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メイドの土産 〜ボンボン探偵✕毒舌メイドの事件簿〜  作者: 路明(ロア)
【4】口で言えないことは花で言えと言われても、死人に口なしなんですが

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33/80

ラ・フルール 店舗前 1

 被害者が経営していた花屋ラ・フルール店舗には、まだ黄色いバリケードテープが張られていた。

 小さい店舗ながらも郊外としてはひろい道路に面した立地、周辺に銀行や郵便局もあり地域の主要な界隈だ。

 駐車場はなかったが、道路向かいにあるコンビニに(つげる)は軽自動車を停めた。

 店舗の近くまで徒歩で来る。首をのばしてバリケードテープの張られた店舗周辺を見やると、見慣れたスーツ姿を見つけた。



「おお━━い、やそっち━━━━!」



 口の横に手をあて、告は友人の八十島(やそしま)刑事の名を呼んだ。

 現場鑑識の様子をながめていた通行人や周辺の店舗の関係者と思われる人々が横目で見る。

 八十島が少しあわてて駆け足で近づいた。

「探偵に事件の話持って行ってんのあんまり言ってないんだから声かけんな」

 顔をしかめながら手袋を外す。

「そうなんだ。じゃ、僕からごあいさつを。バディの方はどなた?」

 告は現場の外観を見回した。

「唐突に来ていやがらせすんな。なに? 資料どっか抜けてた?」

「資料は困ってないけど、近くまできたから現場いちおう見ておこうと思って」

 告はサマージャケットのポケットに両手を入れた。


「刑事さんて現場鑑識とかしないんじゃないの?」

 告は問うた。

「まあ、基本は。管理官とかは来るけど」

「何しに来てんの。鑑識さんの邪魔じゃない」

 告がそう言うと、八十島が引きつり笑いをした。

 

「あれ」


 八十島が手元をわずかに動かして、周辺でながめている近所の人々を指す。

 告はそちらを向いた。

 定年退職したくらいの年齢であろう男性と、通行人らしき中年男性、長身の派手なミニワンピースの女性がいるが。

「モロに見んな。何のためにコッソリ指してんだよ」

 八十島が小声で(とが)める。

「だれ指してんの」

「女」

 八十島が答える。

 告はあらためて長身の女性を見た。

「美人さんだね。身長、僕くらいありそうだけど」

「おまえの今回のスポンサーだ」

 八十島がそう説明する。

「ん?」

「つまり、今回犯人特定にいたった情報には懸賞金出しますよと言ってる恋人名乗る女」

 告は「おお」と意味不明な感嘆の声を上げてしまった。


「たびたび署に来るんで、いっぺん担当刑事ってことで応対したら、粘着されてさ。休憩とるたびに、捜査しないのかしないのかって責めてくるから」


「やってるふり」

 告は八十島の言葉を引きついだ。

「まあ……言葉を選ばず言えばそんなもん」

「大変だね。」

 告は女性を見た。

「ずいぶんと目立つお召しものだけど、若いのにお金持ちなんだ」

「おまえが言うと何か変だけど」

 八十島が顔をしかめる。

「……まあ、ちゃんと聞いたわけじゃないけど、いわゆる夜のお仕事じゃないかって」

「ああいうの、仕事はじめたばっかりのころは体力的にも気遣い的にもけっこうキツくて昼間はずっと寝てたりするそうだけど、平気でオシャレして外出してるとこみると、何年もやってる方かな」

「へえ……」

 八十島が女性を横目で見る。

「ついでに言うと、お店にもよるけど高級クラブなんかは品格も気をつけたりするから、昼間まで派手な格好で歩かないようレクチャーするところもあるとか」

「てことは、あの派手な格好で店のタイプが分かる……」

 八十島が顔をゆがめる。

「つか、何でそういうの知ってんだ」

「だいぶまえ、高級クラブにいる外国人さんご指名して語学教わってたことあってさ」

「……何やってんの、おまえ」

 八十島が眉をよせた。

 

 鑑識作業は淡々と進められているようだ。

 とくに一般人の興味を引くような動きはなく、ながめていた人々は一人二人と去って行った。


「店内の花は、もう撤去されちゃった?」


 告は顔をかたむけてガラスドア越しに店内を見た。

「証拠品としてぜんぶ押収したと思うけどな」

 八十島が答える。

「警察で……プロ並みの念入りな保存はしてないよね」

「いちおう花瓶(かびん)につっこんでるけど?」

 八十島がそう言った。





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