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メイドの土産 〜ボンボン探偵✕毒舌メイドの事件簿〜  作者: 路明(ロア)
【2】夜は助言を運ぶのだから永遠に寝ていてください

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18/80

朝石キリスト教会 イングリッシュ工房付近 2

 (つげる)は、ガンケースを手にゆっくりと軽自動車に近づいた。

「すみませんが、うちのドSメイドさん離していただけますか。話し合いしません?」

「私服警官なのか」

 楠木(くすき)が問う。

「それは友だちのほう。僕は善良な新規参入の探偵さん」

 告は答えた。

「そんなところまで教える人がいますか!」

 多香乃(たかの)が首を捕らえられながらも声を張り上げる。

「いや……刺激したらいけないじゃん?」

「……どういうことですかこれ」

 多香乃が問う。



「つまり、その人があの事件の犯人さんってこと」



 告は答えた。

 多香乃がハッと息を呑む。

 楠木が眉間にきつくしわをよせてこちらを睨んだ。


「ごめんね、多香乃さん。(かま)かけすぎた」


 告は言った。

「まあ僕だって、多香乃さんが死後四日の流通お肉みたいになるのはちょっとやだし」

「あなた逆にそれ望んでたりしてません?!」

「何でそんなひねくれた捉えかたするの」

 告は眉をよせた。

「どっちか運転できるか」

 楠木が問う。多香乃の足を少しずつ引きずり軽自動車のドアに近づいた。

「僕も多香乃さんも普通免許ならもってるけど?」

 告は自身が乗ってきたお気に入りの黄色い軽自動車を指さした。

「だからなんでそういうことをわざわざ! なんとでもごまかせるでしょう?!」

「犯人刺激したら多香乃さんが死後四日の」

「もういいです、それは!」

 多香乃が大声でさえぎった。

 

「……なんだそれは」


 楠木が告の持ったガンケースに目を止める。

「ああ、これ?」

 告はガンケースのファスナーを開けた。

 なかからクレー射撃用のライフル銃がのぞく。

「脅しに使えるかなーって、いまとっさに持ちだしたんだけどさ」

「――捨てろ」

 楠木が足元のあたりを(あご)でしゃくる。

「そう来るよねえ、やっぱ」

 告は苦笑した。ライフル銃を多香乃の二メートルほど手前に放り投げる。


「こっち丸腰だよ。話し合お?」

 ガンケースを白旗のように振って両手を上げた。

「乗れ」


 楠木が運転席のドアを(あご)でしゃくる。

「ちなみにどちらまで」

 楠木が北の方角を見る。

「まえに映画監督がアルバイト殺して埋めた山、わりと近いよな。そこちょうどいいか」

「うっわ、いきなり話し合い決裂?」

 告は目を丸くした。

「いいから乗れ」

「しょうがないねえ、多香乃さん」

 告はそう言い、楠木の軽自動車のそばまで歩みよった。

 

「あ」

 

 とうとつにあさっての方向を見る。

 楠木がビクッと肩をふるわせてそちらを見た。

 告は手に持っていたガンケースを楠木の顔に投げつけるようにしてかぶせた。


 とっさに多香乃がかがみ、ライフル銃を拾う。すばやい動きで片膝(かたひざ)をつき楠木に向けてライフル銃をかまえた。


 楠木がかぶせられたガンケースを地面に放り投げる。多香乃がライフル銃の銃口を自身に向けて構えているのに気づき、ポカンとした。

 告はあらためて両手を挙げる。


「手を上げたほうがいいよ。彼女、お爺さまが銃砲店経営してて僕よりも銃に慣れてるから」


「ナイフを捨ててください」

 多香乃が落ちついた口調で言う。

 すがめた目で微動だにせず構えるさまが怖い。

 楠木がとまどいながらも軽自動車のボンネットにナイフを置く。

 告はそれを手にとり多香乃の足元に放り投げた。

「お爺さまにはお世話になってます」

 あらためて手を挙げヘラッ゙と笑った。

「伝えておきます」

 多香乃がかまえつつ答える。

 何かドサマギで犯人といっしょに撃ち抜かれそうだなと思う。

 

 イングリッシュ工房付近の待避所に乗用車が停まる。


「やそっちがよこしたお巡りさんかな?」

 告はそちらを見た。

 放り投げられたガンケースを目でさがす。

「多香乃さん、いそいで銃しまって。この状況だと多香乃さんが男二人ねらった凄腕の殺し屋っぽい」

「あ……あなたが持ってくるからでしょう!」

 多香乃はあわててガンケースを拾った。





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