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メイドの土産 〜ボンボン探偵✕毒舌メイドの事件簿〜  作者: 路明(ロア)
【3】沈黙する者は安全であるらしいけど、けっきょく殺されていらっしゃる

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26/80

朝石西高等学校付近 3


「いやああああ! 虫が! 虫がいるのおおおおお!」


 三木 織衣(みき おりえ)の上げる悲鳴が、三十メートルほど離れたこちらまで聞こえる。

 多香乃(たかの)が後ずさりながら、もういちどどうしたらいいかというふうにこちらを見た。

「だから乗って! 多香乃さん。あとは刑事さんにまかせて撤退!」

 (つげる)は車のドアを大きく開けて声を上げた。

 学校の校門から出てくる生徒や通声人が、それぞれ戸惑った様子で三木 織衣を見る。

 

「あんたにも虫がいる! 虫いい━━━━━━! 顔のおお皮膚(ひふ)の下にぐにゅぐにゅ這ってるううう!」

 

 三木 織衣がいっしょにいた友人につかみかかった。

 多香乃が持っていた肩かけバッグで三木 織衣を思いきり殴り、飛びかかられた子の腕をつかんでうしろに(かば)う。

 

「落ちついて! 虫なんかいません!」

 多香乃が声を張り上げる。

「だから言ってもムリ、多香乃さん! こっち!」

 

 多香乃が庇った子の腕をつかんでこちらに駆けてくる。

「危ないから来なさい!」

 すぐ横を見て、ほかの友人の子の服も引っ張った。

 三木 織衣の友人を全員つれてくるとか人がいいなと告は思ったが、そのお人好しさのおかげで探偵業務に引きこむのもスムーズなのだ。まあいいだろう。

 助手席を開けて多香乃を乗せる。

「とりあえず乗って!」

 後部座席も開けて女子生徒たちもうながした。

 女子生徒たちは一瞬だけ戸惑ったが、多香乃が生徒の姉と名乗ったせいだろうか、顔を見合わせてから乗りこむ。

 三木 織衣は彼女らを少し追ってきたあと、道路に座りこんで身体を掻きむしっていた。


 だれか通報しただろうかと思って告は周辺を見たが、オロオロとながめる人ばかりでままならない。

 告はスマホを取りだして、もういちど八十島にかけた。


「やそっち」


「──ちょっ、待って。いま女の子が路上で半狂乱ってこっち通報入って」

 だれか通報したのか。告はもういちど三木 織衣の周囲を見た。

「おなじ人のことだと思っていいかな」

「──何? ほかにもいんの?」

 八十島が問う。

「女子高生に流行の路上パフォーマンスってわけじゃなけりゃ、ほかにはいないと思うけど」

 告は、後部座席でよりそって座る女子高生三人をふり向いた。


「ああいうの女子高生のあいだで流行(はや)ってる?」


 女子高生三人が顔を(こわ)ばらせて首を振る。

 告はスマホを耳にあてた。

「流行ってないってさ」

「──何聞いてんの、おまえ」

「なにを聞いてるんですか」

 八十島と助手席の多香乃が同時に呆れた声を上げる。


「けっきょく何。──何が起こってんの」

 八十島が少しイラついた声で言う。

 告は後部座席にいる女子高生三人を見た。

 声をひそめる。聞こえはするだろうが、大きな声で言うのは少々気がねする。



「たぶん、覚醒剤の禁断症状」



 告は答えた。

「え……」

 多香乃が目を見開く。

 後部座席の女子高生三人が、目を見開いたり口を手でおおったり、それぞれの反応をする。

「だって高校生じゃないですか!」

 多香乃がフロントガラスごしに三木 織衣の様子を見る。

「高校生が薬物売られて破滅するCMとか昭和からあるからね。むかしからあるにはあるみたいだよ」

 告は答えた。

「ユーチューブにときどきある “怖いCM” とか見たことない?」

「あるんですか?」

 多香乃が問う。

 後部座席で女子高生のひとりがスマホを取りだして検索をはじめる。

「ちょくちょくオススメに出てこない? 僕はしょっちゅう出てくるんだけど」

「……その手のものばかり見ているからでしょう」

 多香乃がそう返す。

 警察の初動捜査班と思われる車両が到着し、降りてきた警官二人が三木 織衣の両腕をつかむ。

 三木 織衣は、取りおさえられながらも自身の身体をかきむしり、悲鳴を上げていた。





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