただの、バスルームの電気のつけかただのレクチャーするために呼びだされそうなのでけっこうです」

 多香乃がきっぱりと言う。

 たしかに数日まえ、バスルームの点灯スイッチの場所が分からなくて多香乃に電話をかけたが。

 

「あれは迂闊(うかつ)だったよねえ。僕、朝風呂のほうのタイプだからさ。いままでスイッチの場所知らなかった」


 多香乃が無言で眉をよせる。

「大江さんのことなんだけど」

「ほかの(やと)われ人のかたの雇用契約の内容なんかべつに説明しなくてけっこうですが」

 多香乃が答える。

 そういう認識だったのか。告は味噌汁を飲んだ。

 大江が、たとえいちど辞めて出戻り再雇用という形になったのだろうが、もともと辞めていなくて勤務時間が変則的だったのだろうが、ほかの雇われ人が説明されるいわれはないということだ。

 それはそうなのだが。


「でもそういうの何となくさみしいじゃん。僕らチームみたいなもんでしょ? 探偵業の」

「そういう意識はありませんが」


 多香乃が真顔で答える。

 ニッコリと笑いかけた表情の持って行き場がなく、告は笑顔を固まらせた。

 


「先日、多香乃さんに大根で殴られた女性だけど」



 気をとり直して告は切りだす。

「殺害を供述したってさ」

「男性では」

「ご本人の心は女性なんだから、いちおう女性あつかいしてあげようよ」

「申し訳ありませんが、染色体で区別する主義ですので」

 多香乃が答える。

 けっこうやそっちと意見合うなと告は思った。


「僕にもよく分からないんだけど、彼女のなかでは被害者の殺害って、自分のものにしたっていう認識らしくて」


 告はきのう八十島(やそしま)から聞いた内容を説明した。

「彼のために身銭を切って尽くすのはとうぜんなんだってさ。だから懸賞金も払うんだって」

 多香乃が不可解そうな顔で宙を見上げる。

「まあ、もらえるものはもらうけど。いろんな人がいるねえ」

「というか今回の収入源はあの女装の男性だったんですか?」

 多香乃が問う。

「そこから説明してなかったっけ」

「されてません。なにがチームですか」

 多香乃が眉をよせた。





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