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メイドの土産 〜ボンボン探偵✕毒舌メイドの事件簿〜  作者: 路明(ロア)
【2】夜は助言を運ぶのだから永遠に寝ていてください

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大海原家食堂広間 2

「重要参考人として挙がってるのが、お友だちの田伐 清華(たぎり きよか)さん、居川 希(いかわ のぞみ)さん、交河 愛美(こうかわ いつみ)さん、仕事仲間の二木 南人(にき みなと)さん、刈部 一花(かりべ いちか)さん」


 多香乃(たかの)がドアノブに手をかけて立ち止まる。

 スタスタスタとこちらにもどると、長テーブルに両手をついた。

 (つげる)はタイミングよく多香乃の目線のあたる場所にスッとタブレットを置く。


「……二木 南人さん」


 多香乃が言う。

「何でそう思うわけ?」

「直感です」

「男性なんだけど」

 告は言った。

 多香乃が顔を上げてこちらを見る。

「ほら、桜色の口紅」

「……口紅は被害者の持ちものでは?」

「犯人が偽装に置いたものだとしたら、いちばん可能性低くない? どう思う?」

 告はそう問うた。

 彼女の直感を否定してはいない。

 ただ、むずかしいクイズを出されたときの多香乃の頭がこんがったような顔をながめるのは楽しい。

「そうしたら、ダイイングメッセージもすべてデタラメのものということになりませんか?」

 多香乃が答える。


「あ、なるほどねー」


 告はタブレットを自身のほうに向けた。あらためて画面を見る。

「なるほどねーじゃありません。向いてもいない探偵ごっこはスッパリ辞めて、その画像は削除して刑事のお友だちに辞退を伝えて来られては?」


「でも懸賞金このまえより高いよ? 被害者のご実家が資産家なんだってさ」


 告は答えた。

「懸賞金なんか、もらえなければ百億を提示されても意味がありません」

 多香乃が顔を上げてキッパリと言う。

 あらためてクルリときびすを返すと、スタスタと出入口のドアに向かった。


「二木 南人さんは、エッセイなんかも書いてたんだって。兼業の物書きさん。作中でさりげなくご自分の輸入業と被害者のところの商品なんかを宣伝してたみたいだね」


 告は、友人の八十島(やそしま)刑事から聞いてメモした内容を表示させた。

「ああ――いちおうこっちも学生時代からの友人なんだ」

「そうですか」

 多香乃が答える。

「残念ながら、探偵業のお手伝いまではできませんので。失礼いたします」

 きれいな姿勢で一礼すると、多香乃は食堂広間をあとにした。




「お出かけになられましたか?」


 多香乃が玄関ホールから出た直後。

 執事の大江 正房(おおえ まさふさ)が食堂広間の一角の庭につづく廊下から顔を出す。

 玄関ホールの方角を見て、多香乃が戻らないかたしかめた。


大江(おおえ)さん、お疲れさま。今日の朝食は豆腐と油揚げの味噌汁(みそしる)と、シャケとおひたしとだし巻き卵。味海苔(あじのり)は親潮海苔店のやつだったかな? 報告はあとでいいから食べてきなよ」


 告は、多香乃が淹れた食後の日本茶を飲みながら伝えた。

「味海苔は、たしか荒浜海苔店のものと購入リストにありましたが」

 大江がテーブルに歩みよる。

「ああ、じゃあたぶんそっち」

「お食事のさいにメイドが品目を言わなかったのでしょうか?」

「言ったと思うけど、ものすごくイヤそうに言う表情のほうが楽しくて」

 告はついクスクスと笑った。

「いつ爆発するんだろうなんて想像してると、こっちもすまして “ありがとう” なんて言ってるのがなかなか大変で」

「小野銃砲店のところのお孫さんでしたな。あまり怒らせると怖い脅しに会うのでは」

 大江が顔をしかめる。

「彼女といっぺんクレー対決してみたいんだけどねえ」

 告はつぶやいた。

 どの角度の関係性から考えても、応じてくれなさそうな気がする。


「大江さん、口紅のことなんて調べられるかな。――僕は二木 南人さん調べに出かけてくる」

 そうとつづけて、告は湯のみ茶碗を置いた。席を立つ。

「犯人は二木(にき)氏で?」

 大江が問う。

「何か多香乃さんがそう言ってた」 

 告は声を上げて笑った。着替えのために自室に向かう。


「お気をつけて」

 大江が折り目正しく一礼した。





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